2008年09月04日 08時00分 UPDATE
特集/連載

プロジェクト管理ツール利用に関するアンケート結果リポート「Excelでプロジェクト管理」が圧倒的多数、しかし満足度は低め

TechTargetジャパンでは、アンケートを通じてプロジェクト管理についての課題および管理ツールの利用状況を調査。企業や立場によってプロジェクト管理に対する意識に違いがあることが分かった。

[榎本有紗,TechTargetジャパン]

 昨今、システムの開発はより複雑化、多様化しており、開発者には成果物の品質向上や短納期、低コストをはじめとするさまざまな課題がのしかかっている。その中でも、現場の人間が最も問題だと感じているのはどの部分なのだろうか。

 また、プロジェクトを成功させるためには「品質・コスト・納期」という3要素のバランスを取ることが不可欠となる。その実現をサポートするものの1つとしてプロジェクト管理ツールが挙げられるが、現場で求められている機能とはどのようなものか。本当に使いたい機能、使える機能とは何か?

 そこで今回、TechTargetジャパンでは、プロジェクト管理に関する課題やプロジェクト管理ツールの利用状況を調査するため、会員を対象に「プロジェクト管理ツールの利用状況に関するアンケート」を実施した。656件の有効回答から見えてきた現状を読み解いていく。

何といっても一番の問題は「不十分な要件定義」

 開発プロジェクトを進める上で、最も改善すべきだと感じている課題を聞いたところ、「不十分な要件定義」と回答した読者が39.2%と突出して多かった(図1)。

photo 図1●プロジェクトを進める上で改善すべき(してほしい)課題

 次点には「頻発する仕様変更」(18.1%)が挙がった。上位に挙げられた2つの課題を見ると、要件が決まらず、さらにプロジェクトが走り出した後も変更が発生する開発案件に翻弄(ほんろう)され、頭を抱える開発者の姿が浮かんでくる。開発を始める前の準備が十分でないと感じている開発者は多いようだ。

 図1の結果に、「プロジェクトにおいて、プロジェクトマネジャー/リーダーとチームメンバーどちらに所属するか」という質問とひも付けてクロス集計したところ、問題意識は立場に関係なく共通していることが明らかになった。最も割合が高かったのは、やはり両者とも「不十分な要件定義」。次に「頻発する仕様変更」「不透明な進ちょく度」と続き、単純集計と変わらない結果となった。

 しかし、改善すべき課題について、TechTarget会員のプロフィールとひも付け、「一般社員」「係長・課長」「部長・経営者」というカテゴリに分けてクロス集計を行ったところ、多少の意識の違いが見られた(図2)。

photo 図2●立場別に見る、プロジェクトを進める上で改善したい(してほしい)課題

 図2を見ると、「不十分な要件定義」に対する不満が群を抜いて大きいのは変わらないが、一般社員と経営者層とでは問題に対する意識に違いがあることが分かる。例えば、経営者層で「チーム内のスキル格差」を問題と考えているのは4.8%だが、一般社員クラスは7.8%、係長・課長クラスは10.4%となっている。経営者層の人間は直接現場に携わることは少ないため、開発メンバーにスキル格差があるか否かが把握しにくいためだと推測できる。

 一方、「チーム内および発注元との情報共有体制」については、一般社員クラスが9.2%、部長・経営者クラスが13.3%を占めているのに対し、係長・課長クラスでは4.8%と低い数値となった。ここでも、立場による問題意識の違いが現れている。

圧倒的に使用度が高いMicrosoft Office Excel、選んだポイントは?

 実際に導入済みのプロジェクト管理ツールを尋ねたところ、上位から「Microsoft Office Excel」(67.8%)、「Microsoft Office Project」(44.8%)、「Trac」(8.8%)、「GanttProject」(4.9%)、「IBM Rational製品群」(4.7%)と、マイクロソフト製品の導入率が圧倒的に高かった(※複数回答)。

 Microsoft Office Excelを使用しているという回答者にその理由を聞いたところ、「既にあるツールだから」「ほとんどの人が使ったことがあるため分かりやすい」という答えが多かった。「Microsoft Office Excelで自前のツールを作成し使用している」と回答した読者も多く、導入とカスタマイズのしやすさで人気を得ていることが分かった。一方で、「カスタマイズを自分でやらなくてはならないので大変」「自由度が高い半面、集計が面倒」「対応できる規模に限界がある」などの声も聞かれた。

 しかし、最も使用されているMicrosoft Office Excelについて満足度を分析したところ、「とても満足」(0.9%)、「満足」(33.9%)」と、満足している会員は30%強に留まっており、「やや不満」(47.9%)、「とても不満」(11.5%)と、Microsoft Office Excelでのプロジェクト管理に不満を持つ会員は約60%に上ることが分かった。導入のしやすさはMicrosoft Office Excelの最大のメリットだが、プロジェクト管理に特化しているわけではないため機能が不足していると感じている会員が多いようだ。Microsoft Office Excelをプロジェクト管理ツールとして使用している場合、導入はしやすいものの、さほど高い費用対効果は得られていないと思われる。

 なお、「費用対効果」についての満足について、導入済み、かつ有効回答数が30件以上あった上記5製品のデータを比較してみると、以下の表のようになった。オープンソースのプロジェクト管理ツールであるTracやGanttProjectが高い満足度を得ていることが分かる(「未回答」は除外)。


