PaaSはIaaSよりもっと大変
こんなに大変、クラウド間の移行に苦労する企業
パブリッククラウドに配備されたアプリケーションは、容易に別のプロバイダーに移行することはできない。専門家によれば、全工程が完全に自動化されたクラウド間の移行を実現する特効薬はないという。
クラウド移行ツールを使うことで、プライベートクラウドからパブリッククラウドへのワークロードの移行の手間はいくらか軽減できる。だが、パブリッククラウドにアプリケーションが一度配備されたら覚悟が必要だ。別のプロバイダーに切り替えるには、手作業による処理が必要になる。
専門家によると、必要なIPアドレスとドメインネームシステム(DNS)の変更やアプリケーションのテストなど、全工程が完全に自動化されたクラウド間の移行を実現する特効薬はないという。
米The Virtualization Practiceのエドワード・ハレツキーCEOによると、例えば、ネットワークアドレス変換(NAT)から各マシンを参照するようにDNSの変更が必要になるという。移行先のデータセンターでアプリケーションの動作を検証するテストは、移行プロセスそのものよりも時間がかかることが多い。
「現在ほとんどのテストは、かなりの割合を手動でこなしている」とハレツキー氏は話す。
移行の中心作業である、仮想マシンとその構成、OS、アプリケーション、ストレージをクラウドプロバイダー間で移行する場合も、手作業が必要になることがあるという。
Amazon Web Services(AWS)の障害とパフォーマンスの問題が何度か発生して以降、モバイルアプリケーション開発メーカーの米Best Fit Mobileでは、手工芸用品チェーンの米Michaels Arts&Crafts Stores向けに開発したアプリケーションを米Rackspaceのパブリッククラウドへ移行することになった。このプロジェクトを担当したのがレイ・ウィリアムソンCTOだ。
「およそ1週間半をかけて、全てのマシンとデータを準備した。(移行前と移行後の)両方のクラウドを同期して、万全の準備をした」とウィリアムソン氏は話す。
これには、Rackspaceの協力の下で、約800Gバイトのインポートデータを使って、適切な台数のマシンを稼働させるテストが必要になった。
両方のクラウド間の同期は現在も維持し、Rackspaceで障害が発生した場合に備えてAWSにバックアップが残るようにしている。これには、1週間かけて手作業でSQLファイルをAWSとRackspace間で移行する必要がある。
「移行中にAWSまたはRackspaceを中継クラウドとして使うことになるケースが多い。新しい環境のセットアップ中に、クラウドストレージに膨大なデータを溜め込んでおけば簡単だからだ」と話すのは、クラウド関連のコンサルティングを提供し、これまで顧客のために数々のクラウド間の移行を手掛けてきた米Beyond Secureのジョン・ウィリックCEOだ。
移行が楽になるようにプロバイダー同士がダークファイバー(未使用の光ファイバー回線)で接続されるのが理想だが、競合プロバイダー間ではそれは難しいとウィリック氏は見ている。
ウィリック氏は、「弊社の大企業の顧客の多くは、特定の1ベンダーに依存する必要がない分散型インフラを構築している。しかし、中堅・中小企業の顧客には、それができない」と話す。
クラウド間のPaaSの移行はさらに厄介に
IaaS(Infrastructure as a Service)ベンダー間の移行でも手作業が必要になる可能性があるが、PaaS(Platform as a Service)ベンダーからデータを取り出すことに比べたら簡単だと、IT専門家たちは言う(関連記事:主要PaaSの機能と、ユーザーの開発トレンドを解説)。
IaaSの移行の大半はデータストレージリポジトリの間での転送だが、PaaSではアプリケーションが各プラットフォームに深く統合されている。
「PaaSベンダーが同じ言語セットをサポートしていてもその方法は異なる。そのため、同じ言語をサポートしているベンダー間での移行であっても、アプリケーションを多少書き換える必要がある」とクラウド関連コンサルティング企業、米Blue Mountain Labsの創設者兼CTOのデイビット・リンティカム氏は話す。
米HerokuからRackspaceへの移行と、Rackspaceから米CoSentryへの移行の経験があるIT専門家は、HerokuのPaaSからデータを取り出すには非常に苦労したとコメントしている。
マーケティングオートメーションソフトウェアを開発している米Layered Innovationsのマネージングディレクター、ジョン・グレーンジ氏は次のように話す。「スケーリングや新しいインスタンスの作成、キャッシングなどの処理を行う場合は、特定のAPIセットを使う。各クラウドが提供するサービスがアプリケーションレベルで密に統合されている場合、クラウド間でのアプリケーションの移行は一筋縄ではいかなくなる」
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