「Google Cloud Platform」(GCP)の多様なサービスで構築したアプリケーションを「Amazon Web Services」(AWS)に移行するには、代替となるAWSサービスをどう選べばよいのか。両者の違いを踏まえて説明する。
企業がIaaS(Infrastructure as a Service)で稼働させているアプリケーションは、IaaSベンダーが提供する複数のクラウドサービスを使用して構築されていることがある。他ベンダーのIaaSにアプリケーションを移行させる場合、移行先のIaaSベンダーが提供するクラウドサービスを利用する必要がある。この際に適切なクラウドサービスが存在するかどうかが、移行を成功させる上で重要だ。第2回「GCPからAWSへの“何も変えない移行”『リフト』は現実的か?」に続く本稿は、「Google Cloud Platform」(GCP)から「Amazon Web Services」(AWS)へのアプリケーション移行時に検討が必要なポイントを説明する。
GCPとAWSの各種クラウドサービスの中には、よく似たものがある。ただしこれらのクラウドサービスが1対1で互換性があるわけではない。移行先のベンダーによっては、ソースコードをほぼ書き変えずにアプリケーションを移行させる「リフト」が難しく、アプリケーションの設計を見直す必要がある。AWSへの移行を機に、GCPにはない種類のクラウドサービスを利用することも可能だ。アプリケーションのリファクタリング(作り直し)も選択肢となる。
アプリケーション移行を進める前に、GCPとAWSの違いを踏まえ、移行先で利用するクラウドサービスを選ぶ必要がある。その際には以下の点を考慮するとよい。
仮想ネットワークやロードバランサーなどのネットワークサービスを使用しているアプリケーションの場合、AWSでも同様のネットワーク構成ができるかどうか検討しなければならない。AWSの直接接続サービス「AWS Direct Connect」など、AWS独自のネットワークサービスの利用を新たに検討することもできる。
GCPとAWSは、両社とも仮想マシン(VM)サービスにおいて、スペックが異なる幾つかのタイプのインスタンス(仮想サーバ)を提供する。AWSのインスタンスを選択するときは、アプリケーションに最低限必要な仮想CPUとメモリを備えるタイプを選択することが必要だ。
移行先でアプリケーションの運用を開始する前に、データベースを複製、同期しておく必要がある。データベースの移行は移行作業の初期段階で完了させることが一般的だ。例えばGCPのリレーショナルデータベースサービス「Cloud SQL」で構築したデータベースは、AWSのリレーショナルデータベースサービス「Amazon Relational Database Service」(Amazon RDS)に移行できる。
データベースサービス間の移行が難しい場合は、データベースの構築に既存サービスを利用せず、AWSのVMサービス「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)に新たなシステムとして実装する選択肢もある。
アプリケーションの正常性とパフォーマンスを追跡するため、移行先の監視ツールやログ管理ツールに慣れておく必要がある。AWSの監視サービスには「AWS CloudTrail」や「Amazon CloudWatch」などがある。
多数のクラウドサービスに依存した複雑なアプリケーションは、GCPとAWS間の移行が困難になる恐れがある。例えばメッセージキューサービスにGCPの「Pub/Sub」を使っていた場合、「Amazon MQ」といったAWSのメッセージキューサービスに移行する必要がある。DNS(ドメインネームシステム)サービスはGCPの「Cloud DNS」からAWSの「Amazon Route 53」に、ストレージサービスはGCPの「Persistent Disk」からAWSの「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)に移行できる。
GCPとAWSは、世界中の複数の地域にあるリージョン(地域データセンター群)で運用されている。選択するリージョンによって利用可能なクラウドサービスが異なる可能性がある。AWSにアプリケーションを移行させるときは、利用するリージョンがエンドユーザーの近くにあることと、アプリケーションを構築するために必要なインフラとクラウドサービスがそのリージョンで提供されていることを確認する。GCPとAWSのリージョンがそれぞれ近い地域にあっても、そのリージョンで利用できるインフラとクラウドサービスは概して異なることを考慮した方がよい。
次回は、IaaS移行時のコストを説明する。
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