プロジェクト管理ツール満足度 (費用対効果)
製品名 とても満足/満足 やや不満/とても不満
GanttProject 78.1% 21.8%
Trac 65.5% 31.3%
Microsoft Office Excel 43.8% 49.7%
Microsoft Office Project 43.5% 54.5%
IBM Rational製品群 25.8% 71.0%

 では、プロジェクト管理ツールを選定する際、TechTargetジャパンの読者はどのような点を重視しているのだろうか? 

photo 図3●立場別に見る、プロジェクト管理ツール選定の際に重視するポイント

 図3を見ると、プロジェクトにおける問題意識と同じく、プロジェクトマネジャー/リーダーとチームメンバーで大きな意識の隔たりはない。「操作性の良さ」が両者とも25%を超え、使い勝手が重要視されていることが分かる。次の「費用対効果」についても両者とも18%弱を占め、高いコストパフォーマンスを持つ製品を選択したいという読者のニーズが見えた。こうしてみると、上位に挙がっている条件をある程度押さえているツールがMicrosoft Office Excelなのだといえそうだ。

サポート面に不満を持っているユーザーが多い

 プロジェクト管理ツールに関して満足度を調査したところ、「導入のしやすさ」については「とても満足」(10.1%)、「満足」(43.9%)と、満足している読者が合わせて半数を超える結果が出た。ただ、「機能面」「操作性」「サポート面」についてはすべて、「やや不満」「不満」と答えた読者の割合が50%を超えており、現在使用しているプロジェクト管理ツールに対して、何らかの不満を抱いていることがうかがえる(図4)。

photo 図4●導入済みプロジェクト管理ツール選定に対する満足度

 中でも、サポート面は「とても満足」(1.2%)、「満足」(28.8%)と、低い数値を記録している。集計結果からツールごとに満足度を分析してみると、どの製品もサポート面では「不満」と答えた読者が半数以上を占める結果となった。その中で、唯一違う傾向を見せたのが「IBM Rational製品群」だ。「とても満足」と回答した読者が2%にも満たないほかのツールと比べ、「IBM Rational製品群」は「とても満足」と回答した読者が9.7%と、サポート面では突出した強さを見せた。ただし、同ツールの価格を考えるとサポートの充実は当然といえるかもしれない。

プロジェクト管理ツールに本当に必要な機能は?

 では、プロジェクトマネジャー/リーダーやチームメンバーがプロジェクト管理ツールに求める機能とは何だろうか。

photo 図5●プロジェクト管理ツールに必要だと思う機能

 図5を見ると、両者とも最も必要だと考えている機能は「情報共有」となった。注目すべきは、管理する側とされる側とで求める機能に違いがある点である。例えば、「ガントチャート」は管理する側であるプロジェクトマネジャー/リーダーの70%以上が必要だと感じているのに対し、管理される側であるチームメンバーは60%に満たない程度となっている。「原価および予算管理」や「リソース負荷表示」についても、管理する側は45%前後の人間が必要と感じているのに対して管理される側は30%弱と、立場によっての意識の違いがここでも見られた。

大規模な企業ほど工事進行基準への対応にいち早く着手

 2009年4月から、受託開発するソフトウェアにも「工事進行基準」が適用されるようになる。その工事進行基準への対応について調査したところ、既に対応している、あるいは対応する予定がある会員は中規模〜大規模企業の割合が高かった(図6)。

photo 図6●「工事進行基準」への対応状況

 一方で、大規模企業でも「工事進行基準を知らない」と回答した読者が30.0%おり、内部統制日本版SOX法に比べると、まだまだ認知度は低い。また、小規模企業では「対応する予定はない」が37.4%を占めており、コストや人材不足のために法対応に手が回らない現状がうかがえる。

プロジェクト管理ツールを導入する企業は増える可能性あり

 今回の読者調査では、開発プロジェクトにおけるさまざまな課題があらためて明らかになった。プロジェクト管理ツールを使っていてもその満足度は低く、実際に有効活用できているツールは多くない。本当に使いたい機能は何か、管理したいのは何かを考えた上でツールを選択しているというより、既存のツールに機能を追加して活用するというパターンが多いように見受けられた。

 また、プロジェクト管理ツールには工事進行基準対応をうたうものが増えてきているが、企業の工事進行基準への対応はまだ本格的には始まっていない。Microsoft Office Excelを含め、単純な進ちょく管理や情報共有機能のみを持つツールでは原価計算や会計処理といった細かい分析を行うのは難しい。そのため、今後は工事進行基準に対応できるツールに注目が集まる可能性があり、ツールを導入する企業は増えていくと思われる。


調査概要

  • 目的:TechTargetジャパン会員のプロジェクト管理ツール利用状況を調査するため
  • 方法:Webによるアンケート
  • 調査対象:TechTargetジャパン会員
  • 調査期間:2008年7月13日〜7月22日
  • 有効回答数:656件

※回答の比率(%)は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位まで表示しているため、比率の合計が100.0%にならない場合があります。

「プロジェクト管理ツールの利用状況に関するアンケート調査」にご回答いただいた会員の皆さまに限り、電子メールにて詳細な調査リポート(PDFファイル:回答結果と会員属性のクロス集計含む)を順次お送りいたします。

なお、次回のアンケート調査は後日メールなどで告知いたします。ぜひ、次回のTechTargetジャパン会員調査にご協力ください。アンケートにご回答いただくには、会員登録(無料)が必要です。


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