無線LAN規格「Wi-Fi 6」は企業にどのようなメリットをもたらすのか。在宅勤務などのテレワークを実現する手段として「5G」と比べることに意味はあるのか。無線技術分野の識者が語る。
無線LAN規格「Wi-Fi 6」(標準化団体IEEEの規格名は「IEEE 802.11ax」)に期待できることとは何か。第5世代移動通信システム「5G」と比べた場合、在宅勤務などのテレワークに適するのはどちらの無線ネットワーク技術なのか。無線通信に関する著書『Short-range Wireless Communication 3rd Edition』を持つアラン・ベンスキー氏に聞いた。
―― Wi-Fi 6に何が期待できますか。
ベンスキー氏 Wi-Fi 6には「Wi-Fi 5」(業界標準化団体IEEEの名称は「IEEE 802.11ac」)にはない幾つかのイノベーション(技術革新)がある。例えば複数のアンテナを使うデータ伝送高速化技術の「MIMO」(マルチ入力マルチ出力)を複数ユーザーで同時使用する「MU-MIMO」(マルチユーザーMIMO)の進化だ。Wi-Fi 5ではダウンリンク(下り:無線LANアクセスポイントからユーザー端末へのデータ伝送)のMU-MIMOのみ利用可能だったが、Wi-Fi 6ではダウンリンクとアップリンク(上り:ユーザー端末から無線LANアクセスポイントへのデータ伝送)の両方のMU-MIMOが利用可能になった。
データを電波に乗せる変調方式に、「4G」(第4世代移動通信システム)が採用している「OFDMA」(直交周波数分割多重接続)を取り入れたこともWi-Fi 6の進化だ。Wi-Fi 5は利用する周波数帯が5GHz帯のみだったのに対して、Wi-Fi 6は2.4GHz帯と5GHz帯の両方を利用できる点も見逃せない。
―― 企業がWi-Fi 6の利用をためらう要素はありますか。
ベンスキー氏 特に懸念すべき制約はないと考えている。Wi-Fi 6の利用に当たって諦めなければならないことはない。Wi-Fi 6はデータ伝送を効率化するための高度な機能を搭載し、Wi-Fi 5以前の無線LAN規格との互換性がある。
―― Wi-Fi 6と5Gはどちらがテレワークに適していますか。
ベンスキー氏 テレワーク用の無線通信技術としてWi-Fi 6と5Gを比較する必要はない。5Gは、30GHz〜300GHzという高い周波数帯を利用する電波「ミリ波」を利用する。ミリ波はビルなどの障害物を透過しにくいが、高速なデータ伝送に向いている。ミリ波を利用するために、5Gは従来の移動通信システムよりも近距離の無線通信技術として、無線LANのように使用される可能性がある。
無線LANと移動通信システムが連携することもあるだろう。例えば基地局からオフィスビルまでを移動通信システムでつなぎ、オフィスビル内の通信は無線LANが担うといった具合だ。近い将来、移動通信システムに無線LANが融合する可能性がある。
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