SSDはデータ読み書きの速さだけではなく、容量においても急速に進化している。そうした中で「HDDが不要だ」との見方が出るのは不思議ではないが、その考え方には注意が必要だ。なぜなのか。
SSDの容量増大の進化が加速する中、熱を帯びてきたのがHDDを使用しない「SSDオンリー」を推し進めることだ。データ読み書きの速さでもHDDはSSDに勝てないことを前提にすると、HDDを使わないことには確かに一理あると言える。だがそれに注意を促す声が目立つ。SSDだけを使うことの何が問題なのか。
業界のアナリストは、容量増大の進化ではSSDがHDDに勝るとみている。調査会社GigaOmのストレージアナリストであるマックス・モーティラーロ氏は、SSDベンダーの製品ロードマップに75TB、250TB、300TBといった容量のSSD開発が盛り込まれている点を指摘する。そうしたSSDの容量は、HDDベンダーが公表している製品ロードマップの容量をはるかに上回るものだ。
ストレージの容量が増えることで、さまざまな利点がある。例えば以下が見込める。
一部の用途でSSDではなくHDDが使われ続けてきた理由の一つは、容量当たりの単価を上げてまでSSDに移し替えるだけの価値が見込めなかったことだ。そうした用途の一例としては、非常に大規模なデータストアやアーカイブ(長期保存)などがある。SSDがより大容量になって容量単価が下がれば、こうした用途でHDDからSSDに移行することがより現実的な選択肢になる。
とはいえ、そうしたSSDの進化が見えてきてはいても、まだその段階には来てない。SSDの熱狂的な支持者でさえも、まだSSDだけではなく、より安価にデータを保存できるHDDの選択肢を捨てないのが現実的な選択肢になると考えている。
「HDDの終わりは、すぐにはやってこない」。コンサルティング会社PA Consultingでデータセンターおよびクラウド戦略分野を担当するアラステア・マコーレー氏はそう言う。ノートPCにおいてもデータセンターにおいても、HDDはSSDに比べて大抵は以下のような傾向にある。
だが、HDDにこうしたデメリットがあるからといってHDDが不要なわけではない。「SSDが万能なわけではないため、企業のデータセンターのニーズを満たすためには別のストレージを検討する価値が十分にある」(マコーレー氏)
HDDやテープ、光学式ストレージといったSSD以外のストレージの選択肢は依然として必要だ。マコーレー氏によると、そうしたストレージは特に以下のような用途で生きる。
SSDとHDDの容量単価の差を縮める一つの方法は、重複排除や圧縮などのデータ削減技術を用いて、SSDでのデータ保存の効率を高めることだ。ただしバックアップのような容量効率の高さを重視する用途では、既にデータ削減の最適化が実施されていることが一般的であるため、重複排除や圧縮によるさらなる効果は見込みにくい。
こうした現実を前にして、SSDだけでもHDDだけでもない折衷案を採用することが、引き続き妥当な選択になっているというわけだ。「SSDの記録密度がどれだけ高密度になっても、HDDに完全に取って代わることはできない」。ストレージソフトウェアベンダーScalityのCMO(最高マーケティング責任者)であるポール・スペシャリー氏はそう語る。PB(ペタバイト)規模の非構造化データを扱うストレージに関しては特にそうなのだという。価格や、データ読み書き性能の要件などの観点で考えると、SSDを使うことが必ずしも最善の選択にはならないのだ。
SSDの容量増大をけん引する技術に、QLC(クアッドレベルセル)がある。NAND型フラッシュメモリの技術は従来、1つのメモリセル(記憶素子)に1bitを格納するのが基本だったが、QLCは1つのメモリセルに4bitを格納する。こうして高密度化を図ることで保存容量を増やすことはできるが、デメリットもある。「QLCはミッションクリティカルなアプリケーションに必要というわけではない」とスペシャリー氏は言う。耐久性が低くなりがちなQLCは、書き込みが頻繁には発生しない用途により適しているからだ。
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