拡張機能が移行の障害に
「S/4HANA」移行を考えるSAPユーザーが知るべき3つの“勘所”(1/2 ページ)
「S/4HANA」によって、SAPの主力ビジネススイートは刷新された。果たしてこの刷新にはどのような意図があったのだろうか。また、S/4HANAを導入する場合、どのような注意が必要なのだろうか。
2016年初頭、SAPは「SAP Business Suite 4 SAP HANA」(S/4HANA)をリリースした。これにより、同社の主力ビジネススイート製品に対する今後の方針が明らかになる。ビジネススイートは、ERPやCRM、人事管理(HCM)、倉庫管理、サプライヤー管理などを包含する同社の主力製品だ。今後の方針が、S/4HANAはユーザーにとってどのような意味があるのだろう。
この疑問には、現在SAPを利用していて、これを中心に自社のビジネスアプリケーション戦略を企画している企業ユーザーの視点から向き合うことが重要だ。この観点から考えると、S/4HANAはSAPの主力ビジネススイートの刷新と見直しに対する取り組みを発表したものといえる。この刷新は、3つの主要分野に重点が置かれ、その1つ1つがユーザーにとって重要になる。
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「S」は単純化の約束
単純化がS/4HANAの合言葉だ。単純化は一度に実現できるものではない。SAPはビジネススイートのコンポーネントを刷新する際、同製品の技術アーキテクチャとユーザーエクスペリエンスの両面で単純化を計っている。こうした刷新は、既に市場に投入されているのが会計サービス「SAP Simple Finance」が最初だ。これに単純化の例を見ることができる。
S/4HANAは、アプリケーションのデータベース構造が単純化され、従来のビジネススイートよりもテーブル数が削減されている。また、アプリケーションロジックをSAPの独自のプログラミング実行環境「ABAPアプリケーションサーバ」からデータベースやクライアントに移している。アプリケーションロジックの移動は本質的な単純化ではない。だが、SAPはこれまで全てのロジックをABAPアプリケーションサーバに実装し、データベースやクライアントをデータストアや画面として扱う傾向があった。アプリケーションロジックをデータベースやクライアントに移動すれば、各層の長所を生かして単純化を計れる可能性が高まる。
ユーザーインタフェースの単純化は、SAP製品の多種多様なユーザーインタフェースの統一やユーザーにとって使いやすいインタフェースの構築につながる。これにより、効率が向上し、インタフェースの見た目がよくなる。これはSAPがいつも苦労している点だ。加えて、適切なデフォルト値の提供や、必要なクリック数の削減など、細かい点にも配慮されている。
第4世代スイートは変更の障害を意味する
S/4HANAは、ビジネススイートの単純化だけでなく、次世代アプリケーションに刷新されることも表している。つまり、メジャーアップグレードだ。そのため、現行のSAPユーザーはこのアップグレードに伴い、多くのプロジェクト作業や新しいライセンスが必要になる。
例えば、S/4HANAへのアップグレードを考えるERPアプリケーション「SAP ERP」の既存ユーザーが、アップグレード前にSAP ERPに大幅な変更を加えていた場合、こうした変更を元に戻すことを余儀なくされる場面が多くなる。S/4HANAはクラウドを重視している。S/4HANAには、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスの3つの提供方法がある。S/4HANAは、アップグレード前に加えていた変更により、次の2つの問題が生じる。
- 技術面とユーザーエクスペリエンスの単純化により、以前に変更した多くの機能が動かなくなり、大幅なプロセスの見直しが求められる。実際には、非標準の構成を選択しているだけでも、アプリケーションが機能しなくなる可能性がある。
- パブリッククラウドで提供されるS/4HANAは、以前変更していた内容が反映されない可能性がある。
言い換えれば、自社のビジネススイートに手を加えているユーザーは、S/4HANAへのアップグレード時に大きな障害に直面することになる。
では、S/4HANAへの拡張または変更にはどのような手だてがあるだろう。こうした拡張に向けてPaaS「SAP HANA Cloud Platform」(HCP)を用意している。SAPのユーザーやパートナーはHCPに小さなアプリケーションを作成し、これを拡張機能として、S/4HANAの事前定義済み拡張ポイントに登録できる。この大まかな仕組みは、SAPの人材管理サービス「SuccessFactors」製品向けの拡張プラットフォームの説明に記載されている。
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