米Microsoftの稼ぎ頭である「Microsoft Office」の最新版を巡って同社は難しい判断を迫られている。競合するiOSやAndroid向けの「Office 2013」を提供するかどうかだ。
本連載ではIT業界に大きな影響力を持つ米Microsoftの2012年における注目すべき展開や興味深い出来事をピックアップする(前編記事:「Office 365」に相次ぐ障害、ユーザーの信頼をどうつかむか、中編記事:「Surface Phone」は登場するか、問われるMicrosoftのモバイル戦略)。
米Microsoftはこの数カ月、「Windows 8」ベースのタブレットやスマートフォンの優位性として「Microsoft Office 2013」を利用できることをしきりにアピールしてきたが、2012年10月に出荷されたこれらの製品にはOffice 2013は入っておらず、プレビュー版が含まれていただけだ。Microsoftは大口ユーザーには正式版を提供できるようになっていると言っているが、それ以外のユーザーは待たされるもようだ。
もちろんこれは、Microsoftが危険な道を歩いていることを意味する。Surfaceタブレット用のOffice 2013だけでなく、AppleとGoogleのベストセラー端末向けのバージョンのリリースが遅れれば遅れるほど、Microsoftにとって稼ぎ頭となってきた製品ファミリーの資産価値が損なわれる可能性が高まるのだ。
2012年11月にスティーブ・シノフスキー氏が突然Microsoftを辞めるという発表があった数時間後に、「辞めるべきだったのは、そっちのスティーブではない」というような空気がSNSに流れた。シノフスキー氏はそれまでの10年間の大半、Microsoftの最大の収益源である2つの製品ファミリー(OfficeとWindows)を統括する厳格なリーダーを務めた。
同氏の社内での人気は高かったとはいえず、もう1人のスティーブ(バルマー氏)を含む同社幹部との折り合いも悪かったが、(Windows Vistaの大失敗後の)「Windows 7」に加え、Windows 8と「Windows Server 2012」をスケジュール通りにリリースした。後者の2つは、Microsoftの長期的な将来のOSの技術的方向性を決定するという重要な戦略的意味を持った製品である。
シノフスキー氏の後任となったジュリー・ラーソングリーン氏は、同社でソフトウェア/ハードウェアの各種プロジェクトの責任者を務めた人物で、Windows 7およびWindows 8のユーザーインタフェースデザインの管理を担当したこともある。この人事は、ハードウェアとソフトウェアの開発の迅速化を狙ったものといわれており、早ければ2013年中にもその成果が現れるかもしれない。
「辞めるべきだったのは、そっちのスティーブではない」という批判は日増しに高まっている。スティーブ・バルマー氏がMicrosoftの日常業務を引き継いでからこの数年間、同社は数々の企業買収を実施したものの、収益への貢献と技術的な優位性確保のいずれにおいても、大した成果を出していない。失敗例としては、米Skypeの買収(85億ドル)や米aQuantiveの買収(65億ドル)などが記憶に新しい。
バルマー氏はモバイル分野とソーシャルメディア分野でも大きなチャンスを見逃し、AppleとGoogleに大きなリードを許してしまった。同氏はイノベーションに対して守りの姿勢に入り、Microsoftの数十年来の最大ヒット製品(WindowsとOffice)に何十億ドルもの資金を注ぎ込んだ。
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