コスト削減と生産性向上に最良のサイクル?
「PCは2年ごとに買い換えるべき」説を喜ぶ人と不満な人
PCを買い替えるサイクルは従来通り「3~4年」でいいのか。今日の世界においては、万人に最適な選択肢というものはない。企業によっては、2年ごとの買い替えが得策となる場合もあるかもしれない。
性能が向上する一方で価格の下落が続いているクライアントPC。そのため、「高い計算能力が必要とされる仕事には、PCを2年ごとに買い替えるのが妥当」と考える専門家もいる。
最近発表された研究報告「Replacing Enterprise PCs: The Fallacy of the 3-4 Year Upgrade Cycle(企業PCの買い替え:アップグレードサイクルは3~4年という常識は誤りか)」では、職場において一般的な役割別にPCのパフォーマンスを計測するテストを実施し、PCの買い替えサイクルが生産性向上とコスト削減に及ぼす影響を明らかにしている。
エンジニアには最新のPC環境を
この研究報告を発表した米ITコンサルティング会社J.Gold Associatesのジャック・ゴールド社長によれば、2年以上前のPCを使うと、もっと新しいPCを使う場合よりも従業員の生産性は低下するという。同氏は「PCを単なるコストとして捉えるべきではない。企業は従業員に新しいPCを提供することで、従業員の生産性を高められる」と語る。
この研究は、企業PCの買い替えサイクルを3~4年とする従来の説に異を唱えている。当然ながら、その論理に懐疑的な声はある。ある大手製薬会社のモバイルイノベーション担当ディレクター、ブライアン・カッツ氏は「リース契約に移行するのでもない限り、大企業にとって、買い替えサイクルを3年から2年に変えるのは難しい」と語る。だが、一方でカッツ氏は、より高性能なPCが業務上必要となる場合には、この研究報告が「企業に2年ごとの買い替えを促す説得力のある論拠」となることも認めている。
この報告書は2014年8月に発表された。研究には、実在のアプリケーションを組み合わせてPCの総合性能を計測するベンチマークプログラム「SYSmark 2012」が使用された。SYSmark 2012には、企業ユーザーによるPC利用を想定したテストシナリオとして、「Web開発」「オフィス生産性」「メディア作成」「データ/財務分析」「3Dモデリング」「システム管理」の6つが用意されている。テストシナリオの実行には、2012年発売のノートPC「HP EliteBook 8570P」と、現行モデルの「HP ProBook 650」が使われた。両者の最大の違いはプロセッサの速度だ。
この研究では、標準的な就業日に従業員がPCを使用する時間に重み付けをし、職場での役割別にベンチマークテストを行い、生産性向上の効果を人件費換算した。職場での役割として用意されたのは、「オフィスワーカー」「エンジニア」「管理者」「ビジネスアナリスト」「Web開発者」「IT担当者」の6つだ。
テストの結果、生産性向上率が一番低かったテストシナリオは「データ/財務分析」で3.6%、一番高かったのは「3Dモデリング」で20.1%だった。2年前のPCではなく新しいPCを使用することで削減できる年間コストは「エンジニア」が年間1万3103ドルで最も多く、「Webプログラマー」が1万1151ドルでそれに続いた。
さらにこの研究では、生産性向上がもたらすコスト削減効果が年間で何日分の就業時間に相当するかを職場での役割別に算出した。その結果は「ビジネスアナリスト」が11.12日と最も少なく、「エンジニア」が27.3日で最も多かった。
「2年で買い替え」は現実的か
ITプロフェッショナルは、2年という買い替えサイクルが大企業でもうまくいくかという点について懐疑的だ。ITコンサルタントとしての経験が長いマイク・ドリップス氏も「興味深い研究結果ではあるが、この結論は大半の企業には当てはまらない」と指摘する。同氏は以前、従業員数が10万人のとあるグローバル企業において、PCを買い替えるのではなく、RAMとビデオカードを追加することでシステムをアップグレードしている。
企業が2年ごとの買い替えにこだわるかどうかは、BYOD(私物端末の業務利用)の導入とも関わってくる。ハードウェアコストを削減するためにBYOD制度を支持する企業は多い。「だが、それでもやはり企業は資産を管理しなければならない」と、ドリップス氏は指摘する。
職務内容や会社のIT環境によっても異なるが、場合によっては、2年ごとの買い替えがうまくいくケースもある。大手SIerの米MCPcでエンドユーザーおよびモバイルコンピューティング担当の最高技術責任者(CTO)を務めるアイラ・グロスマン氏は、「メーカー保証期間を3年以上経過したPCを使い続けている企業は、PCの修理に追われることになりかねない」と指摘する。
データ入力など、ダウンタイムがそれほど問題にならない仕事向けであれば、PCの寿命を伸ばすことは可能かもしれない。だが、パワーユーザーにはシステムのアップデートが必要であり、そうしたユーザーには短期の買い替えサイクルが必要だ。オフィスワーカーと比べて、エンジニアや開発者には高性能コンピュータが必要となる可能性が高い。ただし、企業がデスクトップPCやノートPCの買い替えサイクルを2年に短縮するためには、まずコストを検討する必要がある。
この研究報告によれば、今後、企業によるクラウドコンピューティングの利用が進むにつれ、IT部門がマシンやアプリケーションのアップグレードに費やす時間は減るはずだという。だが、この指摘にITプロフェショナルが皆同意しているわけではない。
ドリップス氏は、クラウドの影響は及ばないという。2年というPC買い替えサイクルの良しあしはクラウドよりも個々の職務内容に大きく左右されるからだ。
また、買い替えサイクルをめぐる議論では、「資本コスト」と「企業がPCを移行するのに要する時間」も考慮に入れる必要がある。
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