変わりつつあるストレージの常識【後編】
HDDを不要にする「SSDオンリー」がどうしても無茶なのはなぜ?
SSDはデータ読み書きの速さだけではなく、容量においても急速に進化している。そうした中で「HDDが不要だ」との見方が出るのは不思議ではないが、その考え方には注意が必要だ。なぜなのか。
SSDの容量増大の進化が加速する中、熱を帯びてきたのがHDDを使用しない「SSDオンリー」を推し進めることだ。データ読み書きの速さでもHDDはSSDに勝てないことを前提にすると、HDDを使わないことには確かに一理あると言える。だがそれに注意を促す声が目立つ。SSDだけを使うことの何が問題なのか。
「SSDオンリー」がどうしても無茶なのはなぜ?
併せて読みたいお薦め記事
連載:変わりつつあるストレージの常識
ストレージに関する注目の話題
業界のアナリストは、容量増大の進化ではSSDがHDDに勝るとみている。調査会社GigaOmのストレージアナリストであるマックス・モーティラーロ氏は、SSDベンダーの製品ロードマップに75TB、250TB、300TBといった容量のSSD開発が盛り込まれている点を指摘する。そうしたSSDの容量は、HDDベンダーが公表している製品ロードマップの容量をはるかに上回るものだ。
ストレージの容量が増えることで、さまざまな利点がある。例えば以下が見込める。
- ドライブ交換数の抑制に伴うメンテナンスの負荷軽減
- 消費電力量の削減
- 冷却コストの削減
- ラックスペースの節約
一部の用途でSSDではなくHDDが使われ続けてきた理由の一つは、容量当たりの単価を上げてまでSSDに移し替えるだけの価値が見込めなかったことだ。そうした用途の一例としては、非常に大規模なデータストアやアーカイブ(長期保存)などがある。SSDがより大容量になって容量単価が下がれば、こうした用途でHDDからSSDに移行することがより現実的な選択肢になる。
とはいえ、そうしたSSDの進化が見えてきてはいても、まだその段階には来てない。SSDの熱狂的な支持者でさえも、まだSSDだけではなく、より安価にデータを保存できるHDDの選択肢を捨てないのが現実的な選択肢になると考えている。
「HDDの終わりは、すぐにはやってこない」。コンサルティング会社PA Consultingでデータセンターおよびクラウド戦略分野を担当するアラステア・マコーレー氏はそう言う。ノートPCにおいてもデータセンターにおいても、HDDはSSDに比べて大抵は以下のような傾向にある。
- 消費電力が大きい
- 発熱量が大きい
- 前触れなく故障する確率が高い
だが、HDDにこうしたデメリットがあるからといってHDDが不要なわけではない。「SSDが万能なわけではないため、企業のデータセンターのニーズを満たすためには別のストレージを検討する価値が十分にある」(マコーレー氏)
HDDやテープ、光学式ストレージといったSSD以外のストレージの選択肢は依然として必要だ。マコーレー氏によると、そうしたストレージは特に以下のような用途で生きる。
- 長期間のデータ保持を求める各種規制
- 膨大なデータセットを使用するAI(人工知能)アプリケーションやAIモデル開発
- 不変コピー(書き換え不能なデータ)の必要性
SSDとHDDの容量単価の差を縮める一つの方法は、重複排除や圧縮などのデータ削減技術を用いて、SSDでのデータ保存の効率を高めることだ。ただしバックアップのような容量効率の高さを重視する用途では、既にデータ削減の最適化が実施されていることが一般的であるため、重複排除や圧縮によるさらなる効果は見込みにくい。
こうした現実を前にして、SSDだけでもHDDだけでもない折衷案を採用することが、引き続き妥当な選択になっているというわけだ。「SSDの記録密度がどれだけ高密度になっても、HDDに完全に取って代わることはできない」。ストレージソフトウェアベンダーScalityのCMO(最高マーケティング責任者)であるポール・スペシャリー氏はそう語る。PB(ペタバイト)規模の非構造化データを扱うストレージに関しては特にそうなのだという。価格や、データ読み書き性能の要件などの観点で考えると、SSDを使うことが必ずしも最善の選択にはならないのだ。
SSDの容量増大をけん引する技術に、QLC(クアッドレベルセル)がある。NAND型フラッシュメモリの技術は従来、1つのメモリセル(記憶素子)に1bitを格納するのが基本だったが、QLCは1つのメモリセルに4bitを格納する。こうして高密度化を図ることで保存容量を増やすことはできるが、デメリットもある。「QLCはミッションクリティカルなアプリケーションに必要というわけではない」とスペシャリー氏は言う。耐久性が低くなりがちなQLCは、書き込みが頻繁には発生しない用途により適しているからだ。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
なぜワンキャリアは障害復旧を3時間から1時間以内に短縮できたのか -
製品資料
自社のDevSecOpsはどこまで進んでいる? 進捗を測る指針“成熟度モデル”とは -
製品資料
実際に悪用される脆弱性は4%前後 優先的に対処すべき脆弱性を把握するには? -
事例
三菱ケミカルが脆弱性への迅速な対応フローを実現した方法とは? -
技術文書・技術解説
MDMだけでは防げない? Appleデバイスに潜む5つのセキュリティギャップ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
2
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
3
ただなのに「12時間以内の復旧」も要求 無償OSSに商用レベルを求める企業の末路
-
4
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
5
NVIDIA値上げの波紋 GPU非購入企業にも及ぶ「2027年IT予算」増大のリスク
-
6
メモリ価格“60%上昇”は序章に過ぎない? 価格高騰はいつまで続くのか
-
7
「ITインフラとデータ保護・バックアップ対策」に関するアンケート
-
8
なぜAnthropicはClaude Codeで「エージェントを作るな、スキルを作れ」と言うのか
-
9
「HDD終了」は本当か 巨大クラウド2社が下した大容量フラッシュへの決断
-
10
VDIの巨頭「Citrix」と「Azure Virtual Desktop」を運用視点で比較
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
属人化や仕様バグはなぜ起きる? AI時代に必須のドキュメント文化の作り方
-
2
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
中小企業必見、Microsoft 365でゼロトラストセキュリティを実現する方法
-
6
5分で分かる「AI駆動開発エージェント」 要件定義から設計・実装・テストまで
-
7
動画で知るランサムウェア被害企業のリアル、会計データが無事だった理由とは
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
10
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー