2011年10月27日 09時00分 UPDATE
特集/連載

FIT2011(金融国際情報技術展)リポート金融機関がiPadに注目する理由を探った

金融機関がiPadを活用し、基幹システムをクラウド上で利用する日は来るのか。金融機関向けの展示会からは金融機関が注目する次のソリューションが垣間見えた。

[垣内郁栄,TechTargetジャパン]

 金融機関はIT投資が多く、その動向は製造業など他の業種にも影響を与える。その金融機関はどのようなITソリューションに注目しているのか。10月19〜20日に都内で開催された「FIT2011(金融国際情報技術展)」から、金融機関以外も参考にできるITのトレンドを紹介しよう(参考記事:巨額のIT投資は生かされている? 銀行に見るERP活用実態)。

ペーパーの問題をiPadで解決

 金融機関の特徴として紙のドキュメントが多いということが挙げられる。社内文書だけでなく、顧客とのやりとりでも紙の資料が多く、金融機関はその管理に頭を悩ませている。FIT2011に出展した各ベンダーからはこの課題をスマートデバイスで解決するソリューションが多く見られた。

 SCSKは金融商品などのプレゼンテーション資料やパンフレットをiPadなどのスマートデバイスに配信するソリューション「FR2GO」を出展した。SCSKは業界別にスマートデバイスソリューションを展開していて、FR2GOは、医薬業界向けソリューション「MR2GO」に続く第2弾との位置付け。プレゼンテーション資料やリポートなどをクラウド上のサーバに登録し、金融機関の営業員が持つiPadにコンテンツを配信する。

 FR2GOクライアントはコンテンツをダウンロードして、オフライン環境でも利用可能。また利用ログを残したり、営業員がiPad上で営業日報を記入できるような機能もある。SCSKは「これまでのペーパー資料では情報の更新ができない、外出先で最新情報が確認できないなどの問題があった。FR2GOを使うことで本社に戻って情報を確認することなく、商談を続けられる」と話した。iPad上で利用するコンテンツビュワーにはCRI・ミドルウェアの技術「CLOUDIA In-Sync」を活用し、スムーズな画面表示を実現しているという。

画像 SCSKが出展した「FR2GO」。パンフレットをiPadに配信する

 みずほ情報総研は、iPadを活用したペーパーレス会議ソリューション「MHIR+SMART-1」を展示した。同ソリューションは会議日程や参加者、端末、資料を一元管理可能。会議の際には発表者がiPad上の資料のページを進めると出席者が持つiPadのページも同期して進むなどの機能がある。クライアントPCをサーバにして、30人程度までの会議に対応する。

 今回は社内会議向けソリューションだが、みずほ情報総研はMHIR+SMART-1をベースにした対面販売ソリューション「MHIR+SMART-2」を11月に発売する予定だ。パンフレットなど紙のドキュメントが多い金融機関をメインターゲットにしている。MHIR+SMART-2はiPad上でクライアントに見せたページのログを保存したり、説明時の音声を録音する機能があり、金融機関のリスク管理や営業員のトレーニングにも利用できるという。

画像 みずほ情報総研の対面販売ソリューション「MHIR+SMART-2」。金融機関をメインターゲットにし、営業員のトレーニングを支援する機能も搭載する

 スマートデバイスを使った会議ソリューションは富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(富士通SSL)も出展。サーバを立ててスマートデバイスにコンテンツを配信する内容で、Windows 7搭載のスレートPC「STYLISTIC」とiPadに対応。今後はAndroid搭載のタブレットデバイスにも対応する予定という。

金融向けクラウドの可能性

 口座情報などを扱う金融機関は一般的に自社のデータを社外に預けるクラウドコンピューティングには慎重だ。しかし、FIT2011の展示からは情報系アプリケーションを中心に、クラウド利用の模索が始まっていることがうかがえた。

 NTTデータはコンタクトセンター向けアプリケーションをSaaSで提供する「BizXaaS コンタクト」を展示した。アプリケーションとして、テクマトリックスのCRM「Fastシリーズ」を利用。金融機関は多額の初期導入費を負担することなくコンタクトセンター向けアプリケーションを利用できる。同時ログインしているユーザー数で課金される仕組みのため、ランニングコストも最適化できるという。コンタクトセンターは時期などによってコール数が増減する。利用頻度にばらつきがあるアプリケーションの場合、SaaSによる従量課金のメリットを得やすいだろう。

 みずほ情報総研は金融機関向けのPaaSソリューションと、その上で稼働するSAP ERPのテンプレートを公開した。PaaSは金融機関向けの情報管理、セキュリティのガイドラインに準拠し、構築、運用管理しているという。SAP ERPをベースに開発したテンプレートは「動不動産管理支援」「単体決算業務支援」「連結決算業務支援」の3つを提供する。それぞれ銀行業務に適した内容にカスタマイズされている。BI(ビジネスインテリジェンス)と組み合わせたデータ分析などもクラウド上で可能にする。みずほ情報総研はオンプレミスの金融機関向けSAP ERPのテンプレートも展開していて、既に20〜30の導入実績件数があるという。

犯罪取引をリアルタイムに検出

 金融機関で今大きな問題になっているのはオンラインバンキングの不正アクセスだ。手口はPCに入り込んだスパイウェアによってIDとパスワードが盗み取られたり、フィッシングメールによって不正なサイトに誘導され、IDとパスワードを入力してしまうケースが多いとみられる。金融機関ではいわゆる「オレオレ詐欺」の被害も依然として多く、FIT2011の展示会場ではこのような不正アクセス、不正行為を防止するソリューションも展示されていた。

 日本オラクルは金融システムの取引を監視する「リアルタイム不正検知」ソリューションを展示していた。オンラインバンキングのログインから出金までのデータの流れをモデル化し、犯罪行為で見られるパターンをリアルタイムで検出する。ソリューションの開発はシグマクシスが協力。データベースにはインメモリ型の「Oracle Coherence」を採用し、高速な処理を可能にしている。

 SCSKはオンラインバンクの総合的なセキュリティ対策を展示会場でアピールしていた。「SECURE YOUR SITE」という名称のサービスで、セキュアなオンラインバンキングサービスの要件定義から設計、開発、構築、運用、テストとトータルで支援するのが特徴。運用フェーズではWebアプリケーションのセキュリティをWAF(Webアプリケーションファイアウォール)で監視し、サーバやOS、ミドルウェアをファイアウォール、IDSIPSでモニタリングし、安全な状態に保つ(参考記事:Webサイトを保護する「WAF」製品紹介)。

画像 ダイナトレックのデータ統合・検索ツール「DynaTrek 4」のデモ画面。地方銀行や信用金庫の利用を想定している《クリックで拡大》

 分析ソリューションではダイナトレックが、地方銀行や信用金庫での利用を想定し、データ統合・検索ツール「DynaTrek 4」を出展していた。このツールは業務系や情報系のデータを仮想的に統合し、データベースを構築できる。Microsoft Excelのマクロなどエンドユーザーの環境を変更することなく、データを仮想的に統合し、活用できるという。

 銀行をはじめとする金融機関は、勘定系システムについては旧態依然とした考えが多く、オープン系サーバの導入などには時間がかかりそうだ。しかし、情報系システムの導入には積極的で、会場では出展企業に熱心に質問をする来場者の姿が多く見られた。

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