ITインフラを変える新潮流【後編】
ハイパーコンバージドインフラに賭けるべきか? その答えは……(1/2 ページ)
ハイパーコンバージドインフラの導入が増えている現状で、「導入しない」とする場合、代わりになる方法の妥当性を検討することになる。構成要素技術の将来性と併せて考察する。
現在、業務向けITシステムでハイパーコンバージドインフラ(HCI)の導入が増加している。この記事では前編後編に分けて、この新しい技術に業務向けITシステムを託すべきなのか、懸念すべき問題はないのかを考察していく。
前編では、HCIを実現する要素技術として、ストレージ接続規格、仮想ストレージソフトウェア、超高速ネットワーク規格についてその概要を確認し、その上で、HCIの導入メリットを紹介した。
後編ではHCIそのものについて、その概念の復習から将来期待できる進化の姿について考察する
サーバ&ストレージ ナビ
ハイパーコンバージドインフラの“向き不向き”を正しく理解する
HCIの導入で認識しなければならない問題が幾つかある。前編でネットワークについて説明したが、コストの節約についてはまだ言及していない。恐らくDRAMの拡張としてNVDIMMを使用するデータキャッシュが、近い将来重要になるだろう。
導入から時間が経てばHCIクラスタを拡張する必要も出てくるだろう。現在、サーバとストレージの両方が過去数十年間で最も早いペースで進化している。そのため、どのタイミングでアップグレードをしても、メモリやドライブなどが大容量かつ高速で、既存のアプライアンスと確実に処理能力が異なるはずだ。クラスタで動作するソフトウェアは、これらの拡張に伴って発生するリソースの違いに適宜対処しなければならない。
核となるクラスタソフトウェアはベンダーに依存しない。そのため、必要なのは実行する商用オフザシェルフ(COTS)ハードウェアだけになる。しかし、HCIアプライアンス市場は、DellやHewlett Packard Enterpriseなどの主要なサプライヤーが独占しているため、これらのベンダーから新しいアプライアンスが市場に登場し続けると長期間にわたるベンダーロックインが生じる可能性がある。ベンダーロックインを回避するには、現在標準的なクラウドのように、複数のサプライヤーの製品をプールできるかどうかをベンダーに確認するといいだろう。
HCIが適さない利用場面もある。GPUを搭載した製品は、いまだにHCIの非承認構成で、ビッグデータとHPC(High Performance Computing)のニーズに影響を及ぼしている。また、この記事で説明したHCI構成は、多くのリモートオフィスにとって過剰で、ストレージプールがもたらす複雑さは不要かもしれない。
しかし、HCIクラスタの一部をVDI(仮想デスクトップインフラ)に使用するのは理にかなっている。それは、ハードウェアの購入を一元化し、共通のアーキテクチャというメリットを享受しながら、十分な規模で従来のVDIセットアップに必要なものとほとんど同じリソースを適用できるからだ。
セカンダリーストレージ
HCIには、古いデータをどうするかという問題がある。古いデータはセカンダリーストレージに移行するのが一般的だ。アプライアンスにまとめてストレージデバイスを追加する。現状ではHDDが妥当だろう。圧縮と重複排除によってHDDの性能を大幅に高めることもできる。例えば、10TBのHDDを1組使用して、100TBの圧縮されたセカンダリーストレージを各ノードに追加できる。また、ネットワークに接続したセカンダリーストレージシステム(現在では、オブジェクトストレージが多い)にもデータを移動可能だ。
2つの選択肢の間にパフォーマンスの面で差はない。だが、もっと簡単に、HCIアプライアンスの空きスロットにドライブを幾つか追加すれば大幅なコスト削減につながるだろう。
HCIの代替
現代のIT戦略では、HCIの現実的な代替アプローチは2つしかない。1つは、ストレージをパブリッククラウドに全て移行することだ。例えばAmazon Web Servicesの「Amazon Virtual Private Cloud」(以下、Amazon VPC)などを使用して、セキュリティとデータの整合性の面でデータセンターに相当し、使い勝手では専用のプライベートクラウドのようなデータ保存領域を入手できる。ほとんどのIT部門はまだクラウドに完全移行する準備が整っていないが、HCIをベースにした社内の施設ならば総所有コスト(TCO)が低くなる可能性がある。
もう1つは、ネットワークストレージを使用して従来のサーバクラスタを構築するアプローチだ。クラウドとして使用するため、データの書き込み読み出し処理能力を向上するためにオールフラッシュアレイを使用した場合でも、ネットワークストレージ特有の帯域問題が生じる。そのため、ローカルのNVMeドライブと比べて待ち時間が常に長い。この問題を解決するため、オールフラッシュアレイベンダーは、自社のサーバに「NVMe over Fabrics」(以下、NVMeoF)インタフェースを提供している。しかし、NVMeoFを採用しても、その速度はローカルドライブに及ばない。
さらに、ネットワークストレージを利用するアプローチでは、システムを構成するパーツベンダーの管理が複雑になり、一般的にHCIのTCOは増加する。セカンダリーストレージにネットワークストレージを用いる場合は、さらにコストが高くなる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
大手銀行もPPAP廃止へ いま金融企業が知っておきたいPPAPの問題点と代替手段 -
市場調査・トレンド
なぜ海外事業は失敗するのか? 元味の素常務が語る、ASEAN事業成功の原理原則 -
製品資料
AIを使った情報収集では不十分? 新規事業開発を計画通りに進めるためのコツ -
製品資料
事前準備や戦略設計はどう進めるべき? 識者に学ぶ海外事業を成功に導く方法 -
製品資料
大企業の新規事業はなぜ停滞するのか? リコー・森久氏が語る突破のヒント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
2
なぜ人はいるのにDXが進まない? ライオンも直面した“老害”レガシーシステム
-
3
GitHubが指摘 AIが書いた「おそらく動くコード」が招くシステム崩壊
-
4
IT業界で相次ぐ人員削減の“隠された理由”
-
5
なぜOpenAIやAnthropicのAIは「脱走」したのか 情シスが迫られるエージェント統制
-
6
IT人材の42%が転職予備軍 辞めさせない組織の4つの共通
-
7
プロンプト頼みの開発は限界 「仕様」を資産にする「スペック駆動開発」
-
8
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
9
「夜間バッチ遅延」「保守の属人化」の恐怖 “全面刷新しない”ERP移行の教訓
-
10
【専門家に聞く】シャドーAIや過剰共有のリスクを防ぎ、安全に生成AIを活用するポイントとは?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
属人化や仕様バグはなぜ起きる? AI時代に必須のドキュメント文化の作り方
-
2
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
5分で分かる「AI駆動開発エージェント」 要件定義から設計・実装・テストまで
-
5
中小企業必見、Microsoft 365でゼロトラストセキュリティを実現する方法
-
6
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
7
コスト分析で見る「デバイス復旧」の代償 損失額から導きだされた投資戦略とは
-
8
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
オープンウェイトLLMの推論最適化事例:ローカル環境で応答速度を約15分の1へ
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー