標的型攻撃は、特定の企業や組織、業界を標的にして機密情報を狙うサイバー攻撃を指す。企業ネットワークにアクセスできるようになった攻撃者が長期間にわたって標的型攻撃を実施することを、APT攻撃(高度標的型攻撃)と呼ぶ。(続きはページの末尾にあります)
クラウドストライクが年次レポート「2025年版グローバル脅威レポート」を公表。生成AIを悪用したソーシャルエンジニアリングの増加や中国系攻撃者の活動活発化、ビッシングの急増などの状況が明らかになった。
人工知能(AI)技術の進化といった動きを背景に、ITの在り方は大きく変わりつつある。セキュリティもその例外ではない。2025年に注目すべきセキュリティ動向を紹介する。
APAC地域の企業を狙うメール攻撃が急増している。2023年~2024年にかけて、メールを使ったサイバー攻撃は月間平均約27%増えた。特に日本とシンガポールでは、あるメール攻撃が顕著に増えているという。
さまざまな組織のセキュリティの弱点を探し、改善策を提案するホワイトハッカー。彼らの仕事にも人工知能(AI)技術が欠かせない存在になりつつある。ホワイトハッカーはどのAIツールをどう利用しているのか。
AI技術を組み込んだ自律型兵器の使用は、倫理や安全の観点から懸念は、既に紛争地域で利用されている。この状況について、国連安全保障理事会が報告書を公開した。その内容とは。
米国で教育機関を狙うランサムウェア攻撃が活発化している。この状況の背景には何があるのか。調査レポートや専門家の指摘から読み解く。
ロシアによるウクライナ侵攻をどう考えるかは、サイバー犯罪者によって異なる。ロシア語のサイバー犯罪者フォーラム「Dumps」の分析から見えてきた、サイバー犯罪者の「見方」とは。
ロシアによるウクライナ侵攻がロシアのサイバー犯罪者の攻撃活動に大きな影響を与えている。そうした中、サイバー犯罪者が「捨てた手口」と「新たに挑む手口」がある。それぞれは何なのか。
ロシアのサイバー犯罪者の「ビジネス」はウクライナ侵攻によって大きな打撃を受けた。具体的な数字を基に、サイバー犯罪者の収入へのインパクトを探る。
ウクライナ侵攻を受け、ロシアのサイバー犯罪者は攻撃戦略の見直しを余儀なくされている。それはなぜなのか。ウクライナ侵攻による、サイバー犯罪への影響を探る。
従業員の多様な属性や背景が、企業にさまざまなメリットをもたらすと考えられている。だがセキュリティ分野では多様性に関する取り組みはなかなか進まないのが現実だ。それはなぜなのか。
セキュリティ担当者は仕事でさまざまな悩みを抱えていることが英国の調査で分かった。中には仕事を続ける妨げとなる深刻な問題もある。それは何なのか。
「セキュリティ担当者が最も心配するのは攻撃だ」と考えられがちだが、実はそうではないことが英国の調査で明らかになった。データが語る、セキュリティ担当者の“本当の悩み事”とは何か。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行に便乗したメールによるフィッシング攻撃は、通常の攻撃よりも成功しやすいと専門家は指摘する。それはなぜなのか。
セキュリティの脅威が高度化する中、国内組織は十分な対策を施すための予算を獲得できているのか。国内組織とグローバル組織の予算獲得状況に違いはあるのか。調査結果を基に見ていく。
APT攻撃の主な目的は、標的の組織のネットワークに損害を与えたりシステムを停止させたりすることではなく、機密性の高いデータを盗むことだ。標的となるネットワークに侵入できる状態にして、継続的に情報を盗み取る。
攻撃者は綿密な計画を立てて、手動でAPT攻撃を実行される。攻撃者は大企業や有名企業の中から標的を選び、長期にわたって情報を盗み出す。そのためAPT攻撃の実行犯は個人のハッカーではなく、資金力のあるサイバー犯罪組織や、国家主導のサイバー犯罪組織になるのが一般的だ。
標的にした企業ネットワークへのアクセスを得るために、標的型攻撃の実行犯はしばしばソーシャルエンジニアリングといったさまざまな攻撃手法を使用する。ソーシャルエンジニアリングは、対象者の心理を巧みに操って意図通りの行動をさせる詐欺手法だ。
