カード業者じゃなくてもセキュリティに効く? 一般企業にとってのPCI DSSシステム導入担当者のためのPCI DSS【前編】

米国で導入企業が急増しているPCI DSS。その要件は、カード情報を扱わない企業にとってもセキュリティ強化の実効果が見込めるという。本特集ではPCI DSSを知るための基礎と企業がすぐに適用できる方法について紹介していく。

2009年05月21日 08時00分 公開
[山崎文明,ネットワンシステムズ]

 実践的なセキュリティ基準として最近よく耳にする「PCI DSS」とは、どのようなものだろうか。PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)とは、5大国際カードブランド(Visa International、MasterCard Worldwide、American Express、Discover Financial Services、JCB International)が2004年に共同で作成したカード会員データの漏えい防止を目的とした情報セキュリティ対策の実装要求基準である。2006年にPCIセキュリティ標準協議会(PCI SSC:PCI Security Standards Council)が設立されてから米国を中心に急速に普及している事実上の国際標準となっている。現在は、このPCI SSCという団体が基準の策定や改良、普及・導入支援を実施している。

 一方、PCI DSSの普及促進策は、それぞれの国際カードブランドが独自に実施することになっており、それぞれ固有の普及プログラム名が付けられている。例えばVISAの場合は、「Account Information Security」、Master Cardの場合は、「Site Data Protection」と呼んでいる。内容も各社各様で、PCI DSSに準拠しなかった場合の罰金制度などにもばらつきがあるのが現状だ。

図1 PCI DSSと国際カードブランド各社の普及プログラム

 ここでいうカード会員データとは、クレジットカード番号と有効期限、アルファベット表記された会員氏名、サービスコードを指す。このうち、クレジットカード番号と有効期限、アルファベット表記された会員氏名の3つの情報が入手できればインターネットの通販サイトなどで、カードの所有者でなくとも買い物ができることはご存じだろう。PCI DSSは、カード会員データの漏えいに伴うクレジットカードの不正使用による莫大な被害を減少させることを目的に定められた情報セキュリティ対策の実装要求基準なのである。従って、制定の背景に大量のクレジット会員データの相次ぐ漏えい事件があることは言うまでもない。

 この点について、PCI DSSが対象とするカード会員データを機密情報と読み替えればカード決済にかかわらない一般企業にも応用できると解説する人もいるが、カード会員データは本来機密情報ではない。カード会員データは、国際カードブランド、カード発行会社、カード決済利用店舗(加盟店)を開拓するアクワイアラ(加盟店管理業者)、カード決済を受け付ける加盟店とそれぞれのコンピュータ処理にかかわるサービスプロバイダーなど多数の事業者間で頻繁に流通する情報であり、機密情報とは性質を異にする「要保護情報」である。このことは、PCI DSSの個々の要求事項を正確に理解する上で重要な概念の1つだ。同時に、異なる事業者間で頻繁に流通する情報を守るためにデータ処理に関係するすべての事業者に求められる最低限のセキュリティ水準(ベースラインセキュリティ)を示すことの困難さにもつながっている。

データセキュリティモデル構築の必要性

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 パロアルトネットワークス株式会社

セキュリティ運用を最適化し、SOCの負担を軽減する「SOAR」とは?

サイバー攻撃が巧妙化し、セキュリティチームとSOCは常に厳戒態勢を取り続けている。さらにデジタルフットプリントの拡大に伴い、セキュリティデータが絶え間なく往来する事態が生じている。このような状況に対応するには、SOARが有効だ。

製品資料 パロアルトネットワークス株式会社

現在のSOCが抱える課題を解決、AI主導のセキュリティ運用基盤の実力とは?

最新のサイバー攻撃に即座に対応するためには、SOCを従来の在り方から変革することが重要になる。しかし、何をすればよいのか分からないという組織も多い。そこで本資料では、現在のSOCが抱えている5つの課題とその解決策を紹介する。

市場調査・トレンド パロアルトネットワークス株式会社

セキュリティの自動化はどこから始める? SecOpsチームを楽にする正しい進め方

高度化するサイバー脅威に効率的に対処するには、セキュリティの自動化が欠かせない。だが自動化の効果を高めるには、使用ツールの確認、ワークフローの分析などを行った上で、正しいステップを踏む必要がある。その進め方を解説する。

製品レビュー ゼットスケーラー株式会社

AIで脆弱性対策はどう変わる? セキュリティ運用や意思決定に与える影響力とは

脆弱性対策は作業量や難易度を予測しづらく、限られたリソースで対応するのが難しい。さらに、単体の深刻度評価のみとなる一般的なセキュリティ監査ツールでは、包括的な分析は容易ではない。これらの課題を、AIはどう解決するのか。

製品レビュー AvePoint Japan株式会社

Microsoft 365ユーザー必見:情報漏えいの危険性が高い5つのヒヤリハットとは?

情報漏えいを防ぐためには、重大なインシデントになる前のヒヤリハットをいかに防ぐかが重要になる。そこで本資料では、Microsoft 365を利用している組織に向けて、情報漏えいの危険性が高い5つのヒヤリハットを紹介する。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...