NVIDIA「GPUDirect Storage」にIntel「Optane」――CPUを補う高速化技術AI時代のストレージを支える技術【中編】

大容量データを扱う用途が広がってきたことで、コンピューティングの主役だったCPUだけでは対処できなくなりつつある。どのような新たな技術が役立つのか。GPUやメモリの観点で注目すべき点は。

2021年01月20日 05時00分 公開
[Carol SliwaTechTarget]

 長年にわたってコンピューティングの主要な役割をCPUが担ってきたが、GPU(グラフィックス処理プロセッサ)の役割も拡大してきた。「GPUが登場した当初の用途はグラフィックス処理だったが、一度に複数の処理を実行する『並列処理』の能力は、機械学習などAI(人工知能)技術の活用やビッグデータ分析用としても理想的だ」。NVIDIAのストレージ技術分野のバイスプレジデントを務めるロブ・デービス氏はこう語る。

 デービス氏によれば、コンピューティングを担うCPU、GPU、DPU(データ処理プロセッサ)の主な役割は下記の通りだ。

  • CPU:汎用(はんよう)コンピューティング
  • GPU:高負荷の処理をCPUからオフロードして処理する「アクセラレーテッドコンピューティング」
  • DPU:CPUとGPUの間でデータを安全かつ高速に移動させるネットワーク処理

データ処理を高速化するNVIDIAの「GPUDirect Storage」と「Intel Optane」

会員登録(無料)が必要です

 NVIDIAの「GPUDirect Storage」は、GPUとストレージを直接接続する技術だ。メモリ同士で直接データ転送をする技術「RDMA」(Remote Direct Memory Access)を使い、CPUを介することなくGPUにデータを直接移動させることで処理を高速化できるとデービス氏は説明する。NVIDIAは現時点ではGPUDirect Storageのβ版を提供しており、一般提供に向けて関係各社との協力を進めている。

 大容量のデータを扱うアプリケーションの処理高速化を目的として、IntelはMicron Technologyと共同で不揮発性メモリ技術「3D XPoint」を開発した。揮発性で高速処理が可能なDRAM(Dynamic Random Access Memory)と、不揮発性だが処理性能ではDRAMに劣るNAND型フラッシュメモリの間隙(かんげき)を埋めるメモリ技術だ。Intelは3D XPointを採用した製品を「Intel Optane」のブランドで提供している。Optaneシリーズとしてフラッシュストレージを2017年に、フォームファクター(形状や大きさの仕様)が「DIMM」(Dual In-line Memory Module)準拠のメモリモジュール(写真)を2019年に出荷開始した。

画像 写真 Optaneシリーズのメモリモジュール《クリックで拡大》

 調査会社Objective Analysisのディレクター兼チーフアナリスト、ジム・ハンディ氏は「Oracleのデータベースサーバ専用機はOptaneを効果的に活用している」と語る。ハンディ氏によると、Intelのプロセッサ「Intel Xeon」とOptaneのメモリモジュールを組み合わせることで、大幅に処理を高速化できる。

 IntelはOptaneの事業に非常に力を入れている。年間数十億ドルも投資しており、今後数年以内に100億ドル以上の資金を調達する見込みだとハンディ氏は説明する。「Optaneは他の新興メモリ技術を引き離すだろう」(同氏)

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?

SSDの大容量化や価格競争力の向上により、「SSDオンリー」という選択肢が現実味を帯びつつある。しかし、HDDが完全に不要になるとは断言できない。その理由は何か。

事例 株式会社ブロードバンドタワー

世界を魅了する映像制作集団「白組」を支える大容量ファイルサーバ環境とは?

デジタル映像制作の国内リーディングカンパニーである白組。同社では、映像制作用ストレージの性能面と運用管理面に課題を抱えており、これらの解消とセキュリティの強化を一挙に実現すべく、新たなソリューションの導入を決断する。

製品資料 株式会社ブロードバンドタワー

10分で分かる「スケールアウトNAS」の実力 何がどうすごいのか?

データ主導型ビジネスが当たり前となりつつある中、増大し続ける非構造化データの運用管理に課題を抱えている企業は少なくない。そこで従来のNASストレージの弱点を克服し、データの運用管理を革新するスケールアウトNASの特長を解説する。

製品資料 JBCC株式会社

ファイルサーバのクラウド移行は今が好機か、最適な移行先を選ぶヒント

昨今は企業で扱うデータが増加傾向にある上、働き方の変化などにも対応する必要性から、オンプレミスのファイルサーバをクラウドに移行する企業が増えている。そこで、移行先を選ぶポイントやセキュリティ対策について、動画で解説する。

事例 INFINIDAT JAPAN合同会社

ECシステムのデータ急増やI/O性能低下などの問題を解消したストレージとは?

ECと通販システムを統合したパッケージの開発と導入を事業の柱とするエルテックスでは、事業の成長に伴いデータの容量を拡大する必要に迫られていた。そこでストレージを刷新してコスト削減や可用性の向上などさまざまな成果を得たという。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news103.jpg

「AR」でMetaに勝てる? SnapのCEO、エヴァン・シュピーゲル氏はこう語った
SnapのCEO、エヴァン・シュピーゲル氏が最近、動画インタビューに立て続けに登場している...

news085.jpg

SEOに欠かせない「インデックス」について徹底解説【初心者必見】
今回は、SEOにおける「インデックス」について、わかりやすく解説します。

news090.jpg

マーケ担当者はなぜ「広報」を誤解するのか?
「マーケティング」と「広報」活動は似て非なるもの。この連載では2つの業務を兼務する人...