「600人のクラウド人材」を育てる保険会社が“移行後”も手を緩めない訳クラウドファーストを掲げる香港の保険会社【後編】

クラウドファーストの方針の下でシステム移行に取り組む保険会社AIA Group。適切なスキルを持つ人材の確保が移行の鍵になるとみた同社が重視する方策を紹介する。

2023年06月21日 05時15分 公開
[Aaron TanTechTarget]

 アジアを中心に保険事業を展開するAIA Group(AIA)は、システムのインフラとしてクラウドサービスを優先的に採用するIT戦略「クラウドファースト」を推進している。その成功には、適切なスキルを持つ人材の確保が重要であることを早くから認識していた同社が実施した取り組みとは。同社でエンジニアリングおよびデリバリー(クラウドとインフラ)担当ディレクターを務めるビカス・バンダリ氏に話を聞く。

クラウド人材の育成で運用を成熟させる取り組みとは

 AIAはオンライン学習サービス「Cloud Academy」を使った従業員教育プログラムを実施している。同社のIT系業務を担う従業員約600人が、クラウドサービスの利用について学ぶコースを受講したという。同社独自の認定プログラムも用意し、従業員のスキル向上を図っている。

 同社は従業員が効率的にITインフラを導入できるよう、コードでインフラを管理する手法「IaC」(Infrastructure as Code)を導入した。従業員が自ら問題を解決できるセルフサービス機能や自動化機能を使うことで、業務のアジリティ(機敏性)の向上を目指す。アプリケーション開発と運用の各工程にセキュリティを組み込む開発手法「DevSecOps」の導入も進めているという。

 AIAではすでに、クラウドサービスへの移行のメリットを享受している。ITインフラの86%以上をクラウドサービスに置き換えたことで、さまざまな新しい技術を活用可能になった他、レガシーインフラを運用していた時と比べてコスト効率は18.5%改善したという。

 同社はクラウドサービスへの移行に合わせて保険金請求のプロセスを再設計した。その結果、請求件数の63%を請求当日に決済完了できるようになった。請求件数の93%は電子決済を通じて完了できるようになり、より迅速でキャッシュレスの決済が実現した。

 バンダリ氏はAIAの取り組みについて、「保険業界の中でクラウドサービス導入の手本になるだろう」と述べる。2023年までの2、3年は、クラウドサービスへの移行計画を実行してきた。今後は「FinOps」に取り組む計画だという。FinOpsは、事業部門やIT部門、財務部門が協力してクラウドサービにおける支出の意思決定を実施する手法だ。「クラウドサービスの運用方法を成熟させるとともに、最適化を図る」(同氏)

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