約11年ぶりの同時出荷となるWindows Vistaとthe 2007 Microsoft Office system。そしてマイクロソフトの企業向け製品ラインアップ上、欠かすことのできないExchange Server 2007もほぼ時を同じくして出荷を予定している。ビッグローンチイヤーである今年、マイクロソフトは企業のコラボレーションスタイルやコミュニケーションスタイルを、どのように変え、どこに向かおうとしているのだろうか。
【専門分野:メッセ−ジング/コラボレーション、B2B/EAI/BPA】
ロータス株式会社にてcc:Mail, Notes/Domino のプロダクトマーケティングを担当後、マイクロソフトへ入社。ExchangeServer、マイクロソフトE-Business製品のプロダクトマーケティングを担当し、現在はExchange Server/Outlook に加え、Office 2007の新ラインアップであるGrooveも担当。
12〜13年ほど前、企業のコラボレーションやコミュニケーションのスタイルはどうだったでしょう。ワープロ専用端末で作成した文書をFAXで送り、電話で「届きましたか?」と確認するようなことも慣習としてありました。携帯電話などはさほど普及していなかった時代ですから、固定電話か、外勤者であれば公衆電話で連絡を取り合うのが当たり前。すぐに相手を捕まえたいということで、ポケットベルもよく使われていました。当然、直接話をしたくても距離的な壁があれば、出張も頻繁に行われていました。
しかし、馴染みやすく心地よいインタフェースを搭載したPCの登場により、その世界は一変しました。現在では必要不可欠なインターネットの普及も、企業のコラボレーションやコミュニケーションのスタイルの変化において、大きなターニングポイントであったことは言うまでもありません。
少し思い出してみてください。Windows 3.1からWindows 95、Office 95が登場し、実際にそれを業務で利用し始めたころの様子を。電子メールも社内のみの利用であったファイル共有型のものから、インターネットを介し、容易に組織の壁を超えられるようになりました。きっと多くの方がその生産性と利便性に少なからず感動し、すごい時代がやってきたなと感じられたと思います。それから10年余り、現在の企業におけるコラボレーションスタイル、コミュニケーションスタイルはどう変わったでしょうか。
もしかしたら、情報流通のスピードについていけず、情報の海に溺れかけてはいないでしょうか。電子情報に対する依存度が高くなり、環境によってアクセスの手段が限定されることにストレスを感じていないでしょうか。昨今の機密情報漏えいや個人情報漏えいへの対策のため、ツールの利用や情報の取り扱いに対する十分な配慮が、生産性や利便性の妨げになっていないでしょうか。
ごく当たり前のことですが、情報システムというのは元来、生産性や利便性といったものを高めるために有効なツールだったはずです。それが、情報システムへの依存度が高くなることによって、ガバナンス、コンプライアンス(法令遵守)など、これまでとは異なる課題が生まれてきていることも、目を背けることのできない事実と私達は考えています。情報システムが内包するジレンマとも言えるかもしれません。
Windows VistaやOffice 2007、Exchange 2007に限らず、マイクロソフトが提案する製品、サービスは、現状のニーズをケアし、かつ3年後、5年後の世界を見越した製品開発を行っています。つまり、ニーズ志向とシーズ志向のバランスを取った製品開発と言えます。新バージョンであるExchange Server 2007で例えるなら、コンプライアンス対応としてのジャーナル機能やコンテンツフィルタリングは、まさしくニーズの部分ですし、Voice Access機能のように携帯電話などから音声だけで、自身のメールやスケジュールをコントロールするような機能はシーズの部分と言えます。
ただ、先述したような状況、つまり情報システムのジレンマは、ニーズとシーズのバランスによる製品開発やサービス提供という範疇だけでは解決できない現象の一例だと考えます。要は、企業のコラボレーションスタイルやコミュニケーションスタイルは、平均的なニーズや、メーカーが唱える世界だけではカバーしきれないほど多種多様なものになってきているということです。
例えば営業などの外勤者が多く存在する企業と内勤者がほとんどという企業とでは、そこに求められるスタイルは異なるはずです。
90年代終わりから2000年代初頭にかけては、ERPなどに対するIT投資意欲が非常に高かったのですが、ここへきて情報共有や知の継承といった情報系システムへの投資が再び盛んになりつつあります。これは、多種多様なスタイルとニーズにどう対処すべきかを、再び考える時期にあるという兆候かもしれません。
