“キワモノ”ではない「Windows+Android」デュアルOS端末の思わぬ使い道タブレットのAndroid、PCのWindowsからいいところ取り

米Intelが掲げた、1台でWindowsとAndroidの両方を実行できるモバイル端末のサポート戦略。使用アプリケーションによってユーザーが端末の操作形態を選択する仕組みは、競争が激化している市場に受け入れられるのだろうか?

2014年01月22日 14時45分 公開
[Diana Hwang,TechTarget]

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 米Intelは、1つの端末に2種類のOSを搭載するデュアルOSプラットフォーム戦略を新たに打ち出した。これは、米MicrosoftのWindowsを維持しながら、米GoogleのAndroid OSをエンドユーザーに提供する手段になる。

 Intelは、1つのプラットフォームでWindowsとAndroidの両方を実行できる「2-in-1」コンピュータをサポートする予定だ。2014年には、台湾Asusをはじめメーカー各社から、2つの環境をボタン1つで切り替えられるデュアルOS端末が提供されるとみられる。デュアルモードなら、タブレットとPCの融合を実現し、使用するアプリケーションに応じて、ユーザーが端末の操作形態を選択できる。

 「デュアルOSは確かに面白い仕組みだが、2-in-1タイプのPCでないと有用性はないと思う」と語るのは、米調査コンサルティング会社Technalysis Researchの創設者、ボブ・オドネル氏だ。

 デュアルOSの概念は、同じ端末上でアプリケーションとデータを業務用と個人用とに分離できる「デュアルペルソナ」技術と似ているが、デュアルペルソナは「Blackberry Balance」などのデュアルペルソナツールを使って実現し、端末に搭載されるOSは1種類のみだ。

タブレット形態ならAndroid? PCモードならWindows?

 「1つの端末で2種類のOSが使えるというのは、一部のユーザーにとって有用だろう。2-in-1端末をタブレット形態で使うならAndroidが便利だし、キーボードを使うPCモードならWindowsが適している」と、オドネル氏は語る。タッチ操作で端末を使う場合は、Androidのインタフェースの方が、Windows 8.1のユーザーインタフェースよりも、シンプルで操作しやすい。

 また、オドネル氏によると、Windows 7とAndroidという組み合わせのデュアルOSもサポートされる可能性があるという。そうなれば、現在もWindows 7と従来のデスクトップインタフェースを利用している企業は現状を維持でき、Windows 8にアップグレードせずに済む。

ITサポートの問題をもたらすデュアルOSプラットフォーム

 「WindowsとAndroidの2つのOSをサポートするシステムを導入した場合、管理上の問題やアプリケーション関連の問題が発生し、さらに、環境が複雑になる可能性がある」と、Microsoft関連のコンサルティングを専門とする米Directions on Microsoftのリサーチアナリスト、ウェス・ミラー氏は指摘する。

 また、Googleは2013年に、エンタープライズレベルの要件を満たすべく、Androidのセキュリティ強化を図ってはいるが、Androidのセキュリティは大きな懸念事項の1つだ。

 しかし、Intelの新CEOブライアン・クルザニッチ氏によると、同社はハードニング(堅牢化)による端末保護技術を採用し、Android端末でエンタープライズレベルのセキュリティを実現するという。また、Intelは、モバイル端末の保護を支援し、企業のIT担当者が抱える懸念に応えられるよう、McAfeeブランドで提供してきたモバイルセキュリティ製品を無償で提供することを打ち出している。

 だが、米コンサルティング会社Pica Communicationsの主席コンサルタント、ポール・デグルート氏は「デュアルOS端末は、AndroidがエンタープライズレベルのWindows PCに便乗して企業に入り込むきっかけになる」と話す。

デュアルOS端末はヒットするか?

 現時点では、2014年に登場する予定のデュアルOS端末の成功を判断することはできないが、Windows+Androidのエコシステムには、特定のアプリケーションを実行するニーズはある。

 ミラー氏は「多くのユーザーは、AndroidにはWindowsにはないアプリがあると考えている」とした上で、デュアルOSを採用することでAndroidにしかないアプリが手に入るが、技術に詳しくないユーザーにとってはかなりハードルが高い可能性も指摘している。

 実際、ソフトウェア開発とアプリケーションは、デュアルOS端末の成功を大きく左右することになるだろう。

 前出デグルート氏も、「Androidでのビジネスアプリ開発は、かつてないほど活発になるかもしれない」とコメントしている。

 ソフトウェア開発投資の比重は、時間も資金も、WindowsのネイティブアプリよりもAndroidアプリの方が大きい。

 また、デグルート氏は、カスタムのAndroidアプリを開発して、直接または会社の社内Webサイトからエンドユーザーの端末にインストールできる点に注目する。

 「Windows 8アプリではそれはできない。Windows 8アプリはWindowsストアから実行するか、Windows 8マシンの費用を上乗せしてサイドローディングキーを購入する必要がある」(デグルート氏)

 しかし、MicrosoftがデュアルOSシステムの成功の足かせになる可能性がある。ある情報筋は、こういったデュアルOS搭載端末は、Windowsのライセンス契約には違反しないが、パートナーに問題をもたらすかもしれないという。例えば、デュアルOSシステムモデルを販売するベンダーに、Microsoftが市場開発資金を提供するかどうかは不明だ。

 「Microsoftは、ベンダーのマーケティング活動の一部として資金を提供している。実際、(ベンダーの)マージンはかなり薄く、Microsoftからの資金提供による追加収入は重要だ。Microsoftは特定のベンダーを完全に締め出すことはしないだろうが、デュアルOS製品を支援することない。となると、ベンダー側には資金面である程度影響が出てくる」

 これに関して、Microsoftからコメントは得られなかった。

 一方で、Intelのライバルである米AMDは先ごろ、米BlueStacksと共同でWindows PCでAndroid OSを実行可能にするソリューションを開発することを発表している。これは、IntelのデュアルOSシステムのニュースに陰を落とす形になった。

市場調査会社はAndroidの市場シェアは今後も伸びると予想

 米調査会社Gartnerが2014年1月初旬に発表した予想では、2014年末までに出荷されるモバイル端末(PC、タブレット、モバイルフォン、ウルトラモバイルPCを含む)数は25億台で、内11億台はAndroid端末が占めるとしている。

 ただしGartnerは、デュアルOSシステム端末は、今すぐ市場に大きな影響をもたらすとは見ていない。Gartnerのリサーチディレクター、ランジット・アトワル氏によると、「エンドユーザーは、まず画面サイズなどの要素を基に端末を選んでから、自分の主なニーズにかなうOSを選ぶ」というのがその理由だ。

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