「脱クラウド」はなぜ起きる?【前編】
クラウドをやめて“オンプレミスに回帰した方がいい”と判断すべき理由は?
パブリッククラウドではコストや運用管理、コンプライアンスに関する問題を抱える可能性がある。どのような場合でクラウドからオンプレミスにシステムを戻すことが適切な判断となるだろうか。
オンプレミスからパブリッククラウドにシステムを移行して成功したケースは数え切れないほどある。それにもかかわらず、パブリッククラウドへの移行は企業にとって必ずしも希望に満ちあふれたものばかりではない。パブリッククラウドからオンプレミスへのシステム移行を検討している企業、あるいは既に実行に移した企業は少なくない。企業がパブリッククラウドからオンプレミスにシステムを戻す主要な理由として挙げられるのは、以下の5つだ。
- コスト
- システムのパフォーマンス(会員限定)
- セキュリティとコンプライアンス(後編で紹介)
- 可用性の確保(後編で紹介)
- ビジネスニーズの変化(後編で紹介)
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クラウドベンダーがオンプレミスを重視する理由
1.コスト
パブリッククラウドの魅力の一つは、仮想マシン(VM)やストレージといったリソースを従量課金制で調達できるため、時間当たりのコストを抑えられる可能性があることだ。例えば利用したストレージ量、発行したリクエスト数、データ転送量などが課金の対象となる。こうしたリソースをオンプレミスのデータセンターに導入し、自前で運用、保守することと比較すると、パブリッククラウドが驚くほど安価な選択肢に見える場合もあるだろう。
ただしパブリッククラウドで注意すべき点がある。パブリッククラウドはリソースの使用量や時間といったさまざまな単位で料金が発生する幅広い課金体系を採用している。ユーザーはその中から好みに合わせて選択できる。こうした幅広い課金体系のサービスで最終的に発生するコストを予測することは簡単ではない。コンピューティング、ストレージ、データ転送といった中核的な機能以外にも利用するサービスがある場合はさらにコストの予測が難しくなる。
企業が運用するアプリケーションは、データベース、複数のVM、ストレージといった複数のコンポーネントによって構成されていることがほとんどだ。それらを全てパブリッククラウドのサービスで調達する場合には、それぞれに利用料金がかかる。さらに運用管理ツール、ロードバランサー、監視ツール、ネットワーク接続、セキュリティといった付随する機能を利用する必要もあるだろう。
利用しているパブリッククラウドサービスの請求費が驚くほど高額になる場合もある。パブリッククラウドで運用しているシステムの稼働が不規則だったり、予測不能だったりする状況では、こうした事態が発生しやすくなる。パブリッククラウドで長期的にシステムを稼働させる場合、パブリッククラウドで本来得られるはずだったコスト面のメリットがなくなってしまう可能性がある。コストを試算した結果、システムをオンプレミスで運用する方が安上がりになると気付くこともあるだろう。
2.システムのパフォーマンス
パフォーマンスもパブリッククラウドからオンプレミスへの移行を検討する理由の一つになる。パフォーマンス面では、リソース構成や使用量などに加え、ネットワークの帯域幅の圧迫やレイテンシ(遅延)の増大といった問題も発生する可能性がある。仮にパブリッククラウドで稼働させるシステムのパフォーマンス水準が要求よりも低く、サービス品質保証契約(SLA)を満たさない場合、ユーザーは別の選択肢を検討する必要が生じるだろう。
根本的にパブリッククラウドで稼働させられない要件を持つシステムもある。例えば、ネットワークのレイテンシが大きくなると致命的な問題になりかねないシステムの場合は、そもそもパブリッククラウドには向いていない。
パブリッククラウドのインフラが特定のシステムに合わせてカスタムされることはほとんどない。ユーザーはパブリッククラウドベンダーが用意したサービスメニューの中から要件に合ったものを選択し、リソースをプロビジョニング(配備)して展開すればよい。特殊な要件があるシステムをパブリッククラウドで運用するならば、レイテンシなどの要件をパブリッククラウドが満たすかどうかの保証がないことに気を付けなければならない。
リソースの拡張性(スケーラビリティ)についても注意すべき点がある。システム運用に当たってクラウドの拡張性が必要だと当初は想定していたにもかかわらず、実際に運用を開始してみて動的なスケーリングが不要であると判明する場合がある。その際はシステムをオンプレミスに戻すことでコストを抑制できる可能性がある。
後編は、残る3つの理由を解説する。
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「脱クラウド」はなぜ起きる?
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