2014年度下半期、教育機関が注目したIT製品分野はこれだ教育ITニュースフラッシュ2014年度下半期まとめ

教育ITニュースフラッシュで2014年10月から2015年3月に取り上げたIT導入事例を一挙紹介。2014年下半期の主要ニュースを基に、教育機関が注目するIT製品分野を探ります。

2015年03月30日 12時00分 公開
[鳥越武史TechTargetジャパン]

 教育機関のIT導入事例、教育機関向けの新製品に関するニュースを紹介する教育ITニュースフラッシュ。本稿では、2014年10月から2015年3月に掛けて取り上げた、教育機関のIT導入事例に関する主要なニュースを振り返りつつ、教育機関が注目するIT製品分野を探ります。製品分野別に導入事例をまとめた一覧表もダウンロード提供。ぜひご覧ください。

2014年度下半期 教育ITニュースフラッシュ導入事例一覧表(導入製品分野別)のダウンロード


タブレットは本格活用期へ 「MDM」への関心も

 2014年上半期から引き続き、比較的多く取り上げたのはタブレット活用事例です。テストの点数向上を狙った富山国際大学付属高等学校、塾生1人ひとりに合わせた学習を可能にする「アダプティブラーニング」を進める学習塾のメイツなど、タブレットの用途はさまざま。教員会議のペーパーレス化にタブレットを活用する日本大学のように、学習者だけでなく教員のタブレット活用で効果を得ている教育機関もあります。試験導入などを経てタブレットへの理解が進んだ今、より明確な導入効果を狙ったタブレット活用が広がっています。

 タブレットの運用管理やセキュリティ対策への関心も高まりつつあります。その具体的な手段として導入が進むのが、複数端末の一斉管理機能を備えたモバイルデバイス管理(MDM)製品です。タブレットの本格導入を始める教育機関が増えるにつれて、全校生徒の1人1台環境も珍しくなくなる中、大量の端末を効率的に導入、管理したいというニーズが高まっていることが背景にあります。教育ITニュースフラッシュでも、淡路市教育委員会、野田塾、同志社中学校、鎌倉学園中学校・高等学校の4校の導入事例を紹介しました。

MOOCの授業利用が進む ビデオ会議で海外との共同授業も

 大規模公開オンライン講座(MOOC)を中心とするオンライン授業/講義関連の話題も多く取り上げました。社会人や受験生などの一般利用が中心と見られていたMOOCですが、最近ではMOOCで公開されている他の教育機関のオンライン講義を、授業や講義に活用する教育機関が現れています。東京工科大学は慶應義塾大学のMOOC講義、工学院大学附属高等学校は首都大学東京のMOOC講義を活用し、従来の授業/講義と予習の役割を一部逆転させた「反転授業」の実現に生かしています。

 遠隔地の教育機関や研究機関との共同授業/講義に、ビデオ会議システムを活用する教育機関も少なくありません。特に、グローバル人材育成の重要性から海外に目を向ける教育機関が増える中、海外との共同授業/講義にビデオ会議を生かしたいというニーズが今後高まる可能性があります。教育ITニュースフラッシュでも、ビデオ会議システムを使ってタイの研究機関とのリモート講義を実施する政策研究大学院大学、海外姉妹校と交流する東邦高等学校の事例を紹介しました。

「プログラミング学習塾」が相次ぎ登場 電子図書館にも動きが

 プログラミングを教える学習塾が相次いで登場しているのも興味深い動きです。義務教育でのプログラミング学習についての議論が広がる中、プログラミングに関心を持つ学習者や保護者が増えつつあることが背景にあると考えられます。ロボット科学教育は、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」を使ったプログラミングコースの開講を発表。「花まる学習会」運営のこうゆうは、ディー・エヌ・エーが開発するタブレット向けプログラミングアプリを使った講座を始めます。システム開発やITスクール運営を手掛けるワンクリックアイティーなど“異業種”も参入し、今後はどう差異化が進むかに注目が集まります。

 タブレットなどスマートデバイスの普及に伴い、デジタル教科書を中心としたデジタル教材の活用が進みつつあります。こうした中、今後関心が高まるとみられるのが電子図書館/電子書籍です。最近では楽天が、電子図書館システム最大手の米OverDriveを買収すると発表。既に慶應義塾大学が同社製システムを導入した電子図書館の実証実験を進めています。さらに福井大学や玉川大学が京セラ丸善システムインテグレーションの電子書籍配信システム「BookLooper」を使い、図書館で電子書籍を貸し出す取り組みを進めるなど、大学を中心に国内の教育機関でも導入の機運が高まっています。

放置自転車をスマホで解消 授業にとどまらないIT活用を模索

 ITの力で、解決が困難だと考えられていた課題に解決策を見いだそうとする取り組みもあります。その1つが、京都大学が進める大学キャンパス内の放置自転車対策です。卒業時に自転車を引き取らない学生が多いことから、放置自転車が年々増え続けている大学は少なくありません。京都大学は、自転車シェアリングサービス「COGOO」の導入で、学生のスマートデバイスを使って共有自転車を手軽に利用できるようにしました。学生の個人自転車の持ち込みを減らし、放置自転車の増加を食い止めようという狙いです。

 授業や講義でのIT活用が目立ちがちですが、教育機関でITが役立つのはそこだけではありません。校務や学務でもそうですし、適切なIT製品/サービスを活用すれば、教育現場のさまざまな課題を解決または緩和できると考えられます。TechTargetジャパンでは、今後も教育機関のさまざまなシーンで活用できるIT製品と、その先駆的な事例を紹介していきます。

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