IT変革力【第34回】
Web2.0が進化させたブランデッド・エンターテインメント型広告のすごさ
Web2.0の普及により、誰でも簡単に動画や写真を投稿できるようになった今、企業の提供する広告も形を変え始めています。米国で既に始まっている、ブランデッド・エンターテインメント型広告とは一体どのようなものなのでしょうか。
Web2.0の特徴は、誰でも簡単に日記や写真、動画を投稿でき、インターネット上で穏やかな社交が可能な社会環境ができあがった点であると言われてきました。これは、大衆表現社会と言われているものであり、それを支えるソフトウェアなどのICT技術の仕組みはソーシャルメディアと呼ばれています。ソーシャルメディアの活用において、これまで非常に注目を浴びて来たのは、オープンソースマーケティングという呼び名の消費者作成(主導)広告(CGCM)でした。
本日は、原則として消費者ではなく、「マーケティングなどのプロ」が作成する広告の進化について説明しましょう。
ブランデッド・エンターテインメントとは何か
ブランデッド・エンターテインメントというのは、商品を提供する企業が映画やテレビ、ラジオなどを媒体として、ストーリー(物語)やテーマ音楽、世界観などの提供の中でコマーシャルを行うマーケティング手法であり、比較的古くから活用されてきた広告手法です。これは共感型のコミュニケーション・マーケティングの1つと考えられてきました。物語の中で、自社の商品やサービスをさり気なく小道具として提供するなどのやり方が典型的です。
米国映画『Runaway Bride』の中で、女優のジュリア・ロバーツが「FedExの車」に乗り込んで恋人に「さよなら」するシーンが出てきます。これは、宅配サービスのFedExの宣伝を兼ねたブランデッド・エンターテインメントとして知られています。
また、ジェームズ・ボンドの映画では、Rolexの時計などの各種商品が場面の至るところに登場しています。テレビでも、ドラマの中に特定ブランドのファッションを織り込んだ番組は盛んに作られています。マラソン中継におけるオフィシャルカーやオフィシャルドリンクの提供も、ブランデッド・エンターテインメントの一種と考えられます。マラソンなどのスポーツというドラマの中で、自社の車や清涼飲料水が脇役を演じているというわけですね。
これまでは、ストーリーはマスコミが主体的に製作し、その中に企業はブランド広告をちょっと埋め込むというタイプのアプローチが主流でした。
さて、そのブランデッド・エンターテインメントが、Web2.0の時代となって大きな進化を遂げ始めました。
インターネット上の各種プロモーションビデオに注目
まず2001年頃から、自動車のBMWが自社のホームページ(ポータルサイト)から、自社製作による車のプロモーションビデオを流し始めました。そしてこれが動画サイトやブログ、SNSなどの時代を迎え、2006年頃から大きく進化し始めています。
ユニリーバ社は化粧品販売などでも有名ですが、同社が動画サイトYouTube上で行ったプロモーションビデオによる口コミ広告は、視聴者を驚かせました。
同社の「Lynx」と呼ばれる男性用フレグランス商品のために、「LynxJet」と呼ばれる仮想の航空会社の物語を作り出し、それを基にしたプロモーションビデオを製作しました。よい匂いのする男性用フレグランス化粧品Lynxを使っていれば、スチュワーデスたちが寄ってきて、ある種の特別サービスをしてくれるという激しいものでした。
このコンテンツから判断して、とても一般テレビから放映できる内容ではありません。しかし非常にインパクトが強く、インターネット上で口コミを喚起するのに十分でした。
このように、マスコミから離れ、場合によっては既存の広告代理店からも離れて、自社で物語を製作し、そのストーリーの中に広告を挟み込むという方向へブランデッド・エンターテインメントが進化を始めています。
こうして、インターネット上で企業自らが物語や音楽などを消費者に提供し、その中に広告を埋め込んでいく新しいタイプのブランデッド・エンターテインメントが登場しました。
注目を集めるBud.TV
さて、マスコミを通さない、インターネット上での企業による主体的な物語や音楽提供が、新しいタイプのブランデッド・エンターテインメントの特徴でした。
それが、米国で最も注目されるスポーツイベントである2月のスーパーボールを前に、にわかに盛り上がっています。ビールのバドワイザーのアンハイザー・ブッシュ社が、自社の企業ポータルサイトからテレビ放送を始めると発表したためです。娯楽番組や音楽、トークショー、コメディ、スポーツ番組、リアリティ番組をインターネットテレビで放映するそうです。
7チャンネルからなる同社のサービスは、バドワイザーの頭文字を取ってBud.TVと呼ばれています。最後の7チャンネル目は、消費者による素人ビデオの投稿や、消費者にコマーシャルビデオの作成依頼を行い、コンテストを実施するなど、草の根広告用のチャネルとなり、YouTubeならぬ「BudTube」と呼ばれています。これらのサービスは、2007年2月5日のスーパーボールの終了時点頃から開始されます。(「A NEW GENERATION OF ENTERTAINMENT IS COMING SOON」)このため、同社は、ビデオプロダクションの製作会社を立ち上げています。
このような動きは、米国では2007年に多くの消費財産業に広まると予想されており、American HondaやP&G、General Motors、ぺプシコーラのPepsiCo,Incなど、一流の企業がブランデッド・エンターテインメントの名の下に、大なり小なり同様のアプローチを始める準備をしていると言われています。
こうして、名実ともにブランド商品の提供企業が、直接、自社の商品やサービスにふさわしい物語やテーマ音楽を提供し、広告をさり気なく織り込むという新たな形態のダイレクト・マーケティングが登場しました。
我が国でも、大手広告代理店が盛んに新しいブランドデッド・エンターテインメント型の広告を企業に推奨し始めています。そのうち、日本でも企業の自社インターネットテレビブームが来るかもしれません。
(野村総合研究所 社会ITマネジメントコンサルティング部 上席研究員 山崎秀夫)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] 複雑化しがちな「SASE運用」 IT・医療・金融などの事例に見る導入成功の秘訣 -
製品資料
[フォーティネットジャパン合同会社] 「SD-WAN」導入で失敗しないための5つの重要事項 -
技術文書・技術解説
[フォーティネットジャパン合同会社] VPNの代替候補「ZTNA」を理解できるようになる“3大要素”とは? -
事例
[フォーティネットジャパン合同会社] すぐ分かる「SD-WAN」選定のポイント 成功企業はどんな成果を出した? -
製品資料
[SCSK株式会社] 「Dropbox」管理・運用の困りごと解決ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
Microsoft月例パッチ1400件超で過去最多 「限界点」を迎えたパッチ管理
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
5
みずほ証券が「液冷サーバ」を採用 1日3.6億件の計算を支えるための要件
-
6
SAP導入後も残る“Excel依存” 京急電鉄は「kintone」でどう解消した?
-
7
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
8
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
9
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
10
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー