BYODで変わるコミュニケーション
次に来る「スマートフォンIP電話」、その先進事例は
業務でスマートフォンやタブレットを使うことが一般化すると音声通話の形も変わるかもしれない。ユニファイドコミュニケーションの先進的な事例を紹介する。
エンタープライズモビリティが、企業のIT部門が提供するユニファイドコミュニケーションシステムの在り方に影響を与え始めている。多くの企業がソフトフォンに移行することになるかもしれない。
「職場の電話の内線番号とデスクの固定電話が1対1の関係にある」という観念は時代遅れになるだろうと、通信市場調査会社の米Infonetics Researchのアナリスト、ダイアン・マイヤーズ氏は語った。
「各社員が端末や物理的な現在位置に関係なく、1つの電話番号を使えれば、大きなメリットがある」とマイヤーズ氏。「1日24時間、社員と連絡が取れたり、社員が働けたりすることを望まない企業があるだろうか」
企業がコンピューティングとテレフォニー兼用の1台の端末に移行することはないだろう。だが、IT部門が社員に支給する機器が将来、タブレットと電話用Bluetoothドングルだけになる可能性はないわけではない。
「企業はモバイル端末があまねく普及していることから、1つの電話番号とこれに対応する通信サービスを任意の数の端末で使えるようにすることが必要になると考えている」と、企業コミュニケーションの調査会社である米TalkingPointzの創業者、デーブ・マイケルズ氏は指摘した。
「価格とパフォーマンスの観点から言えば、端末の選択は簡単だ。タブレットは多数のアプリケーションを実行できる多目的端末であり、手ごろな価格で手に入るユニファイドコミュニケーションのエンドポイントでもあるからだ」(マイケルズ氏)
ソフトフォンで端末のシームレスな使い分けが可能に
1つの電話番号への着信を、今いる場所に応じて固定電話、スマートフォン、タブレットで受けられるようにする。このことはIT担当者にとっても恩恵だ。
米Barry University(バリー大学)では、少人数の技術サポートスタッフが勤務中ずっとサポート依頼に応えて広大なキャンパスを飛び回っていた。オフィスの自分の席にいることはめったになかった。そこでスタッフの多くは、個人の携帯電話番号を関係者に知らせていた。
「このため、こうしたスタッフの携帯電話料金の会社負担額が膨らんでいた」と、同大学の副CIOを務めるハーナン・ロンドノ氏は振り返った。
バリー大学は米AvayaのPBXを使っているが、AvayaのモバイルクライアントであるAvaya one-X Mobileは、Wi-Fiネットワーク上では通話の着信のみが可能で、発信ができなかった。
携帯電話の利用台数に基づくコストを減らすとともに、技術サポートスタッフが仕事をしやすい環境を整えるため、同大学のIT部門は米ShoreTelのモビリティ製品のライセンスを取得した。この製品は、米GoogleのGoogle Voiceのエンタープライズ版といえる。この製品ではユーザーごとに固有のVoIP電話番号が提供され、この番号への着信は複数の端末に転送できる。
今では、キャンパスを移動して回る技術サポートスタッフは、私物のiPhoneやAndroid端末でキャンパスWi-Fiネットワークに接続し、メールやインスタントメッセージにアクセスできるだけでなく、学内での電話連絡先として指定しておいた自分の固有VoIP電話番号への着信に応答できる。
ロンドノ氏は、ShoreTel製品の導入により、バリー大学がこうしたスタッフの携帯電話料金の会社負担額をどれだけ節約できたかを厳密に計算するのは難しいと認めている。だが「大幅な節約につながっている」という。
「この製品を導入したおかげで、サポート技術スタッフはオフィスに戻る必要がなくなり、生産性が向上した。また、彼らの携帯電話利用分数も大幅に少なくなった」と同氏。「導入した意義があったと考えている」
この施策が大きな成功を収めたため、バリー大学のIT部門は、「1つの固有電話番号への着信を複数の端末に転送」のアプローチを、学生や教職員にも適用するかもしれない。これが実現すれば、携帯電話の電波が弱い寮で生活する学生には特に便利になるだろう。
こうした学生は、将来就職するであろう次世代の労働力であるのに加え、固定電話とWindows PCではなく、携帯電話とタブレットを使った作業に慣れている。これは大きな変化であり、「企業は今から対応に取り組む必要がある」と前出Infonetics Researchのマイヤーズ氏は語った。
企業向けソフトフォンの選択肢
「ITスタッフは、ネットワークのスケーリングにも取り組み、増えていくこうしたユーザーや端末をサポートしなければならない。また、より多くの帯域幅を提供し、音声、データ、ビデオアプリケーションの増加に対応する必要もある。さらに、エンタープライズクラスのサービスレベル、セキュリティ、管理機能を、こうした新しいモバイル端末向けに提供しなければならない」と、調査会社の米IDCのアナリスト、リッチ・コステロ氏は語った。
ITスタッフのこうした課題を踏まえ、主要なユニファイドコミュニケーション(UC)ベンダーのほとんど、例えば米Mitel Networks、Avaya、ShoreTel、米Cisco Systems、ドイツのSiemens Enterprise Communications、米Microsoftなどは、モビリティがもたらす変化をにらみながら、UC製品のアップデートに着手していると、コステロ氏は指摘した。
ShoreTelは最近、同社のモビリティおよび会議向け製品のiPad最適化バージョンをリリースした。このバージョンでは、企業の社員がiPadから、内蔵スピーカーを使ってVoIP通話の発着信を行える。iPadを使って会議をセットアップすることも可能だ。
ShoreTelのモビリティおよび会議向け製品は、企業ディレクトリと統合されており、エンドユーザーに自動VPNログオン機能を提供する他、SSLと256ビット暗号化を使って、ネットワークを通過する音声パケットのセキュリティを確保すると、同社は述べている。
Avayaが2013年3月に発表したソリューション「Session Border Controller for Enterprise(SBCE)」は、同社のコミュニケーション基盤製品「Avaya Aura」
と組み合わせて使う。SBCEは、SIP(Session Initiation Protocol)ベースのモバイルVoIPアプリケーション(iPad用のAvaya Flare Experience、iPhone用のAvaya one-X Mobileなど)について、IT部門の観点からセキュリティを強化し、社員にとっての使いやすさを高めると、同社は述べている。
SBCEのセキュリティ機能は、以前は固定電話とVPNトンネリングに限られていた。今ではSBCEは、DoS(サービス妨害)攻撃、アプリケーション層の脅威、料金不正使用(正規の料金を払わずに長距離電話をかけること)に対する保護を提供する。
SBCEを使用する環境では、モバイル端末全体がVPNトンネルでネットワークに接続するのではなく、Avayaのモバイルアプリケーションだけがネットワークに接続する。そのトラフィックは、SIPトランキング(SIPを利用できるサービスプロバイダーとの間で直接VoIP通信ができるようにすること)を使ってネットワークにルーティングされる前に、SBCEによって検査される。
また、IT部門はSBCEによって、UCツールのポリシーを設定できる。これにより、例えば、ネットワーク外部とのインスタントメッセージングやビデオ通信を制限することなどが可能になる。
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