AWS圧勝とは限らない、クラウドシェア争いの現場で起きている“異次元成長”川田大輔のクラウド解体新書【第1回:サマリー版】(1/2 ページ)

「クラウドといえばAWS」と言う人がいるほど、AWSは実績・知名度ともに現在トップのクラウドプレイヤーだ。しかし、AWSよりも高い成長速度を見せるクラウドがある。それは――。

2016年06月28日 10時00分 公開
[川田大輔]

 本稿は、連載「川田大輔のクラウド解体新書」第1回のサマリーを掲載したものです。完全版は以下からダウンロードしてご覧ください(会員限定/無料)。

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 クウドコンピューティングを語るには、成長と変容を続けるインターネットの現在を見わたすことが不可欠だ。飽和する既存ビジネスの外側で急速に育つ新サービスが、真綿で首を絞めるように既存ビジネスの生存域を狭めていく様を直視する必要がある。

 クラウドがインターネットの成長を乗っ取り、クラウドとともに成長したさまざまなサービスがレイヤーを越えて既存ビジネスを脅かしつつある。第1回はインターネットの成長がもたらしたさまざまな越境問題について具体的に掘り下げる。


クラウドファーストからクラウドノーマルへ

クラウド市場の成長

 IDCの調査(※)によると世界のクラウド向けIT投資はパブリックとプライベートを合わせ、2015年時点で総IT投資の32.7%を占めるに至ったという。IDCの予測を信じるならば、2020年前後には、世界のIT設備投資において、総IT投資に占める従来型設備投資とクラウド向け設備投資のシェアは逆転する。ITサービスの基底となる設備層では、クラウドを標準として考える“クラウドノーマル”が一足早く常態になりそうだ。

 ちなみにIDCによるとIT設備投資全体はCAGR(年平均成長率)4.4%と、世界銀行が予測する世界GDP(国内総生産)のCAGR2.9%を上回っている。だが、従来型IT投資はシェアだけでなく実投資額も年平均1.7%のペースで減少している。1.7%の変化など誤差のように感じられるかもしれないが、これは40年後には投資額が半減するペースだ。継続的に小幅に縮小する市場変化に、さしたる影響はないと高をくくっていると、気が付けば「ゆでガエル」化することになる。もちろん、40年かけてゆっくりと投資額が減っていくなどといった楽観的なシナリオは、字義通り楽観的に過ぎる。課題先送りの習慣が染みついている組織にはつらい時代だ。

図1 IT設備投資の推移(出典:IDC発表値を基にatoll Project作図)

ビッグ4への集中の始まり

 2015年第一四半期から開示されるようになったAmazon Web Services(AWS)の売り上げと利益の推移を見ても明らかなように、活発に設備投資をしているクラウドは、投資額の成長率以上の売上成長率によって潤っているようだ。調査会社Synergy Research Groupの調査(同社Webページ「Big Four Still Dominate in Q1 as Cloud Market Growth Exceeds 50%」を基に筆者が試算したところ、世界のIaaS(Infrastructure as a Service)市場は年率61.4%のペースで成長している。これは四半期ごとに売り上げが約10%増加するという大変な速度だ。事業者別に見ていくとAWSのマーケットシェアが31%と頭1つ抜けており、以下Microsoft、IBM、Googleと日本でもおなじみの各社がトップグループを形成している。

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