IT変革力【第39回】
Web2.0大統領選挙が始まった!
2008年米国大統領選挙の立候補者たちは、SNSでファンコミュニティーを作ったり、ブログサイトに広告を出稿したりと、さまざまな手法で有権者の注目を集めています。さながら「Web2.0大統領選挙」といったところでしょうか。候補者それぞれのWeb2.0活用を見ながら、それが今後の企業のWeb活用戦略にどのような影響を与えるのかを考えてみましょう。
2008年の米国大統領選挙が近づいてきました。米国では既に選挙戦が始まっています。前回の2004年の大領領選挙では、民主党候補のディーン候補やケリー候補がブログを駆使したり、Meetup.comという原始的なSNSを駆使して選挙戦に臨みました。その結果、ブログは米国社会で公認された情報発信手段として見なされるようになり、ブロガーがホワイトハウスで記者章を発行されるなど、大きな変化がありました。さながら「ブログ大統領選挙」だった訳ですね。米国企業によるブログの活用は、2004年の大領領選挙の影響を受けて「デモンストレーション効果」が働き、大いに前進したと言われています。
さて、筆者が2008年の大統領選挙に注目する理由は、この選挙がビジネス界におけるWeb2.0活用戦略にいかなる影響を与えるのか、興味があるためです。とりわけ米国では2009年2月の地上波テレビ放送の完全デジタル化が控えています。当然、米国大統領選挙は北京オリンピックと並んでその前哨戦とでも言うべきメディアの一大イベントであり、米国の経済界のみならず、世界中の企業のWeb2.0活用戦略に大きな影響があると考えられます。
2008年の米国大統領選挙も、やはり民主党のオバマ候補や女性のクリントン候補、前回活躍したエドワーズ候補がソーシャルメディアを活用して、ICT技術の活用に関する限りにおいて選挙戦をリードしているようです。インターネットなどのICT技術の活用に関しては、前クリントン政権の時代に副大統領だったゴア氏が「情報スーパーハイウェイ構想」を推し進めた経緯があり、民主党のお家芸といったところでしょうか。
いろいろな政治コラム関係のブログへの広告出稿とGoogle検索への期待
まず共和党、民主党に限らず各党候補者は、いろいろな政治コラムや政治評論を行うブログサイトに広告を打っています。多くの場合、政治コラムの横に候補者の広告があり、それらの広告をクリックすると、候補者のサイトに誘導されます。例えば、元ニューヨーク市長であり、アラブ過激派の9.11事件への優れた対応で有名な共和党のジュリアーニ候補の名前をGoogleで検索すれば、記事内容と同時にジュリアーニ候補の広告が表示されます。面白いのはその時、ジュリアーニ候補の広告だけでなく、ライバルであるロムニー候補やマケイン候補の広告も表示される点でしょう。3人ともGoogleに広告出稿をしている訳ですね。
また、政治コラムを書くブログサイトに広告を出稿したからといって、ブロガーたちから好意的な記事を書いてもらうことは期待できないようです。例えば、マケイン候補の広告が出ている左側には公然と彼を批判した政治コラムが掲載されている、といった具合です。
これはブロガーの側から見れば「やらせ批判」というリスクを避ける意味合いもあるようですが、このあたりの割り切り方は本当にビジネスライクです。
また、多くの候補はブログで記事を書く専門家を多数採用して、記事を書いてもらっています。
ただし、政治コラムの読者は、米国では35歳から54歳の男性、年収が1万ドル以上の層が大半を占めるため、若者や女性対策として各候補は知恵を絞る必要がありそうです。
そこで、Web2.0のソーシャルメディアの深い活用が注目されています。
若者や女性を狙う民主党のWeb2.0大統領選挙のすごさ
民主党の主要候補であるヒラリー・クリントン候補、ジョン・エドワーズ候補、バラック・オバマ候補のソーシャルメディアの活用はすごいものがあります。中でもオバマ候補のソーシャルメディアの活用は、選挙後のビジネス界に大きな影響を与えるでしょう。
ヒラリー・クリントン候補
元ファーストレディーのクリントン候補は、自ら立ち上げたホームページ(HillaryClinton.com)から情報発信するHILLARY TVを中心に選挙戦を展開しています。
またSNSのMySpace上にはプロフィールを置き、約2万人のファンクラブを立ち上げています。
ジョン・エドワーズ候補
2004年当時、民主党ケリー大統領候補の副大統領候補だったエドワーズ候補は、もっぱら動画サイトのYouTubeを活用しています。またSNSのMySpace上でも約1万人のファンクラブを立ち上げています。
バラック・オバマ候補
民主党各候補の中で、ソーシャルメディアと呼ばれるWeb2.0の技術を最も先端的な形で活用していると大評判なのが、民主党の新星であるオバマ候補です。
既に若者が集う学生用SNSのFacebook上でファンクラブを立ち上げ、数十万人の参加者を獲得しています。これはちょっと侮り難い存在になってきました。また、米国最大規模のSNSのMySpace上でも4万人のファンクラブを立ち上げており、民主党ではトップの数字です。写真サイトで有名なFlickrやブログ、さらに動画サイトも自身のホームページから立ち上げています。さらにすごいのは、My.BarackObama.comという選挙支援者のSNSを立ち上げた点でしょう。このサイトは非常に完成度が高いと評判を呼んでいます。
ブログや写真サイト、SNSも外のものと自ら立ち上げたものの合計3本を活用し、動画サイトまで立ち上げたオバマ候補のメディアミックス戦略が光っています。
上記の民主党候補者の中では、クリントン候補のHILLARY TVと、オバマ候補の各種ソーシャル・メディアの組み合わせが注目に値します。
2008年の大統領選挙の経済界への影響
大統領選挙の結果はまだ分かりませんが、もしソーシャル・メディアを駆使したオバマ候補がよいところまで行けば、既に地上波離れを起こし始めている米国企業は、自社のポータルサイトを活用したSNSによるファンクラブ立ち上げたり、自社のポータルサイトでテレビを立ち上げて、物語性を持った動画広告を発信するブランデッド・エンターテインメントへの傾斜を強めることが予想されます。企業のマスコミ離れが加速するかもしれません。
当分の間、「Web2.0大統領選挙」から眼が離せなくなりました。
(野村総合研究所 社会ITマネジメントコンサルティング部 上席研究員 山崎秀夫)
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