ビジネス環境で重要度が高いものの1つに「ドキュメント共有」がある。グローバル展開し、海外に幾つも支社があるような大規模企業であれば、何らかのドキュメント共有ソリューションの導入も視野に入れるべきだが、10人程度の小規模企業やSOHOでは予算的にも規模的にも現実的でない。
例えば「1カ月後のプレゼンに向けて、外部のスタッフとプレゼン資料を共同で修正していきたい。そして、その外部スタッフとはそのプレゼン以降の仕事は現状決まっていない」としよう。こういった場合、電子メールに添付してやりとりしながらドキュメントをブラッシュアップしていくことが多い。しかし、かかわるメンバー全員がプレゼン資料に手を加え、名前の付け方もばらばらでは、どれが最新のドキュメントなのかも分からなくなってしまうし、似たようなドキュメントが幾つも作成されてしまう。
そこで注目したいのが、無料で使えるドキュメント共有サービスだ。Yahoo!やGoogleからもリリースされ、実際に広く利用されていることを見てもビジネスにも有用なことは想像できると思う。今回はそのようなサービスの1つであるマイクロソフトの「Microsoft Office Live Workspace β」(以下、Office Live Workspace)にスポットを当ててみたい。
Office Live Workspaceはマイクロソフトが提供するオンラインサービスで、基本的な機能は無料で利用できる。このサービスはhttp://workspace.officelive.com/へアクセスし、Windows Live IDでサインインすれば誰でも利用可能だ。既に「Windows Live Messenger」などを利用しておりWindows Live IDを取得していれば、そのIDをそのまま利用できる。もちろんMSN Hotmailアカウントの利用も可能だ。
Office Live Workspaceで利用できる主なサービスは、500Mバイトのオンラインストレージと、Microsoft Officeアプリケーション(XP/2003/2007)を使ってドキュメントをオンライン上で操作するための拡張機能である。インターネットにアクセスできる環境さえあれば、オンラインストレージに保存されているドキュメントの閲覧やそのドキュメントに対するコメントの挿入、さらには「リスト」と呼ばれるシンプルな表組みを作成できる。
また、複数ユーザーでドキュメントやリストを閲覧したり、リアルタイムで共同作業を行える。ユーザーの追加はOffice Live Workspaceから相手のWindows Live ID(メールアドレス)あてに電子メールを送る招待形式となっており、ユーザーごとにドキュメントの編集・閲覧の権限設定も可能だ。
こうしたドキュメント共有機能のほか、Office Live Workspaceで作成したリストを「Microsoft Office Outlook(2003/2007)」の「連絡先」「仕事」「予定表」と同期させることができる。また、リストを「Microsoft Office Excel」(以下、Excel)にエクスポートしてローカルに保存するといった機能も盛り込まれている。
ビジネス利用で気になるセキュリティ面だが、Office Live Workspaceは「Microsoft Windows SharePoint Services」の最新版(3.0)をベースに構築されており、「Microsoft Forefront Security for SharePoint」によるウイルス対策機能が標準で搭載されている。また、当然だがWindows Live IDとパスワードを入力してサインインしない限り、ドキュメントにはアクセスできない。
対応OSは「Windows XP/Vista」「Windows Server 2003」「Mac OS X」となっており、WebブラウザはInternet Explorer 6以降とFirefox 2以降に対応している(※)。なお、Mac OS XとFirefox 2以降の利用はそれぞれの併用が必須となる。では、実際にOffice Live Workspaceを使ってみよう。
(※)原稿執筆時点では、「Windows Server 2008」での動作はテスト中とのことだ。

サインインするとOffice Live Workspaceのトップページが開く。Office Live Workspaceのユーザーインタフェースはとてもシンプルで、左に「マイワークスペース」などのメニューがあり、メイン画面に選択中のワークスペースが表示される《クリックで拡大》まずはオンラインストレージにドキュメントをアップロードしてみよう。画面左のメニュー、マイワークスペースにある「ドキュメント」をクリックすると、メイン画面が切り替わる。「ドキュメントの追加」をクリックすると「単一のドキュメント」「複数のドキュメント」というプルダウンメニューが表示されるので、任意のものを選ぶ。するとファイル選択ダイアログボックスが起動するので、そこからアップロードしたいファイルを指定すればよい。ドキュメントのサイズやネット環境によって時間がかかるケースもあるが、アップロードが完了するとOffice Live Workspaceにドキュメント名が表示される。なお、冒頭でも述べたが、Office Live WorkspaceはMicrosoft Forefront Security for SharePointを搭載しているので、既にウイルス感染したドキュメントはアップロードできない。
