GCPからAWSへアプリケーションを移行させた後に後悔しないために、あらかじめ検討が必要なポイントが「コスト」だ。GCPとAWSの料金体系の違いを踏まえて、コスト面での注意点を説明する。
IaaS(Infrastructure as a Service)で稼働するアプリケーションを別のベンダーのIaaSに移行させる場合に注意したいことは、移行時や移行後にかかるコストだ。例えば「Google Cloud Platform」(GCP)から「Amazon Web Services」(AWS)にアプリケーションを移行させる場合、両者に同じようなクラウドサービスがあったとしても、料金体系は異なる可能性がある。第3回「『GCP』から『AWS』への移行に失敗しない代替サービスの選び方」に続く本連載の第4回は、GCPからAWSへのアプリケーション移行を検討するときのコスト面での注意点や、移行が妥当かどうかを考えるポイントを説明する。
クラウドサービスは、一般的にはデータの送受信量やユーザー数、クエリ数に基づく料金体系を採用する。アプリケーションのバックエンドにイベント駆動型コード実行サービスを利用しているときは、コストへの影響を考慮する。GCPとAWSは、コードの呼び出し回数や利用期間、ネットワークの使用に対して課金する。
GCPのイベント駆動型コード実行サービス「Cloud Functions」は呼び出し回数が月間200万回を超えると、100万回の呼び出しごとに0.40ドルを課金する。AWSの競合サービス「AWS Lambda」は呼び出し回数が月間100万回を超えると、100万回の呼び出し当たり0.20ドルを課金する。加えてコンピューティングの実行時間とネットワーク使用量にも追加料金がかかる。そのためアプリケーションをCloud FunctionsからAWS Lambdaに移行すると、イベント駆動型コード実行サービスの利用料金が変わる可能性がある。
データのエグレス(出力)料金も見過ごすことはできない。クラウドサービスへのイングレス(入力)料金が無料や安価であっても、エグレスにはより多額の利用料金を課される場合がある。例えばGCPの仮想マシンサービス「Compute Engine」をアイオワ(us-central1)リージョンで使う場合、10TB(テラバイト)以上のデータをGCP外へ移行させる場合、1GB当たり0.08ドル以上かかる。データ量の大きいアプリケーションの移行には、多額のエグレス料金が課される可能性がある。
GCPからAWSにアプリケーションを移行させるに当たり、社内の専門知識やツールが不足している場合は、クラウドサービス間の移行支援サービスの利用を考える。例えば「AWS Professional Services」(AWSプロフェッショナルサービス)はユーザー企業のIT部門を支援し、コスト効率の高いインフラの開発を支援するサービスだ。「AWS Migration Competency Partners」(AWS移行コンピテンシーパートナー)として認定されたパートナー各社のサービスを利用することもできる。
本連載の各回の要素を全て検討した結果、GCPからAWSへのアプリケーション移行が適さないことが判明することがある。GCPに構築したアプリケーションをAWSに移行させるよりも、新しくSaaS(Software as a Service)に移行した方が自社のニーズに適する可能性もある。
IaaS間の移行に適していないアプリケーションもある。移行先のIaaSではアプリケーションを稼働させるために重要なクラウドサービスを利用できなかったり、SLA(サービス品質保証契約)の要件を満たさなかったりするといったことは、よくある理由だ。こうしたアプリケーションは継続して再検討や再評価をした方がよい。GCPでホストしているアプリケーションが古かったり、使用頻度が少なかったりするのであれば、完全に使用するのを止めるのも選択肢だ。
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