仮想化時代のネットワークセキュリティ【前編】
仮想ネットワークの安全性を物理環境と同等に高める方法
仮想環境におけるネットワークの安全性確保は一筋縄にはいかない。物理環境向けのセキュリティ対策が通用しないケースがあるからだ。
仮想化技術は、コスト削減やアジリティ、スケーラビリティといったさまざまなメリットをデータセンターにもたらす。一方で、さまざまなセキュリティの問題もはらんでいることを忘れてはならない。
仮想環境におけるネットワークの脅威からシステムを保護するには、今まで通りのセキュリティ対策では不十分だと、ユーザー企業のIT部門は気付き始めている。ベンダーはこうした新たな需要に対して当然ながら準備を進めている。
「アプリケーションの種類にかかわらず、仮想環境に置くアプリケーションのデータについては、物理環境でアプリケーションを運用する場合と全く同じセキュリティレベルを確保しなければならない」と、米Forrester Researchの副社長兼主席アナリストであるチェンシー・ワン氏は強調する。「ファイアウォールに適用するルールやネットワークのセグメンテーション、ウイルス対策、データレベルの管理など、どのようなアプリケーションセキュリティ対策を施している場合でも、仮想環境でそれらの対策を再現しなければならない」(ワン氏)
注意が必要なのは、物理環境向けのネットワークセキュリティ対策は、そのままでは仮想環境に適用できないということだ。
例えば物理環境では、管理者はファイアウォールでサーバのセグメントを簡単に分けることができる。あるWebサーバはファイアウォールの外部に公開し、もう一方のサーバはファイアウォール内に配置するといったことだ。
だが仮想環境の場合、この双方のサーバの機能を持つ仮想マシンが別々のハードウェアで実行されるとは限らない。仮想マシンのセグメントを分割する仕組みが不可欠となる。「VMware製品は例外として、現在の仮想化ソフトウェアの多くは十分な管理機能を備えない。セグメントの分割には、サードパーティーの管理製品の併用か手作業が必要になる」とワン氏は指摘する。
ネットワークセキュリティベンダーのアプローチが少しずつ異なっていることも、事態をさらに複雑にしている。仮想環境向けネットワークセキュリティ製品は物理サーバに導入するソフトウェアとして提供される製品もあれば、アプライアンスとして提供される製品もある。「製品形態の違いによって、運用負荷も違ってくる」(ワン氏)
仮想環境向けネットワークセキュリティ製品を販売するベンダーはまだ多くない。大手ベンダーを挙げると、米Cisco Systems、米Hewlett-Packard(HP)、米Juniper Networks、米VMwareなどだ。小規模なベンダーには米HyTrust、米Vyatta、米Catbird Networksなどがある。
以下、各ベンダーの製品の特徴を詳しく見ていこう。
Cisco Virtual Security Gateway、同ASA 1000Vクラウドファイアウォール
Ciscoの主な仮想環境向けセキュリティ製品は、「Cisco Virtual Security Gateway(VSG)」と「同ASA 1000Vクラウドファイアウォール」という2つのファイアウォール製品だ。
VSGは、ネットワークのセキュリティ境界(ゾーン)ごとにトラフィックを制御するゾーンベース制御機能を備え、仮想マシン間のアクセスを制限する。ASA 1000Vクラウドファイアウォールは、Ciscoの物理環境向けファイアウォール「Cisco Adaptive Security Appliance(ASA)」の仮想環境版製品だ。VSGはASA 1000Vクラウドファイアウォールと連係して動作する。
どちらの製品も、VMware環境向けの仮想スイッチ「Cisco Nexus 1000V」か「Cisco Nexus 1010 Virtual Services Appliance」の導入が前提だ。CiscoはNexus 1000Vを利用可能なハイパーバイザーの種類を増やす予定であり、VMwareに加えて間もなく米Microsoftの「Hyper-V」でも利用可能になる。複数のハイパーバイザーを使ってデータセンターを運用しているIT部門にとって大きなメリットになるだろう。
HP TippingPoint Secure Virtualization Framework
HPは仮想環境向けネットワークセキュリティ製品として、「HP TippingPoint Secure Virtualization Framework(SVF)」と呼ぶ製品群を提供している。SVFは、侵入防止システム(IPS)の「TippingPoint N Series IPS」と仮想コントローラーの「Virtual Controller(vController)」、仮想ファイアウォールの「Virtual Firewall(vFW)」、管理ツールの「Virtual Management Center(vMC)」で構成する。
vControllerはトラフィック情報をTippingPoint N Series IPSに送信する。TippingPoint N Series IPSは、vMCで管理するセキュリティポリシーに基づいてトラフィックを検査し、必要に応じて遮断する。vFWは仮想マシン間やクラスタ間、アプリケーショングループ間でセグメントを分割する機能を持つ。
後編はJuniper NetworksやVMware、専業ベンダーの製品について解説する。
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