ドキュメント名のリンクをクリックするとメイン画面がプレビュー画面に切り替わり、ドキュメントの内容をプレビューできる。自動的にHTML化して表示するので、Microsoft OfficeアプリケーションがインストールされていないPCからでも閲覧できるのは便利だ。また、Webページなので、インターネットにアクセスできる環境とWebブラウザさえあればどこからでも閲覧できることもメリットといえる。
プレビューしているドキュメントを編集するには「編集」ボタンをクリックする。すると、そのドキュメントに対応するMicrosoft Officeアプリケーションが起動する仕組み(※)となっている。
(※)ドキュメントを編集するには、後述するアドインツールをPCにインストールする必要がある。
編集が終わったドキュメントを上書き保存すれば、Office Live Workspace上のドキュメントも最新の状態に更新される。画面に表示されている「最終変更日時」の欄に、更新した日時、「変更者」の欄に変更したユーザー名が表示される。複数人でワークスペースを共有している場合は、保存されているドキュメントを誰がいつ保存したのかが一目で分かる。
Webブラウザでドキュメントの内容を見ることができるのは便利。プレビューはMicrosoft Officeアプリケーションのドキュメント類だけでなく、PDFファイルやテキストファイルにも対応している《クリックで拡大》
これだけでも自分専用のオンラインストレージとして活用できるが、Office Live Workspaceの利便性はそれだけではない。次に試してほしいのがMicrosoft Officeアプリケーションとの連携だ。Office XP/2003/2007にOffice Live Workspaceとの連携機能を追加できる。これにはアドインツール「Microsoft Office Live Add-in for Microsoft Office」のインストールが必須となるため、Office Updateを実行する必要がある。Office Updateを行っていない場合は、Office Live Workspaceのトップページにあるリンクからインストールしよう。
このページにOffice Updateのリンクがある。Office Updateを行いOfficeアプリケーションにアドインをインストールしよう。Office Live Workspaceを使いこなすには必須だ《クリックで拡大》今回のレビュー用に用意した環境は、「Windows Vista Ultimate SP1」とOffice 2007なので、この組み合わせを使って解説する。アドインをインストールすると、自分のPCにインストールされているOffice 2007のメニューに「Microsoft Office Liveから開く」と「Microsoft Office Liveに保存する」という項目が追加される。要するにこのアドインをインストールしておけば、Officeアプリケーション上から直接Office Live Workspaceに保存してあるドキュメントを開けるとともに、現在編集しているドキュメントをOffice Live Workspaceに直接保存できるというわけだ。なお、この機能を追加できるのは、「Microsoft Office Word」(以下、Word)、Excel、「Microsoft Office PowerPoint」(以下、PowerPoint)となる。
ローカルで編集中のドキュメントのメニューから、Office Live Workspaceに直接アップロードしたり、Office Live Workspaceのファイルを直接開くことができる《クリックで拡大》
Office 2003の場合は画面の場所に「Microsoft Office Liveに移動する」ボタンが追加される。「開く」でOffice Live Workspaceのマイワークスペースを開き、「保存」で現在編集中のドキュメントをマイワークスペースに保存できるちなみに、Office Live Workspace上のドキュメントだが、オープンソースのOfficeスイート「OpenOffice.org」で作成したドキュメントでも、Microsoft Office互換形式で保存したものなら問題なくプレビューできることを確認している。ただし、当然アドインツールは使えないので、編集作業はいったんローカルに保存してから行う必要がある。また、OpenOffice.orgの独自形式で保存されたドキュメントはサポートされないため、アップロードはできるがプレビューはできない。
OpenOffice.org独自のファイル形式がサポートされないのは当然としても、困ってしまうのはOffice 2007が作る新しいファイル形式だ。Wordの「.docx」、Excelの「.xlsx」、PowerPointの「.pptx」といった新バージョンの拡張子で保存してしまうと、ほかの非Microsoft Officeアプリケーションだけでなく、Office XP/2003でもドキュメントを開くことができない。次項で解説するワークスペースを複数ユーザーで共有するようなケースでは、互換性の高い「97-2003」のバージョンでドキュメントを作成しておくとよいだろう。
では、ワークスペースを複数ユーザーで共有してみよう。これは同じOffice Liveユーザー同士でワークスペースを共有することができる機能で、複数のワークスペースでそれぞれ違うユーザーを登録することも可能だ。
