オンプレミス環境で運用していた自社開発のシステム環境を「Google Cloud Platform」(GCP)へ移行した企業がある。クラウド移行やGCPを選択した理由について担当者に聞いた。
近年、情報システムの一部に「パブリッククラウド」を活用することが珍しくなくなってきた。技術評価のための試用や開発環境としての活用、SaaS(Software as a Service)で提供されている業務アプリケーションの部分的な利用といったユースケースは、既に一般的なものだ。また顧客に向けて提供しているサービスの基盤全体を、パブリッククラウドに構築するといった取り組みも徐々に広がってきている。
データ活用とその関連製品/サービスに強みを持つブレインパッドも、そうした取り組みを進める企業の1社だ。同社は2017年4月6日、オンプレミス環境で運用していた自社開発による運用型広告最適化ツール「L2Mixer(エルツーミキサー)」のシステム環境をGoogleのパブリッククラウド「Google Cloud Platform」(GCP)へ移行したと発表した。
L2Mixerをクラウドへ移行した経緯や、移行先としてGCPを選択した理由、また現状での課題などについて、ブレインパッドでテクノロジー&ソフトウェア開発本部の基盤開発部長を務める下田倫大氏と、同社マーケティングプラットフォーム本部開発部でL2Mixerの開発に携わる井上剛志氏に聞いた。
ブレインパッドのL2Mixerは、企業のWebマーケティング担当者向けのツールで、Googleやヤフーなどが運営する広告プラットフォームに配信するリスティング/ディスプレイ広告などを効率的に運用することができる。
一般的にこれらの広告プラットフォームを利用するに当たっては、ユーザー企業側で、広告とひも付ける検索キーワードに対して「入札」をし、他の入札希望者や成果によって変動する広告料を予算の範囲内で管理していく。目指す広告効果に見合うキーワードの設定や予算に応じた入札額の最適化をGoogleやヤフーなど複数の広告プラットフォームを横断して行うには、多くの手間とノウハウが必要とされる。
L2Mixerではキーワード単位での予測モデルや最適化エンジンを活用することで、こうした広告運用を自動的に最適化する。Googleやヤフーなど複数の広告プラットフォームを横断して最適化が可能な点、予測精度が高い点、柔軟な運用が可能といった点が評価され、2010年にサービスを開始して以来、アカウント数で約2万件、運用キーワード数で約6億件を抱える大規模なサービスへと成長してきた。
そんなL2Mixerを支えるシステム基盤は、サービス開始以来オンプレミスで運用されてきたが、機能やサービスの拡大によってシステムリソースが年々逼迫(ひっぱく)してきており、限界が近づいていた。「スピーディーなサービス展開を実現するに当たり、オンプレミスからクラウドへの移行は必須でした」と、井上氏はクラウド移行の背景を説明する。
「マーケティング向けのサービスを提供していく中で、オンプレミスでの運用がサービスモデルに合わなくなってきていたというのも、クラウド化を検討した大きな理由です」と話すのは下田氏だ。新たなサービスのためにオンプレミスで大規模な初期投資をしたい場合、実際にそれが回収できるだけの新規ユーザーを獲得できるかどうかは、常に議論になっていたという。またサービスの性質上、ユーザーから過去のキーワードに関するデータを大量に保存しておきたいというニーズがあったという。その要望に応えるためのオンプレミスのリソースが足りなくなってきているという問題もあり、結果「新しいことに挑戦するのが難しくなっていました」と下田氏は明かす。
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