2013年12月05日 15時00分 公開
特集/連載

Microsoft反撃の鍵は「モバイルでもWindows体験」買収したNokia、Surfaceを積極活用へ

AppleとGoogleの2大勢力が席巻するモバイル市場において、Microsoftは後れを取っている。Windowsという強大なエコシステムを持つ同社は、果たしてどのような巻き返しを図るのだろうか。

[Diana Hwang,TechTarget]

 エンドユーザーのニーズが高い米Appleと米Googleのモバイルプラットフォームは、市場でも大きなシェアを占めている。もはや、この市場において、米Microsoftが「選ばれるエンタープライズベンダー」となる見込みは薄いのかもしれない。

窮地に追い込まれたMicrosoft、企業へのアプローチに変化

 業界観測筋によると、それでもなお、Microsoftは「ソフトで親切、かつ紳士的な」アプローチで、企業のIT部門にWindowsのモバイルエコシステムを売り込もうとしているという。

 「Microsoftは窮地に追い込まれている」と語るのは米Sepharim GroupでCEO兼チーフアナリストを務めるボブ・イーガン氏。「同社は初期の段階から(モバイル市場で)負けが込んでいた。Microsoftには顧客の声をもっと聞き入れてほしい。より多くの要望を受け入れ、それに応える。ただし、トークは少なくだ」

 Microsoftの考え方が大きく変わったのは、万事がうまく行ったとしても、モバイル競争に勝てないからであると米451 Researchのモバイルリサーチ担当ディレクター、クリス・ハゼルトン氏は話す。

 新たなコンシューマー技術を発表することができず、企業導入の見込みも薄いことを悟ったことで、Microsoftは謙虚になり、企業顧客に対する態度を見直している。

 米Pedcor CompaniesのIT担当副社長であるスミス・イヴァンス氏は、同社のアプローチが従来のやり方から変化したことに注目している。同氏によると、Microsoftは企業に対するアプローチを「軟化」させているという。

 例えば、モバイルOS「Windows Phone」のライフサイクルサポートが18カ月から36カ月に延長された。端末の長期利用を考えるIT管理者の要求に合わせた形だ。Windows Phoneの企業向けパックも2014年前半に提供を開始する予定となっている。

Microsoftの新しいモバイルエンタープライズ戦略

 Microsoftはモバイル市場で苦戦を強いられてきた。PC市場の失速や、タブレット端末「Surface」と「Windows 8」に対する企業の消極的な態度といった問題の他、大規模な組織変更も実施された。

 加えて、Windows 8およびWindows Phone向けのアプリケーション開発は遅々として進まず、CEOのスティーブ・バルマー氏は、同社のモバイル戦略が誤りであったことを認めている。

 だが、状況は徐々に変わっている。Windows 8とSurfaceは、2013年に発売された当初、コンシューマー市場を主軸に置いていた。そのため、企業はほとんど関心を示さなかった。その点、「Windows 8.1」には、セキュリティや管理など、より多くの企業向け機能が備わっている。フィンランドのNokia買収も、Microsoftにとっては、エンタープライズ市場へのアプローチ方法を見直す一助となるだろう。

 同社では、「Surface Pro 2」をノートPCのリプレース、「Surface 2」を企業向けタブレットと位置付け、エンタープライズ市場を狙っている。

 Microsoftは、企業のIT部門を説得することはできるが、モバイルエンタープライズ分野に関していえば、事業部門を動かすことがカギを握る、とハゼルトン氏は指摘する。

 とはいうものの、エンドユーザーが求めるのは、「iOS」や「Android」を搭載した端末であり、Windows 8.1やWindows Phoneではない。コンシューマライゼーションの流れの中で、Microsoftは企業向けモバイル市場に築き上げられたiOS、Androidの牙城を切り崩せずにいる。

 Microsoftは、自社のモバイル技術が企業の競争力を向上し、従業員の業務を効率化することを証明しなければならない。

 「この市場で成功を収めるには、従業員の生産性向上や業務遂行を容易にする目新しいユースケースを提供することだ」と米Gartnerでリサーチ担当ディレクターを務めるクリス・シルバ氏は述べる。同氏によると、Microsoftのモバイル戦略には、こうした取り組みが欠けているという。その一方で、同社内においてハードウェアとソフトウェアの統合が進むことで、改善されていくことを期待している。

行く手に広がる道のり

 Microsoftは当面、AppleやGoogleのやり方に追従していくことになるだろう。つまり、競争力の高いハードウェア、ソフトウェア、サービスを提供し、サードパーティー製アプリケーション向けのサポートを用意する。それにより、企業での導入が進む。

 同社では現在、各種テクノロジーの統合が進められている。これは、包括的なモバイル戦略として、企業にアプローチする際の基礎となるだろう。一部の企業では、Windows 8.1の強化されたセキュリティや管理機能を評価し、試験導入を始めている、と米Forrester Researchの副社長、テッド・シャドラー氏は話す。

 さらに、「Office 365」サブスクリプションサービスは確実に売り上げを伸ばしており、Nokiaの買収が完了すれば、スマートフォン端末市場への参入も可能となる。モバイル技術が必要な企業に対しては、Surfaceタブレットの導入を訴えれば良い。Windowsエコシステムで業務が標準化された企業にとって、同等の快適性が得られることをアピールできる。

 同社の2014会計年度第1四半期において、Surfaceの売上高は4億100万ドルだった。その大半は「Surface RT」が占めたが、Surface RTの在庫調整に関連して9億ドルの損失を計上した2013会計年度第4四半期から大きく好転している。

 企業のIT部門は今、モバイル技術を導入することで、事業の競争力を高める方法を模索している。その対象は、ソフトウェアやアプリケーションだけでなく、ハードウェアにも及ぶ。

 「(モバイルといえば、)誰もが、単にノートPCやタブレット、携帯電話のことだけと見なすが、われわれの考えでは、この3つ全てを組み合わせた集合として捉え、端末間の利便性を高めるものである」と米IDCで携帯電話担当ディレクターを務めるウィル・ストフェガ氏は語る。

 これは、Microsoftにとって歓迎すべき話だ。なぜなら、同社は、Windowsモバイルエコシステム内のあらゆるプラットフォームをまたいで、Windowsエクスペリエンス(体験)を統一しようと試みているからだ。

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