SaaSで変わったワークスタイル
ANAグループが導入した「世界を1つにする起爆剤」とは(1/2 ページ)
2013年に「Google Apps for Work」をグローバルで導入したANAグループ。導入の狙いとは何だったのか。導入の背景とその効果を担当者が語る。
1952年に創業した全日本空輸(ANA)は、2015年6月時点で世界37都市73路線、国内51都市120路線に就航する航空会社だ。2013年4月に持株会社制に移行し、ANAホールディングスの傘下にANAに加え、ANAウイングスやエアージャパン、バニラ・エアなどを抱える。
そのANAグループが2013年3月に「Google Apps for Work」(以下、Google Apps)を導入したのは、同社が目指すワークスタイルを実現することが主な目的だった。
目指すべきワークスタイルとは、ワークライフバランスを高めることと、ダイバーシティ(※)を推進することだ。「仕事の効率化が進むと、時間の余裕が生まれ生活が充実する。充実した生活が仕事の生産性をさらに高めるというサイクルができる」と、全日本空輸 業務プロセス改革室 イノベーション推進部 業務イノベーションチーム 主席部員の林 剛史氏は説明する。
※性別や人種、年齢、価値観などの多様性を持つ人材を積極的に活用しようとすること。
またANAグループは現在、事業のグローバル化を進め、国際線における外国人客を2016年度に50%にまで増加させようとしている。こうした中で、「視野視点を広げつつ違いを尊重し合える環境を作りたかった」と林氏はGoogle Apps導入の背景を語る。
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情報共有が困難な職場環境
林氏の言う「目指すべき姿」を実現するに当たって、ANAグループではどのような課題を抱えていたのだろうか。最も大きな課題の1つが、社内の情報共有だ。正社員の約8割が客室乗務員やパイロットなどお客さまにサービスを提供するフロントスタッフであるにもかかわらず、情報はオフィスにしかなく、外部からファイルすら参照できない状況だった。また、客室乗務員やパイロット、整備、旅客、本社といった組織が縦割りで、横断的な情報共有もできていなかった。もちろん、海外と国内でも情報共有の仕組みは構築されていなかった。
「机の上でないと仕事ができない状況だった」と林氏は話す。顧客ニーズをカスタマイズすることが求められる今、オフィスに戻って情報を入手しているようでは顧客と接する時間を削ることになりかねない。このようなワークスタイルでは、業務が機能的にも機動的にもならない。「顧客に向けたサービスの改善には努めてきたが、やはり従業員の業務環境の改善にも投資すべきだという意識が経営層にも生まれてきた」と林氏は述べる。
そこで、客室乗務員やパイロット、整備担当者へ米Appleのタブレット「iPad」導入を進めるとともに、社内で導入したのがGoogle Appsだった。
グローバルで使われているサービスを
ANAグループは、それまでメールやカレンダー、ファイル共有の仕組みをオンプレミスで運用していた。今回Google Appsというクラウドサービスを選んだ理由について林氏は「モノを作ることから脱却したかった」と話す。
これまでのANAグループのシステムは、要件を固め時間をかけて構築し、安定運用する方法が取られていた。環境が変わるとなれば新たな対応計画を立て、検証しながら変更する必要があった。一方、「サービスであれば日々変動するもので、その変化とうまくつき合う方法さえ見いだせれば、良い部分を取り入れながら自分たちも進化できると考えた」と林氏は語る。その中でGoogleのサービスを選んだのは、「グローバル化を目指す以上、グローバルで利用されているサービスから文化や使い方、ベストプラクティスを学びたかった」ためだと述べる。
もちろん他社のサービスも検討したが、Google Appsの柔軟性と、完全にWebブラウザで提供されるサービスである点を評価したと林氏は話す。また、Google Appsは、もともと企業指向型ソリューションというよりコンシューマーから生まれたサービスだ。皆がアイデアを出し合いコラボレーションしつつ新たなモノを生みだそうという世界から生まれたサービスだといえる。「こうしたサービスを活用することで、外部からのナレッジを学べるのではないかと考えた」(同氏)
導入は、クラウドサービスのためスムーズだった。2012年11月に導入を決定したのち、2013年3月にはリリース。旧システムとの平行運用を2カ月間続け、同年5月には完全にGoogle Apps に切り替えた。
クラウドに移行するために、セキュリティ対策も施した。端末の二要素認証や端末内のデータ保全はもちろん、省庁が定めるクラウド利用のガイドラインに基づき、社内のガイドラインも見直したという。社内データは重要度に基づいてカテゴリ別に分け、3通りのシステムに格納している。
1つ目は、公式文書のシステムだ。このシステムに格納されたファイルは、ANAグループの文書規定に沿って期限管理をする。2つ目が組織ファイルを保存する社内ドライブ。これは、社外からログインできないファイルサーバである。最後が「Google ドライブ」だ。Google ドライブに置く情報は、主に従業員の作業ファイルのみだという。ガイドラインについては「要望やワークスタイルに合わせ、日々見直して整備していく」と林氏は話す。
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