若手IT技術者をはじめとして、「人生論」を題材にしたブログや記事が、IT技術者の間ではよく読まれているようです。その傾向は、いったい何を表しているのでしょうか。現代のビジネススタイルと併せて考察したところ、IT技術者の現状が見えてきました。
最近、いろいろなセミナーや研究会などに参加して、20代の若手から30代の中堅IT技術者の皆さんと話していると、人生論や動機付け、生きがいや仕事のやりがいという課題に大きな興味を持っている方々が、かなり増えています。これは、伝統的な大手ベンダー企業やユーザー企業のIT部門担当者、ベンチャー企業で働くエンジニアなど、全てのIT技術者に共通の問題意識ではないかと思われます。同時に、インターネットへのブログや記事投稿の中では、いわゆる広い意味での人生論記事がIT技術者の皆さんに読まれています。その背景には一体、何があるのでしょうか。
それには色々な理由があるようです。
確かに、国家資格が実務能力と直結する会計士や司法書士、電気通信技術者などと比較して、IT技術者のための資格は、ほとんど社内外から何の評価もされていません。せいぜい毎月の給与が数千円上がる程度です。資格保持者の数を競争入札の条件にする官公庁や自治体の場合は、多少IT技術者資格を持っている意味はありますが。
これは、ICTと言われる領域での技術革新のスピードがあまりに速く、変化が激しいことが理由に挙げられます。
先輩が苦労して取得し、自慢げに保持しているアプリケーションエンジニアの認定資格も、内容がすぐ陳腐化するとなれば、若手のIT技術者にとって取得のための強い動機付けが生まれません。それならば、ちょっと能力の高いIT技術者にとっては英語のTOEICの点数を引き上げた方が、よほど転職の時に評価してもらえます。
資格の取得が自らの市場価値を評価し、一定程度の人生を担保する保証にならず、一方で技術の陳腐化のスピードが速いとなれば、IT技術者は毎日、漠然とした不安を抱えたまま働くことになります。水泳に例えれば「今は平泳ぎが全盛だけれども、いつ何時シンクロナイズドスイミング全盛の時代が始まるかもしれない。そうなれば平泳ぎの実績も資格も紙くずだ」と考えながら練習するようなものでしょう。
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