世界的に深刻化するサイバーセキュリティ被害への備えとして、Microsoftは製品設計にさまざまなセキュリティ技術を組み込もうとしている。MicrosoftのCEOが強調する、セキュリティ対策の鍵は。
MicrosoftのCEOサティア・ナデラ氏は2022年11月、シンガポールで開催した開発者やスタートアップ企業向けのイベントで、アジア太平洋地域におけるクラウドコンピューティングの展望について語った。同氏は講演の中でサイバーセキュリティの重要性に言及。同社はどのような方針でセキュリティ対策に取り組んでいるのか。
サイバー犯罪に起因する損失は世界規模で広がりつつある。この状況を踏まえて、ナデラ氏は「サイバー攻撃を回避するために必要なのは、システム全体を見渡すアプローチだ」と話す。ID管理、エンドポイント保護、アプリケーションセキュリティ、インフラセキュリティなど、あらゆる製品の設計にゼロトラストのアーキテクチャを組み込まなければならない。
だが「それだけでは不十分だ」とナデラ氏は語り、必要なのはシステムの状態や動作を監視し、異常な動作や脅威を検知するための“信号”だと指摘。続けて「結局はインテリジェンス(情報から得られる知見や知識)がものをいう。毎日発生する数兆ものイベントから得られた情報を、製品の安全性を高めるために利用している」と説明する。
Microsoftはアジア太平洋地域の大企業数社をクライアントに抱えている。タイの金融サービス企業SCB X Public Company(SCBX)や、スリランカの複合企業John Keells Holdings、アジア有数の医療サービスグループZuellig Pharmaなどがその例だ。
Zuellig Pharmaで生産性プラットフォーム事業の責任者を務めるバルビール・シン・ディロン氏は、このイベントで自社の事例について講演した。Zuellig Pharmaはクラウド移行にクラウドサービス群「Microsoft Azure」を採用し、まずERP(統合業務)システムを移行させた。「Microsoft AzureでSAPのインメモリデータベース『SAP HANA』を運用することで、コスト削減ができた」とディロン氏は説明する。
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