メニューにある「新規ワークスペース」から、新しいワークスペースを作ってみよう。クリックすると、ワークスペースのひな型が表示される。ワークスペースのひな型には用途に合わせたドキュメントや表組みがあらかじめ用意されており、原稿執筆時点は以下のワークスペースのひな型がある。
| ワークスペース名 | あらかじめ用意されているドキュメント |
|---|---|
| クラスワークスペース | 連絡先リスト、日付リスト、クラスのメモ、小論文の概要、講義要綱など |
| 小論文ワークスペース | 学期末リポートの概要、論文のテンプレート、中間目標のリストなど |
| イベントワークスペース | 招待状、チラシ、備忘録、参加者リスト、作業一覧など |
| 家族ワークスペース | 予定表、連絡先リスト、食料品リストなど |
| 求職ワークスペース | 面接の日程、準備のメモ、送り状、履歴書のテンプレートなど |
| 会議ワークスペース | 会議でのメモ、議事録の控え、参加者リスト、作業一覧など |
| プロジェクトワークスペース | 予定表、参加者リスト、プレゼンテーションのテンプレート、作業一覧など |
| 学校ワークスペース | 学期の予定、連絡先リストなど |
| スポーツチームワークスペース | チーム名簿、季節単位の予定表、食事の予定表など |
| 勉強会ワークスペース | ミーティングのメモ、イベント一覧、リポートのテンプレートなど |
| 旅行ワークスペース | 荷物リスト、旅行プラン、チェックリストなど |
現状、ビジネス利用で使えそうなワークスペースのひな型は「会議ワークスペース」「プロジェクトワークスペース」の2種類。「イベントワークスペース」も使いようによっては有用なテンプレートになりそうだ。ちなみにワークスペースには名前を付けることができ、ワークスペースに対する簡単な紹介文を加えることもできる。
ワークスペースを登録すると、マイワークスペースに名前とともにリンクが表示される。これをクリックすれば、作成したワークスペースで作業できるというわけだ。ワークスペースに登録されているドキュメントの編集方法は先述した通りだ。
では、作成したワークスペースにほかのユーザーを追加してみよう。ユーザーの追加方法はとてもシンプルで、ワークスペース上の「共有」をクリックするとメイン画面がメール送信画面に切り替わり、追加したいユーザーにメールを送ることができる。招待先のユーザーが受け取ったメールの文面に書かれたURLをクリックするだけで、ワークスペースの共有は完了する。なお、1つのワークスペースを共有できるのは最大100人となっている。
招待メール送信画面。メールを送る際は、ドキュメントの編集権を設定できる。編集を許可する場合は「編集者」の欄に、閲覧のみ許可する場合は「閲覧者」の欄にWindows Live ID(メールアドレス)を入力する。また、Office Live Workspaceのことを知らない相手に招待メールを送る場合は、「サインインしなくても誰でも表示できるようにする」にチェックを入れておくとよい《クリックで拡大》また、Office Live Workspaceはドキュメントの変更や追加などの操作履歴を残す「アクティビティ」機能を持つ。デフォルトで操作履歴が表示されているが、「アクティビティ」ボタンを押すことで表示/非表示を切り替えることができる。また、「コメント」ボタンを押せば簡単な連絡事項などをテキストとして記録できる。連絡事項の伝達やドキュメントの変更個所を共有メンバーに知らせるなど、用途は多いので有効に活用してほしい。
もう1つ、ドキュメントの編集履歴を管理する「バージョン」機能がある。これは更新されたドキュメントをバージョンごとに記録する機能で、最大8世代まで記録できる。使い方も簡単で「バージョン」ボタンにある矢印をクリックするとメニューが表示されるので、ドキュメントを編集した後に「バージョン履歴に保存」をクリックするだけでドキュメントがバージョンとして保存される。復元したい場合は、リストから任意のバージョンをクリックし、「元に戻す」ボタンを押せばよい。このほか、バージョンの上書き、削除なども可能だ。
駆け足でOffice Live Workspaceの機能を見てきたが、大規模プロジェクトでは物足りないが、数名単位のチームで利用するのであれば十分な機能がそろっているという印象を受けた。しかし、不満がまったくないわけではない。例えば、ユーザー名がアカウント名ではなくWindows Live IDで表示されてしまうのは、ビジネス用としてはかなり使いづらく感じる。また、操作方法もマニュアル化されておらず、手助けとなるのはヘルプページのみのため、ほぼ実際に使いながら覚えていくことになる。
Office Live Workspaceに設置されている「Workspace Q&A コミュニティ」。ユーザー同士で知識を補完し合える場だ。サポートページの「フォーラム」からログインできる《クリックで拡大》そうした細かい点に目をつぶれば、実際のビジネスでも十分に活用できるだろう。また、Office Liveに関するサポートページにフォーラムも設置されているので、ユーザー同士で問題を解決することもできる。チームコラボレーションシステムの第一歩として、Office Live Workspaceをぜひ活用してみてほしい。
次回はOffice Liveのもう1つのサービス、「Microsoft Office Live Small Business」を見ていこう。