次の競争は「家電」、テクノロジー企業と電力会社がガチンコ勝負へ家電を制御するのはどっち?

モバイルデータのトラフィックが増加すると通信業界のチャンスは増える。だが、テクノロジー企業は、電力業界をかき乱すべく電力会社に真っ向から勝負を挑んでいる。

2014年07月30日 15時00分 公開
[Katherine Finnell,TechTarget]

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 米Kleiner Perkins Caufield & Byersのアナリスト、メアリー・ミーカー氏が2014年6月上旬に発言したところによると、インターネットの成長率は低迷しているが、モバイルデータのトラフィック増加が、業界に新たなチャンスをもたらしているという。テクノロジー企業と電力会社による、消費者の電力と家電の制御権を巡る争いが幕を開けようとしている。通信事業者と提携して、通信機器と電力のセット販売を試みているテクノロジー企業もある。一方、米Googleなどの大手テクノロジー企業には、ホームオートメーションテクノロジー企業を買収するという動きが見られる。

 米連邦通信委員会(FCC)が、ブロードバンドサービスを電気通信事業者の通信サービスとして再定義することを防ぐ法案が下院で提出された。これは、このような再定義が行われるとインターネット経済をかき乱す恐れがあることを危惧した動きだ。本稿では、押さえておくべき通信業界の最新事情を紹介する。

モバイルデータのトラフィックが急増

 Kleiner Perkins Caufield & Byersのアナリスト、メアリー・ミーカー氏は、2014年5月末に米国のITニュースサイト「Re/code」主催の「Code Conference」で2014年度のインターネットトレンドに関するプレゼンテーションを行った。そこで語られたのは、インターネットの成長率は世界的に落ち込んでいるが、モバイルが通信業界成長のチャンスであることに変わりはないという事実だ。

 全世界のインターネット成長率は、市場が飽和状態になったため、年間10%以下で低迷している。一方、モバイルデータのトラフィックの成長率は81%で、モバイルのインターネット使用率は25%上昇しているという。

 ミーカー氏のプレゼンテーションでは、モバイル業界で成長が著しい分野と、その成長に貢献しているトレンドや他の業界が取り上げられていた。例えば、「米Googleの『Android』と米Appleの『iOS』は、2013年度に世界市場で販売されたモバイルOSの約97%を占めていたこと」「モバイルデバイスの販売台数は急速に伸びていること」などだ。

 データをクラウドにアップロード/保存する消費者も増えている。全世界のデジタルコンテンツの3分の2が、消費者によって使用され、作り出されている。ストレージや帯域幅の低価格化も相まって、データのアップロードと共有はクラウドの成長を押し上げている。

 教育業界と医療業界はモバイルの成長から最大の恩恵を受けることができるとミーカー氏は語る。この2つの業界では徐々にデジタル化が進み、コストの削減が進んでいるからだ。ミーカー氏は、米国のモバイル広告には30億ドルの新たなビジネスチャンスがあると見込んでいる。

電力会社がテクノロジー業界の次なる戦場となるのか

 テクノロジー企業と電力会社の次の争いは家庭内で起ころうとしている。その対象となるのは電力と家電の制御権だ。

 Googleと米AT&Tは、電力会社が独占している電力とエネルギー市場を切り崩すことに関心を示している。Googleは2014年2月に米Nestを買収した。Nestは、携帯電話を使用して調節できるスマートサーモスタット(自動温度調節機)を開発した企業だ。AT&Tは、2013年にスマートサーモスタット市場に参入した。同社が提供するスマートホームサービス「AT&T Digital Life」のシェアを拡大することに成功した。

 米NRG EnergyのCEO、デイビッド・クレーン氏は次のように指摘する。「今後5年の間に電力業界のターゲットは家庭になると予想している。また、当社の競合企業やパートナー企業になるのは、既に電力メーターの中に手を伸ばしているGoogle、米Comcast、AT&Tだろう」

 NRG Energyは、太陽エネルギーに多額の投資を行い、電力会社と対決する姿勢を見せている。電力会社がメーター以上のものを開発して、消費者の家庭で重要なポジションを獲得する手掛かりは持っていないとクレーン氏は指摘する。NRG Energyは米Comcastと提携し、米ペンシルバニア州で、電力と一緒にケーブルテレビ/電話/インターネットを試験的にセット販売している。

 ホームセキュリティ企業の米Vivintも顧客にルーフトップ型太陽光システムをリース販売することで、この競争に参入している。契約を結べば、顧客は太陽光システムが生み出す電力を、電力会社から購入するよりも最大30%安い価格で購入できる。米Bloomberg BusinessWeekによると、電力会社はVivintなどのホームオートメーション企業と契約を結べば、スマートテクノロジーを導入できる。そうすれば、顧客は家電をより細かく制御して停電や電力不足を回避できるようになる。

  米SmartGrid Consumer Collaborativeで専務取締役を務めるパティ・デュランド氏は、次のように自身の見解を述べている。「今後10年間で起こる変化は、電力業界が過去100年間で経験したものよりも大きくなる見通しだ。過去100年にわたって電力会社は顧客をないがしろにしてきた。だが、これからは顧客が重視されるようになる」

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