2006年10月13日 00時00分 UPDATE
特集/連載

Web2.0時代におけるヤフーの進化を知る進化するヤフーの「行動ターゲティング」とは!?

Web2.0の時代を迎え、ヤフーは今後も王者として君臨できるのだろうか? ヤフーは先日、One to Oneマーケティングに最も近いといわれる「行動ターゲティング」を商品化した。この行動ターゲティングこそ、ヤフーの今後を占う重要なキー・サクセス・ファクターなのだ。(TechTargetジャパン・リポート)

[小宮 紳一,TechTargetジャパン]

 インターネット広告の大きな特徴の1つは、さまざまな方法でターゲティングが行えることである。ヤフーは、このターゲティング広告に対して、最も積極的に取り組んできた企業の1つである。ヤフーのターゲティング商品の分野は実に多岐に渡る。そのターゲティング方法は多彩であり、「掲載面」「興味・関心分野」「年齢・性別・職業」「地域」などがすでに商品化されている。

 そして本年7月、One to Oneマーケティングに最も近いといわれる「行動ターゲティング」がついに商品化された。Web2.0の時代を迎え、ヤフーが今後も王者として君臨できるのかどうかは、TechTargetジャパンの読者にとっても非常に興味あるところだろう。編集部は、この行動ターゲティングこそ、ヤフーの今後を占う重要なキー・サクセス・ファクターであると考えた。そこで、ヤフー広告本部にお話をうかがった。

行動ターゲティングとは何か

kondou-face.jpg ヤフー株式会社 広告本部 営業企画部長 近藤 弘忠氏

 従来からあるターゲティングがプロフィールやコンテンツカテゴリなどに基づきターゲティングをするのに対し、行動ターゲティングは、ユーザーの(正確に言えばユニークブラウザだが、本記事中はユーザーと記述)行動履歴に合わせて広告表示を行う。

「掲載面」(コンテンツカテゴリ)で分類したターゲティング広告とは、例えば自動車のサイトに自動車関連の広告を掲載するというものだ。

 これに対して行動ターゲティングは、例えば自動車に興味がある人には、一定期間、そのユーザーがどのようなサイト訪れても自動車の広告を配信するというものだ。

 ターゲットの選定のために、ヤフーではカテゴリグループを作成している。自動車のカテゴリであれば、自動車関連のサイトを訪れたり、「高級車」「トヨタ」「レクサス」などの検索ワードを入力したユーザーを、同一の興味関心を持つグループとして集積する(28日間)。このユーザーグループのそれぞれに対して、前述したように、一定期間、広告を行動に合わせて配信していくのである。自動車に興味のあるAさんが、ヤフー内のどのサイトを訪れようとも、自動車関連の広告が掲載されるのである。

 検索ワードを利用した検索連動広告と比較すると、それぞれの利点は明確に異なる。検索連動広告は、ユーザーの興味が顕在化されているので、興味・関心に対して直接的に訴求できる。その半面、あくまでユーザーが検索しなければ情報が提示されないという問題がある。

 これに対して行動ターゲティングは、カテゴリでグループ化しているので、興味・関心の部分ではダイレクト検索よりも、やや希薄だが、分野的な網羅性がある。また、周辺的な関心層、潜在顧客まで対象として含むことができるという利点を持っている。また、掲載期間も長いため、長期的な関心を獲得することも可能になる。

 米国のヤフーにおいてはすでに3年前から運用が開始され、現在、四半期ベースで600社程度のクライアントが活用しているという。

 日本においては、今年7月に商品化スタートしたが、1年間の試用期間を設けた。新商品の試用期間としては長い印象があるが、これは「代理店も含め、クライアント企業にその商品性格と使い方を完全に理解してもらうための期間であった」と近藤氏は語る。そのコンセプトからして、まだ日本では馴染みのない商品である。コンセプトや効果などについて十分に理解してもらわなければ、期待とのギャップにより誤解を生む可能性があるからだ。

