Windows 8/8.1の業務利用は時期尚早だという声は根強くある。だが検証もせずに導入検討の対象から外すのは合理的ではない。Windows 8/8.1の現実をあらためて見ていこう。
あなたの会社は、どんなモバイル戦略を用意しているだろうか? 多くの企業と同じなら、何でもありだろう。文化的に考えたら、それは悪いことじゃない。上層部が無謀にも悪夢のBYOD(私物端末の業務利用)制度の導入を推進しているならば、業務用モバイル端末をWindows 8/8.1(以下、Windows 8.x)で標準化しようとしても、さまざまな端末を使っている従業員はなかなか賛同しないだろう。役員たちは、iOSまたはAndroid搭載のモバイル端末が欲しいと思えば、それらを手に入れる。従業員だってそうだ。
タブレットだけでなくノートPCも含めて、Windows 8.xのモバイル端末を、標準端末にするとはいかないまでも、本気でサポート対象にしようと考えたことはあるだろうか? Windows 8.x搭載のモバイル端末は、より普及している他のモバイルプラットフォームに代わり得る。以下はその理由である。
1. Windows 8.xは、iOSやAndroidに匹敵するエンタープライズ向け機能を備えている。Windows 8.xモバイル端末は、機能面で他の競合端末に全く引けをとらない。Windows RTはさておき、Windows 8.xモバイル端末は、グループポリシーなど長年の実績がある管理機能を使ってセキュリティを確保できる
2. 「MobileIron」や「MaaS360」「AirWatch」など、既に企業が導入している可能性がある主流のモバイル端末管理(MDM)製品の大半が、Windows 8.xモバイル端末をサポートしている
3. モバイル端末で保管するデータを暗号化しなければ、情報漏えいは必至だ。賢明にもHDD暗号化機能を有効にしたいのなら、BitLockerを利用できる。Windows 8におけるBitLockerの機能強化を考えると、他に暗号化機能を利用していない場合、BitLockerを使わない理由は断固としてない
4. Windows 8.xのModern UI(旧称Metro UI)は、タッチ非対応の端末では使いづらいが、タッチパネルを備えるモバイル端末では便利だ。少なくともiOSやAndroidと肩を並べる。Windows 7など以前のバージョンからWindows 8.xへアップグレードする場合に備えて、タッチススクリーン型のノートPCだけを調達することをお勧めする
米MicrosoftのOSの実力は誰もが知っている。IT担当者は、モバイルの世界において、Windows 8.xへの移行を断固阻止するべきなのだろうか?
誤解すべきではないのは、Windows 8.x/RTには確かに制限があるし、Windowsストアのアプリケーションはマルウェア対策も含めて悲惨な状況である、ということだ。Microsoftの組み込みのマルウェア対策ツール「Windows Defender」は、端末を十分に保護できるのだろうか? 恐らく、エンタープライズレベルでの保護は望めないだろう。
またWindows 8.xタブレットには、3G回線や4G回線を使ったデータ通信機能を持つ機種が比較的少ないこともデメリットだ。さらには、スティーブ・バルマー氏が引退を表明している今、Windowsのモバイルハードウェアプラットフォームが長期的に存続するかどうかも分からない。
モバイル端末分野でWindowsの人気が出ないのは、単にiOSとAndroidの目新しさの方にユーザーが引かれているからだろう。同様に、一部のメディアが「Windows 8.xはひどいOSだ」と主張すれば、信じる人も多い。
Windows 8.xは100点満点には手が届かない。だが多少手を入れれば、モバイル端末でも申し分なく使える。操作性の懸念よりもメリットの方が大きい。Windows 8.xのModern UIが適しているのはタッチスクリーンのみである点には注意が必要だが、そのことはWindowsモバイル端末の本質的な問題ではない。
われわれはモバイル端末と従来のデスクトップPCとを分けて考えがちだが、そうすべきではない。Windows 8.xモバイル端末のサポートをためらう理由が、Microsoftの先行きが不透明であるということなら、静観しよう。だがWindows 8.xが何らかの点で“劣った”OSであるということが理由なら、ためらうべきではない。その理由は事実ではない。
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