脱Microsoftを図るヨーロッパの理想と厳しい現実それでも脱MSが広がらない理由は?

Microsoftによるロックインから脱却すべく、各国でOSSへの移行プロジェクトが進められている。成功したプロジェクトがある一方で、Microsoftによる巻き返しや政争へ発展して前途が不透明なプロジェクトもある。

2017年07月28日 08時00分 公開
[Investigate EuropeComputer Weekly]
Computer Weekly

 Microsoftの支配に対する挑戦は、政府機関において「Microsoft Office」をオープンソースソフトウェア(OSS)の代替品に切り替えることから始まった。

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 今回は英国政府機関の理想と現実、それ以外の欧州各国機関の動きを紹介する。

英国政府のオープンスタンダード政策

 英国は、公的機関の情報を参照したいと希望する者は誰でもそれが可能であり、その際に特定のプロプライエタリなソフトウェアへの投資を前提条件としないことを保証するため、大きな一歩を踏み出した。従って、英国の公共機関が公開する情報は全て、オープンフォーマットにすることが義務付けられている。

 公共機関向け市場での競争に当たっては、オープンスタンダードの使用が奨励され、非常に期待されていると、英国政府機関のGovernment Digital Service(GDS)でオープンスタンダード推進のリーダー役を務めるテレンス・イーデン氏は語る。「行政機関との間で情報をやりとりする際に、特定のプロバイダーからソフトウェアを入手しなければならないというのは、市民や中小企業にとっては受け入れ難い事態だ」と同氏は主張する。

 英国国立公文書館(TNA)は同氏のこの主張を全面的に支持している。ロンドン郊外のキューという美しい町にあるTNAには、過去1000年分の公的な記録が収蔵されている。その中には、エドワード懺悔(ざんげ)王(訳注)が統治していた時代、課税額を決定するために実施された1086年の「大調査」(検地)の写本である「ドゥームズデイ・ブック」(Domesday Book)も含まれている。

訳注:Edward the Confessor(生没年:1004年ごろ~1066年)。イングランド王(在位:1042年~1066年)。

 同機関でデジタルディレクターを務めるジョン・シェリダン氏は、データレコードを一通り確認してから各ファイル(テキスト、映像、音声、画像など)に合った形式で保存するという、気の進まないタスクを引き受けている。原本は現状のまま保存し、国のレガシー(遺産)に加えるという。OSSとオープンフォーマットの導入によってシェリダン氏が担当している作業の負担は軽くなり、従って費用も以前ほどはかからなくなったと話す。

 同氏は現在、英国政府でオープンスタンダードを推進する組織の幹部を務めている。OSSとオープンフォーマットで記録を保存する組織では、リスクとリソースの低減の程度に大きな差が出ているとシェリダン氏は明かす。

 「われわれのような組織が、オープンソースコミュニティーの貢献からどれほど恩恵を受けているか、コミュニティーには理解している人がこれまでは多くなかった」と同氏は語る。「コミュニティーは、自分たちの働きがわれわれのような機関の成果に大きく貢献していることを理解してほしい」

 しかしその一方で、TNAが支払った「Windows」とMicrosoft Officeのライセンス料は20%以上増加している。これは、TNAが元の文書の完全性を保護する方針を維持しているためだ。つまり文書の原本の大半は、Microsoftのフォーマットで保存されていることになる。WindowsやOfficeがバージョンアップするたびに、重要なファイルやデータにアクセスできなくなる事態を回避するため、TNAは必要なソフトウェアアップグレードに投資する。

信頼と反トラスト

 英国でOSSの普及が進んでいるのとは対照的に、英国以外の欧州各国の公共機関はプロプライエタリなソフトウェアに大きく依存している。

 以前はMicrosoft Officeの代わりにOSSを導入することが議論されていたが、最近は政府のデータセンターやクラウドでのオープンソースのOSとソフトウェアの利用に論点が移ってしまった。

続きはComputer Weekly日本語版 7月19日号にて

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