成熟期に入ったOpenStackは、大規模でなくても運用できるのか、小規模でもコストメリットは出るのか。専門家4人が集結し最新動向や活用方法を語った。
2017年7月20〜21日の2日間にわたり、オープンクラウド(オープンソースの基板ソフトウェアを使ったクラウドサービスの構築・利用)の技術カンファレンスとして国内最大規模となる「OpenStack Days Tokyo 2017」が開催された。「オープン×コラボレーション」というテーマを象徴するように、今回はクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」に直接関わる技術のみならず「Docker」「Kubernetes」「Chef」など、OpenStackと共に使われている、さまざまなオープンソースソフトウェア(OSS)のコミュニティーも参加。回を重ねるごとに、ますます注目度が高まっている。
今回、アイティメディアが主催するオンラインイベント「ITmedia Virtual EXPO 2017 秋(IT)」のコンテンツとして、OpenStackに関する専門家4人が集結し、OpenStackの最新情報に加えて活用に関するさまざまな議論を展開した。本稿ではそのダイジェストをお伝えする。
主催: ITmedia Virtual EXPO 実行委員会
会期: 2017年9月5日(火)〜9月29日(金)
OpenStack Days Tokyo 2017実行委員会の委員長を務めたエクイニクス・ジャパンの長谷川 章博氏は「現場の声を反映した多彩なテーマのセッションは、それぞれの会場で立ち見が出る盛況ぶり。来場者数も過去最大の3000人を数え、イベントとしては大変満足のいくものだった」と手応えを示す。
実のところOpenStackは一時期の盛り上がりを失いつつあった(参照:なかなか盛り上がらないOpenStackの企業導入、廃業するベンダーも)。なぜなら、コンテナおよびそのオーケストレーション(運用自動化)を担うKubernetesといった製品/技術の台頭によって、OpenStackのようなクラウド基盤が次第に意味を失っていくのではないか、という見方が広がり始めていたからだ。
今回のOpenStack Days Tokyo 2017は、そうしたOpenStackにまつわる“誤解”を払拭(ふっしょく)するとともに、むしろOpenStackとコンテナが連動することで、より良いインフラをアプリケーション開発者や運用担当者、さらにはインフラ管理者に提供できるようになる可能性を啓発する、絶好の機会となったようだ。
日本OpenStackユーザ会の会長を務めるNTT持ち株会社の水野 伸太郎氏は「もともとOpenStackは物理層に近い低レイヤーのインフラを支えているため、OpenStackの上でコンテナ技術も使う『コンテナ on OpenStack』は自然の流れだといえる」と語る。一方でOpenStackのコントローラー部分をコンテナに展開し、スケールや管理を容易にするといった逆転の活用方法「OpenStack on コンテナ」も広がっていると説明する。
日本OpenStackユーザ会の副会長を務めるNECの鳥居隆史氏が「最も印象に残ったセッションの1つ」として挙げるのも、まさにOpenStack on コンテナのアプローチを全社的に展開しているヤフージャパンのユースケースだ。「OpenStackそのものも複雑なアプリケーションであり、Kubernetesのインフラにコンテナアプリケーションとして複数のOpenStackをプロビジョニング(配備)することで、構築や監視、アップグレードが非常に楽になる」と鳥居氏は語る。
今回、座談会のモデレーターとして参加した日本仮想化技術の玉置伸行氏は「OpenStackに興味を持っている人は大勢いるが、まだまだ情報が足りない。OpenStack Days Tokyo 2017の内容をまとめたり、関連するセミナーや勉強会をユーザー会や草の根で企画できたら」と考えている。
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