IFRSにかかわる組織から毎月、公表される各種文書。ムービングターゲットと言われ、変化を続けているIFRSの姿を捉えるにはこれらの文書から最新情報を得る必要がある。今月は米国におけるIFRS適用の動向と、IASB議長による米国IFRS適用への「予想」を紹介する。
2012年は米国が延期されていたIFRS
適用の判断をするとされている年だ。日本でも企業会計審議会での議論によってIFRS適用の方針が決まる見込み。2012年はIFRSの今後の動向が決まる年になるだろう。本稿では2012年1月のIFRS関係の世界と日本の動向をお伝えする。
【これまでの記事】
ASBJ:企業会計基準委員会
FASB:米国財務会計基準審議会
IASB:国際会計基準審議会
IFRS:国際財務報告基準
MoU:IFRSと米国の会計基準との間の差異に関するコンバージェンス合意
SEC:米国証券取引委員会
SEC現委員長メアリー・シャピロー氏は、1月5日、ブルームバーグラジオ放送の前委員長アーサーレビット氏とのインタビューにおいて、以下のように米国のIFRS導入について語った。
米国がIFRSを導入するか否かという課題はここ数カ月中に決定されることとなる。SECは、米国の財務報告制度にIFRSの導入を決定する前にいくつかの問題を解決しなければならない。すなわちSECはIASBの独立性と、IFRSの品質と強制力を考慮することが必要である。
財務会計基準機構(FASF)の荻原理事長は新年のあいさつとして以下を述べている。IFRS、国際対応関係を引用する。
本年(2012年)は金融庁の企業会計審議会で審議されているIFRSの適用のあり方についての議論が深みを増していくと考えられ、また、海外においては、SECが米国におけるIFRSの組み込みのあり方について、何らかの決定を行うと考えられるなど、引き続き重要な年となる。
FASFおよびASBJの重要な役割として、会計基準に関する国際対応があげられ、IASBとの関係においては、交渉当事者となるASBJの発信力を高めていくことが重要となる。
また、国際対応活動においては、参加する個々人の能力が重要であり、海外において能力を発揮するためには国内における十分なサポートが必要となり、FASFにおいては、今後もさらにサポートを強化していく方針である。これらの活動を強化していくためには、5年後、10年後を見据えた人材開発が重要となり、2011年にFASF内に「人材開発タスクフォース」を立ち上げ、2012年から人材育成活動を本格化する予定である。
IASB議長、ハンス・フーガーホースト氏は、モスクワで2012年1月23日に行われたアーンスト&ヤングのIFRSセミナーにおけるスピーチで、米国はIFRSを採用するであろうと予想した。
IFRS財団のウェブサイトによれば、フーガーホースト氏は、SECの意思決定の内情について知るいかなる特権をも持ってはいない。しかし、フーガーホースト氏は、自身とFASB議長レスリー・サイドマン氏は、個々のプロジェクトについてコンバージェンスを続けるという現行のやり方は、今後も受け入れられる方法ではないと考えているとの考えを示した。
「米国は、最後には、IASBに参加するだろう。なぜなら、彼らはわれわれを必要としており、また、われわれも彼らを必要としているからだ」とフーガーホースト氏は述べている。
一方で、2011年12月SECの主任会計士ジェームス・クローカー氏は米国のIFRS適用について最終レポートの作成にはさらに数カ月を必要と発言している(詳細は、「SEC、米国企業へのIFRS適用判断を先送り」を参照されたい)。
フーガーホースト氏は、米国は、長期間に渡り洗練を続けてきた財務報告基準を有しているため、移行の問題については慎重に検討しなければならないとして、米国によるIFRSのエンドースメントを支持している。その上で、「米国はグローバルな会計基準を真剣にサポートしており、これは、SEC、米国政府、また米国がキープレーヤーとして関与するG20の方針である」と述べた。
IASBはすでに、東京にアジアサテライトオフィスを2012年10月に開設することを決定しているが、当初の予定通り進めることを確認した。サテライトオフィスは、アジア・オセアニア地域のIFRSの導入についての支援活動を行う予定である。
京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。部分執筆書に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。
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