「i和design-Programming Festival」リポート
ゲーム「Minecraft」でプログラミング授業? 多摩市立愛和小学校が挑戦(1/3 ページ)
小中学生に圧倒的な人気を誇るゲーム「Minecraft」。海外を中心に、その教育利用が進みつつある。そんな“最先端”の授業を実践する多摩市立愛和小学校の取り組みを紹介する。
先駆的なIT活用校として知られる東京都・多摩市立愛和小学校が2015年度、新たに開始したのがプログラミング授業だ。3年生から6年生までを対象に、年15時間を割いてプログラミングを教える。「総合的な学習の時間」を利用した、教育課程の中に位置付けた形での実践である。
「Scratch」「ScratchJr」「Viscuit」といった学習者向けのビジュアルプログラミング環境を日常のプログラミング授業で活用する愛和小学校。同校はさらなる取り組みとして、小学生に圧倒的な人気を誇るゲーム「Minecraft」をプログラミング授業に活用しようとしている。
そんな愛和小学校は2015年10月31日、プログラミングをテーマにした公開授業「i和design-Programming Festival」を開催した。プログラミングスクールをはじめとする外部組織の協力で開催した同イベントで披露したのは、Minecraftや電子工作キット、ロボットなどを使ったプログラミング授業だ(写真1)。同イベントの内容を基に、さまざまなツールを使ったプログラミング授業の可能性を探る。
Minecraftをプログラミング授業に活用
5年生の教室では、教育機関向けのMinecraftである「MinecraftEdu」を使ったプログラミング授業を実施した。MinecraftEduは、フィンランドのTeacherGamingがMinecraftをベースに開発した教育用のMinecraftだ。管理者権限を持つ教員用と、一般ユーザーである学習者用のアカウントを用意していたり、クラス全員で1つの仮想空間に入って一緒に建造物を作るといった協働作業を可能にしたりしている。
公開授業では、児童は「タートル(亀)にダンスをさせよう」という課題に取り組み、プログラミングの基本である「順次実行」と「繰り返し」を学んだ。具体的には、Minecraftの仮想空間「ワールド」内にある構造物「ブロック」をタートルに見立て、そのブロックを上下左右に動かし、チーム内で同じ動きをさせたり、動きを工夫したりした。MinecraftEduでは、命令ボタンを升目状に配置するといった一般的なビジュアルプログラミング環境と同様の要領で、ブロックに動作の指示を与えることができる(写真2)。
この授業は、子ども向けプログラミングスクールTENTOの協力で実施した。TENTO代表の竹林 暁氏は、「Minecraftの世界でプログラミングをすると結果が分かりやすく、楽しく学習することができる」と語る。
プログラミング授業というと、Scratchをはじめとするプログラミング学習用ツールの活用を思い浮かべる教育関係者は少なくないだろう。Minecraftのようなプログラミング要素を備えたゲームの登場は、子どもが普段から親しんでいるゲームが、プログラミング学習の場になり得る可能性を示すものだ。
なぜプログラミング授業に「Minecraft」なのか
「サンドボックスゲーム」とも呼ばれるMinecraftは、ワールドという仮想空間の中で木や土、鉱石などさまざまな材料のブロックを集め、建造物や街を構築したり、モンスターと闘いながらワールド内を冒険したりできるゲームだ。1人で遊べるのはもちろん、複数人が1つのワールドに入って協働で創作をすることもできる。
スウェーデンのMojang(米Microsoftが2014年11月に買収)が販売するMinecraftは2011年の発売以降、世界中で人気を集めており、売り上げやダウンロード数が年々増加。クライアントPC版は2000万ダウンロード(2015年7月時点)、スマートフォン版の「Pocket Edition」は3000万ダウンロード(2015年1月時点)を達成した。国内では近年、人気コミック誌でMinecraftを題材にした連載が始まったこともあり、小学生の間で特に人気が高まっている。
ゲームとして十分な魅力を備えたMinecraft。ただし、教育機関がMinecraftに注目する理由は別のところにある。それは「レッドストーン回路」と呼ばれる仕組みの存在だ。レッドストーン回路を駆使すると、ブロックや建造物の動作を自動化したり、遠隔操作したりできる。プレイヤーの創造性をかき立てる自由度の高い遊びを実現するレッドストーン回路。この仕組みを生かして、プログラミング授業に活用しようと考える教育機関が現れ始めている。
ゲームやゲーミフィケーションの教育的利用が進む海外では、既に小中学校の授業や放課後のアクティビティにMinecraftを利用する動きが広がっている。愛和小学校が活用するMinecraftEduをはじめ、教員向けの管理ツールや専用教材などを加えた教育版のMinecraftも登場。プログラミング授業や学習者同士が教え合う協働学習、課題解決型学習(PBL: Project Based Learning)などで活用が広がりつつある。
一方の国内では、子ども向けのプログラミングスクールなどを中心に、Minecraft/MinecraftEduを使ったプログラミング講座を開設する事例がようやく現れ始めた状況だ。「海外ではゲームやゲーミフィケーションを学習に活用する研究や取り組みが進んでいるが、日本ではかなり遅れていることに問題意識を持っている」。愛和小学校の松田 孝校長はこう語り、公立小学校がゲームを用いたプログラミング授業を実践する意義を強調する。「Minecraftは、子どもが実生活の中で夢中になっているものに目を向け、そこからプログラミングなどの新しい学びを開拓していくための1つの手段だ」(同)
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