いったん企業ネットワークに侵入した攻撃者は、標的ネットワークにアクセス可能な状態を維持するために、悪意のあるソースコードを継続的に書き換え、検出を回避するなどの巧妙な回避策を駆使する。APT攻撃を実行するサイバー犯罪組織は、標的となるシステムやソフトウェアに侵入し続けるために、専任の管理者を配置する場合がある。
APT攻撃でよく使われる手口には、以下のようなものがある。
特定のユーザーを標的にしたフィッシング詐欺をスピアフィッシングと呼ぶ。攻撃者はスピアフィッシングメールを使用して、標的のユーザーに個人情報を漏えいさせたり、悪意のあるコードを実行するための有害なリンクをクリックさせたりする。これらのメールは本物らしく見えるように書かれており、標的のユーザーに合わせた内容になっている。
最近発見されたもののまだパッチが適用されていないソフトウェアやハードウェアのゼロデイ脆弱(ぜいじゃく)性を利用した攻撃をゼロデイ攻撃という。攻撃者はゼロデイ脆弱性を悪用することで、標的にしたシステムに不正アクセスができるようになる。
水飲み場型攻撃は、標的のユーザーがよく利用するWebサイトを改ざんし、ユーザーの端末をマルウェアに感染させる攻撃を指す。
サプライチェーン攻撃は、標的となる組織と取引する、セキュリティレベルの低い関連企業や子会社を標的にする。標的となる組織の関連会社のネットワークに侵入した攻撃者は、そのネットワークを経由して標的となる組織のシステムに侵入する。
標的となるシステムにログインするための認証情報を入手するために、攻撃者はさまざまな手法を利用する。具体的にはユーザーのキーボードでの入力内容を不正に監視するキーロギングや、データ分析技術でパスワードを特定するパスワードクラッキング、フィッシングなどの手法が挙げられる。攻撃者はこうして盗み取ったIDやパスワードといった認証情報を使い、機密情報にアクセスする。
サイバー攻撃を制御するC&Cサーバは、侵害した企業ネットワークに継続的にコマンドを送信する。これにより攻撃者は侵害されたネットワークを制御し、ハッキングされたシステムからデータを流出させることができる。
組織のセキュリティ対策システムに発見されるのを避けるため、APT攻撃者はしばしば、実際に組織で使われているツールや難読化されたコード、解析防止策を使用して、その活動を隠す。
標的型攻撃やAPT攻撃の動機はさまざまだ。例えば国家をスポンサーとする攻撃者は、特定の産業で競争の優位性を得るために、知的財産(IP)や機密データを盗み取る。電力会社や通信会社といったインフラ会社、ソーシャルメディア、報道機関、金融機関、政府機関などが狙われる傾向にある。
APT攻撃の有無は特定が難しい。しかしセキュリティツールを利用すれば、データが盗難に遭うことは検知できる。組織からデータが流出することが、自組織のネットワークが攻撃を受けていることを知る唯一の手掛かりになる場合がある。ネットワークがAPT攻撃の標的になっていないかどうかを確認するにはまず、送信データの異常を検出することに重点を置くとよい。
APTを回避したり軽減したりするには、セキュリティチームは包括的なセキュリティ戦略を策定する必要がある。APTに対する主なセキュリティ対策には、以下のようなものがある。
自組織で利用するインフラの脆弱性にできるだけ早くパッチを当てることは、攻撃者が既知の弱点を悪用してゼロデイ攻撃を実行するのを防ぐのに役立つ。
従業員が社外から社内システムにリモートアクセスする際は、暗号化を使って通信を保護する。攻撃者がこれらの通信を悪用するのを阻止して、社内システムへの不正アクセスを防ぐ。
受信メールのフィルタリングは、スパムメールやフィッシング攻撃を防ぐ重要なステップとなる。
セキュリティインシデントが発生したらすぐにログを取ることで、取得したログを基にセキュリティポリシーを改善できる。
企業はバックドアの設置や機密データの外部への持ち出しを抑止するために、ネットワークで送受信されるデータの種類を監視する必要がある。
ネットワークのエンドポイントやエッジにWAFを導入して、自組織が運用するWebサーバやWebアプリケーションを侵入から守る。
企業のIT部門は、進化する巧妙なサイバー脅威からデータとネットワークを守るために、常に警戒を怠ってはならない。