Microsoftによるロックインから脱却すべく、各国でOSSへの移行プロジェクトが進められている。成功したプロジェクトがある一方で、Microsoftによる巻き返しや政争へ発展して前途が不透明なプロジェクトもある。
Microsoftの支配に対する挑戦は、政府機関において「Microsoft Office」をオープンソースソフトウェア(OSS)の代替品に切り替えることから始まった。
本記事は、プレミアムコンテンツ「Computer Weekly日本語版 7月19日号」(PDF)掲載記事の抄訳版です。本記事の全文は、同プレミアムコンテンツで読むことができます。
なお、同コンテンツのEPUB版およびKindle(MOBI)版も提供しています。
今回は英国政府機関の理想と現実、それ以外の欧州各国機関の動きを紹介する。
英国は、公的機関の情報を参照したいと希望する者は誰でもそれが可能であり、その際に特定のプロプライエタリなソフトウェアへの投資を前提条件としないことを保証するため、大きな一歩を踏み出した。従って、英国の公共機関が公開する情報は全て、オープンフォーマットにすることが義務付けられている。
公共機関向け市場での競争に当たっては、オープンスタンダードの使用が奨励され、非常に期待されていると、英国政府機関のGovernment Digital Service(GDS)でオープンスタンダード推進のリーダー役を務めるテレンス・イーデン氏は語る。「行政機関との間で情報をやりとりする際に、特定のプロバイダーからソフトウェアを入手しなければならないというのは、市民や中小企業にとっては受け入れ難い事態だ」と同氏は主張する。
英国国立公文書館(TNA)は同氏のこの主張を全面的に支持している。ロンドン郊外のキューという美しい町にあるTNAには、過去1000年分の公的な記録が収蔵されている。その中には、エドワード懺悔(ざんげ)王(訳注)が統治していた時代、課税額を決定するために実施された1086年の「大調査」(検地)の写本である「ドゥームズデイ・ブック」(Domesday Book)も含まれている。
同機関でデジタルディレクターを務めるジョン・シェリダン氏は、データレコードを一通り確認してから各ファイル(テキスト、映像、音声、画像など)に合った形式で保存するという、気の進まないタスクを引き受けている。原本は現状のまま保存し、国のレガシー(遺産)に加えるという。OSSとオープンフォーマットの導入によってシェリダン氏が担当している作業の負担は軽くなり、従って費用も以前ほどはかからなくなったと話す。
同氏は現在、英国政府でオープンスタンダードを推進する組織の幹部を務めている。OSSとオープンフォーマットで記録を保存する組織では、リスクとリソースの低減の程度に大きな差が出ているとシェリダン氏は明かす。
「われわれのような組織が、オープンソースコミュニティーの貢献からどれほど恩恵を受けているか、コミュニティーには理解している人がこれまでは多くなかった」と同氏は語る。「コミュニティーは、自分たちの働きがわれわれのような機関の成果に大きく貢献していることを理解してほしい」
しかしその一方で、TNAが支払った「Windows」とMicrosoft Officeのライセンス料は20%以上増加している。これは、TNAが元の文書の完全性を保護する方針を維持しているためだ。つまり文書の原本の大半は、Microsoftのフォーマットで保存されていることになる。WindowsやOfficeがバージョンアップするたびに、重要なファイルやデータにアクセスできなくなる事態を回避するため、TNAは必要なソフトウェアアップグレードに投資する。
英国でOSSの普及が進んでいるのとは対照的に、英国以外の欧州各国の公共機関はプロプライエタリなソフトウェアに大きく依存している。
以前はMicrosoft Officeの代わりにOSSを導入することが議論されていたが、最近は政府のデータセンターやクラウドでのオープンソースのOSとソフトウェアの利用に論点が移ってしまった。
本記事は抄訳版です。全文は、以下でダウンロード(無料)できます。
■Computer Weekly日本語版 最近のバックナンバー
Computer Weekly日本語版 7月5日号 CIOが果たすべき3つの役割
Computer Weekly日本語版 6月21日号 Microsoft帝国からの脱出
Computer Weekly日本語版 6月7日号 Bluetooth 5仕様の真意とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
攻撃対象領域の拡大に伴い、SOCは高優先度のアラート対応で手いっぱいになり、トリアージにおいても十分な追加検証が行えていない。この現状を打開するには、AI/機械学習を活用し、大量のデータをセキュリティ対策に生かす手法が有効だ。
業務効率を高めて生産性を向上させるために、多くの企業がITシステムの導入を進めている。しかし、自社の業務に合わないITシステムを導入してしまっては、逆に生産性が低下する可能性も高い。この問題をどう解決すればよいのだろうか。
基幹システムをはじめ営業管理や購買・調達など、今日のビジネスにはITが不可欠であり、運用担当の業務改善は企業の強化に直結する。可視化や一元管理などITシステム運用全般の継続的改善を実現するソリューションに注目したい。
生産性向上が重要視される今、エンジニア組織の開発生産性を高めるために、どのような取り組みを進めればよいのか分からないという声も多い。そこで社内報CMSの開発・運用を手掛けるourlyなど、3社の事例からそのヒントを紹介する。
アジャイル開発を推進する上で欠かせないのが、開発プロセスやレビュープロセス、パフォーマンスなどを可視化することだ。セゾンテクノロジーやダイキン工業、朝日新聞といった3社の事例を基に、それらを実現する方法を探る。
なぜクラウドセキュリティは複雑ではなく「包括的でシンプル」にすべきなのか? (2025/6/13)
「見える化」ではもう守れない アタックサーフェス管理の限界と次世代の対策 (2025/6/12)
NECの社内ITが運用の「サイロ化・属人化」から脱却できた“決め手”とは? (2025/6/12)
サーバ仮想化基盤の「ちょうどよい選択肢」と将来を見据えたITインフラの在り方 (2025/6/10)
中小企業が買うのは信用 L2スイッチ&認証技術で2つの企業が組んだ理由 (2025/6/5)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...