ID連携を実現する「IDフェデレーション」は比較的新しい技術であり、課題もある。導入に苦労しないために理解しておきたい手段が「IDフェデレーション管理」だ。
管理すべきIDの範囲が広がるにつれ、ID連携を実現する「IDフェデレーション」の導入が検討対象となる。ただし導入検討を本格化させる前に、その複雑性に目を向ける必要がある。
かつてID管理を担当するITチームは、1つのセキュリティドメイン(単一のセキュリティポリシーに基づくシステムグループ)内のリソースへのアクセスを管理するだけでよかった。だがここ数年、社内LAN内のエンドユーザーがインターネットのリソースにアクセスし、社外のエンドユーザーも社内LANの内側にあるリソースにアクセスするようになった。こうした状況はID管理方法を複雑にし、管理を難しくしているのだ。
こうした中、企業の間で「IDフェデレーション管理」に取り組む動きが広がり始めている。IDフェデレーション管理は、エンドユーザーが複数のシステムで簡単に作業できるようにしながら、複数システムのサポートに伴う管理オーバーヘッドを削減できる。
IDフェデレーションは、それぞれ独自のID管理システムを持つ複数のセキュリティドメイン間で、それぞれのユーザーIDをリンクさせる。2つのドメインでIDフェデレーションを実現すると、一方のドメインで認証を受けたエンドユーザーは、他方のドメインでもログインしないでそのリソースにアクセスできる。
例えば複数の企業が、あるプロジェクトに共同で取り組む場合、IDフェデレーションを実現すれば、各社のエンドユーザーが簡単に相手企業のリソースにアクセスしたり、自社のリソースを共有したりできるようになる。IDフェデレーションでは、エンドユーザーが一度の認証で全てのドメインのリソースにアクセスできるだけでなく、管理者が自社ドメインのアクセスレベルを制御することもできる。
IDフェデレーションの重要な構成要素が「シングルサインオン」(SSO)だ。SSOは、エンドユーザーが1つのクレデンシャル(ログイン資格)情報で、複数のシステムやアプリケーションにアクセスできるようにする認証メカニズムだ。IDフェデレーションとSSOは同一の技術だと考えられることもあるが、必ずしもそうではない。ただしIDフェデレーションは、複数ドメイン間でエンドユーザーを認証するために、SSOに大きく依存する。
エンドユーザーが必要なときに必要なリソースに簡単にアクセスできるようにすることが、IDフェデレーションの目的だ。例えばエンドユーザーがドメインごとに新しいアカウントを作成して、クレデンシャル情報を覚える必要をなくす。そうなればエンドユーザーがドメインを移動する際に、クレデンシャル情報を再入力する必要がなくなる。エンドユーザーが各リソースに、可能な限りシームレスにアクセスできることが理想的だ。
IDフェデレーションにより、管理者は複数ドメインへのアクセスに関する多くの問題から解放される。例えばインターネットのリソースへのアクセスを容易にするために、特別なシステムを開発する必要がなくなる。複数ドメインのリソースへのアクセスが必要なアプリケーションにとっても、IDフェデレーションはメリットになる。
こうしたメリットを実現するためには、ITチームが総合的なIDフェデレーション管理を導入することが重要になる。
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