本題に入りましょう。端的に言ってしまえば、それぞれの企業が異なるコラボレーションスタイルやコミュニケーションスタイルを望んでいるのであれば、従来のニーズとシーズのバランスをとった製品開発に加え、「組み合わせ」による多種多様なスタイルへの対応を可能にすることが必要と考えています。
それは単にソフトウェアを組み合わせるというだけではなく、サービスも含めた形で提供されるものです。最近ではSaaS(Software as a Service)という言葉もよく耳にしますが、マイクロソフトが目指すものはSoftware plus Serviceです。ソフトウェアの可能性を最大限に高める手段としてのサービスも、ニーズに柔軟に対応するための重要な要素となります。
ビッグローンチイヤーである今年、本稿のテーマでもあるコミュニケーションとコラボレーションの分野において、マイクロソフトはさまざまな製品ラインアップを用意します。Office 2007の中核となるサーバ製品「SharePoint Server 2007」、企業のコミュニケーションに欠かすことのできない「Exchange Server 2007」をはじめ、リアルタイムコラボレーションを実現する「Live Communication Server」、新たなコラボレーションスタイルを提案する「Groove 2007」、Windows SharePoint Serviceの利便性を高める「GroupBoad Workspace 2007」、すでにウィルコムのW-ZERO3などで多くのユーザーに高い支持をいただいていますが「Windows Mobile」も、コミュニケーションの可能性とスピードを大幅に高めてくれます。
また、サービスという点では「Office Live」や「Exchange Hosted Services」も、ソフトウェアの組み合わせだけでは実現できない世界を作り出してくれます。
こうした豊富なラインアップは、先述した多種多様なスタイルとニーズに対応するためのものです。選択の幅は、そのままニーズを受け入れるキャパシティーとなります。
ただ、豊富にラインアップを用意していればよいかというと、それだけでも十分とは言えません。大事なのは、構成する個々の製品やサービスが可能性に富んでいるということなのです。
例えば、SharePoint Server 2007は、企業のコンプライアンスを支援するコンテンツ管理機能やエンタープライズサーチ、KPIダッシュボード機能、ワークフロー、共同作業環境の提供、あるいはWikiやブログ、RSSによる情報発信など、充実の機能セットを用意しています。
利用シーンに応じてカメレオンのように姿を変えることのできるプラットフォームは、Officeを利用されている多くのユーザーのさまざまなニーズに柔軟に対応します。
Exchange Server 2007にしても同様です。メールや予定表だけでなく、ボイスメッセージやFAXなども一元的に管理でき、かつそうした情報へはOutlookというベストクライアントからのみでなく、Webブラウザや携帯電話、Windows Mobile端末など、さまざまな環境やデバイスからのアクセスが可能となります。もちろんこうした生産性、利便性だけでなく、先述のコンプライアンス対応機能も充実しています。
今後のIT投資を考える上で最も重要なのは、各製品が持つこうした可能性は、ニーズによって引き出され、またそれを使いこなしていくと異なるニーズが生まれるという特性を、情報系システムは持っているということを理解しておくことです。
コミュニケーションやコラボレーションといえば、「グループウェア」というような安易な提案で完結してしまうほど、現在の企業におけるコラボレーションスタイル、コミュニケーションスタイルは単純ではありません。常に変化するニーズに耐えうるプラットフォーム、もしくはそれらの組み合わせを選択しなければならないと考えています。
もしかしたら情報システムが果たさなければならない役目が何であったか、見直す時期にあるのかもしれません。
内部統制、ガバナンス、コンプライアンスといった言葉が飛び交う中、規範やルールで統制を図ることが、冒頭で述べた「生産性」「利便性」という真の目的を損なうことになっていないでしょうか?
ITガバナンスを効かせながらも生産性はより高めるといった、一見相反する要望を実現するプラットフォーム、そしてまだ見えない将来のニーズにも耐えうるプラットフォームが現在の情報システムには必要と考えます。Office 2007、Exchange 2007はまさしくそれを具現化するものであり、ニーズに呼応し、リニアに成長するプラットフォームへと進化したと言えます。
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