英国のSAPユーザーグループ代表に、SAPに対する本音を聞いた。SAPのライセンス戦略を高く評価する一方でユーザーの立場から冷静に動向を観察している。
フィリップ・アダムス氏は、英国およびアイルランドの独SAP製品ユーザーグループの代表で、アイルランドの建設会社Mercury EngineeringグループのIT部門を統括している。アダムス氏によると、最近のSAPには、ユーザーにHANAへの移行を促す圧力を高める兆候が見られるという。本誌Computer Weeklyは、英バーミンガムで開催された同ユーザーグループの2014年次大会の場で同氏に話を聞いた。このとき同氏は、これまでSAPが行ってきた、英国やアイルランドのユーザーに対する働きかけの評価を語ってくれた。以下はそのインタビューの抜粋である。
評価したい最大のポイントは、2014年6月の「Sapphire」(カンファレンス)で、既存のSAPユーザーに「SAP Fiori」(SAPのアプリケーション群)を無償で提供すると発表したことだ。この施策は、われわれSAPユーザーの多くが感じていた大きな懸念を解消するものだった。次に示す2つの理由から、われわれはこの発表に大変満足している。
まず今回のことで、ユーザーグループもサプライヤーに対して大きな影響力を持つことが明らかになった。特に(世界各地のユーザーグループのリーダー16人で構成する)SUGENネットワークは大きく貢献した。これは、ユーザーグループの力を世間に示すいい例になった。しかも各グループの本拠地だけでなく、グローバルでも影響力があることが分かった。
またライセンス体系の観点からも、われわれ(ユーザーグループとSAPは)正しい方向に向かっていると感じている。イノベーションを実現するためのハードルを下げる方向だ。
SAPはライセンシングプロセスの簡素化に継続して取り組んできた。一例を挙げると、価格体系から「limited professional」(限定プロフェッショナル)カテゴリを廃止した。これが混乱の原因となっていたからだ。ジョー・ラローサ氏(SAP副社長、グローバル価格戦略担当)がわれわれに説明したところによると、同社はユーザーグループの協力を得て、今後も引き続きライセンス体系の簡素化を進めるそうだ。
われわれユーザーグループ加盟企業は、SAPの最新テクノロジーを利用したいのはやまやまだが、複雑さと移行のしやすさの面で懸案事項がある。(新しいテクノロジーの)実装プロセスに課題があることはSAPも認識している。「run simple」のスローガンに沿って、同社はその反省を、Simple Financeなどを含む「S-innovation」シリーズの製品ラインに反映させている。
S-innovationシリーズは、ジム・スナーべ氏(SAPの前共同CEO)が2013年のカンファレンスで言ったこと、すなわち同氏がSAPを去るときに社員に対して残していったメッセージ「ユーザーのITをシンプルにすることでユーザーの心をつかもう」が結実したものだ。しかし、企業が経営効率を高めてストレージなどのITインフラへの投資を抑えるとき、削るのは新しいテクノロジーやイノベーションに当てようとしていた費用となることが多い。
ユーザーを早くHANAへと移行させるための方便にすぎないと、(run simpleに対して)慎重な見方をする企業もある。このスローガンに共感するには、われわれのビジネス面から見た根拠がほしい。例えばデータストレージの利用量を減らせるなら、それは純粋に利益を生むことになる。大規模な社内システムを運用する立場としては、オンプレミスであれクラウドであれ、(構築した自社)システムの効率を最大限に引き出して運用していることを確かめたくなるものだ。
個人的な推測だが、クラウドはあらゆる人に奇跡を起こすソリューションになるとは限らないと、SAPは判断したのではないか。1年前に比べると、クラウドを強調するトーンが弱まっていると感じる。ただしHANAについては間違いなく、SAPは(ユーザーに)すぐにでも移行してほしいのだと思う。
例えばFioriは、HANA以外の環境ではそこそこの効果しか得られない。Fioriを最大限に活用するにはHANA環境が必要だ。Simple FinanceなどのS-innovationスイートでも同様のことがいえる。
いや、全くない。
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