 また、市場の日米差もある。例えば、「不動産」というと日本では賃貸などの情報を思い浮かべるが、米国では基本的に不動産といえばローンが想起されるなどの違いがあり、米国で作られたユーザーグループのカテゴリを日本ではそのまま使えなかったという。

 米国のビジネスモデルをそのまま持ち込み、すぐに商品化したわけではなく、日本市場に適応した商品にするために1年の歳月をかけたと言えるだろう。

ヤフーの掲げるストラテジック・データ・ソリューションとは

tsurusaki.jpg ヤフー株式会社 広告本部 営業企画部 津留崎 耕平氏

 行動ターゲティングの特性として、広告掲載後のリポートの充実も挙げられる。通常のリポートは、インプレッション数、クリック数、クリック・スルー・レート(CTR)について報告されるが、同商品では「リーチ数」「リーチした人が普段、どのようなサービスを使っているか」「クリックした人が普段どのようなサービスを使っているか」「ほかにどのような興味を持っているか」などがリポートされる。つまり、対象とするユーザーはどのような人なのか、その行動の導線を知ることができるのである。ダイレクトな訴求だけではなく、その後のマーケティング戦略全般に利用できるデータを取得できるのだ。

 現在、不動産、ファイナンス、ライフステージなどの15の大カテゴリーに、約800もの小カテゴリが作られている。ヤフーの大半のカテゴリをカバーしていることになる。

 編集部は、行動ターゲティングの特性として、ある程度、検討期間を要する高級品や耐久消費財が主対象になると予想していたのだが、津留崎氏によれば「ブランディング的に利用すれば消費財でも十分な効果が期待できる」とのこと。これは特定の対象に対して、露出期間の長さによる刷り込み効果などが期待できるからだという。

 気になる広告効果だが、自動車カテゴリでの事例では、ノンターゲティングに比べフリークエンシーで4.5倍、クリックスルーレートで1.2倍と明確なプラス効果を出している。ただし、ターゲットをグループ化するため、ユーザー数は少なくなる。ヤフーでは、両者を組み合わせることで、それぞれの特徴を補完・増強しあい、トータルパフォーマンスがアップすると説明している。

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 行動ターゲティングは、インターネット広告の分野では、随分前から注目されてきたコンセプトであり、当然、ヤフーの専売特許という訳ではない。インターネット広告を手がける競合他社でも商品展開は可能である。では、行動ターゲティングにおけるヤフーのアドバンテージは、どこにあるのだろうか。

 これについてヤフーはずはり「母数があること」と断言する。類似する興味・属性を持つユーザーグループをジャンルごとに作っていくためには、相当数のボリュームが必要になる。また、各ユーザーの行動をカバーするためのバラエティに富んだサイト群も必要になる。こうして考えると、行動ターゲティングは非常に魅力的な商品コンセプトだが、現状で実現できる企業はかなり少ないことになるだろう。

 TechTargetジャパンの読者はすでにお気づきだと思うが、この仕組みは企業のマーケティング戦略の開発から販売までの広い範囲をカバーするものである。この仕組みにより、企業は顧客をよりリアルに知ることが可能になるのだ。

 ヤフーは自社が保持する膨大なデータを有力な資産として活用していく「ストラテジック・データ・ソリューション」という仕組みを構築・展開し始めている。このソリューションこそ、ヤフーが今後の2.0時代に勝ち残っていく重要な戦略の1つである。消費者の嗜好が多様化・複雑化する現在、企業においては、さまざまなデータを集積し、そこから消費者の志向を的確に読み取っていくことが、ますます重要になってくる。ヤフーは、こうした企業活動を支援するさまざまなデータ・ソリューションを、広範に展開していこうと考えているのだ。

 行動ターゲティングに関しても、800ものユーザーグループを作れるのは、膨大なデータ資産を背景に持っているからである。行動ターゲティングのみならずデータを戦略的に活用し、どのようなソリューションを提供していくのか。Web2.0の時代を迎えヤフーの価値が問われるのは、これからなのである。

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