企業はこれまでセキュリティなどを理由にSkypeの採用に二の足を踏んできたが、MicrosoftがSkypeを買収したことにより、その状況は劇的に変化しそうだ。
Skypeはこれまで、“コンシューマー専用”という世間のイメージを変えようと努め、エンタープライズ分野に足掛かりを築いてきた。一方、ユニファイドコミュニケーション(UC)の専門家は受け入れに二の足を踏み、エンタープライズSkypeの採用を避けるべき理由として、品質、安定性、セキュリティ、サポートなどの不安を常に口にしてきた(参考:モバイルワーカーのSkype利用は是か非か)。しかしこの状況は、Microsoftが85億ドルでSkypeを買収したことにより、劇的に変化しそうだ。
これまでは懐疑的だった企業も、エンタープライズUCにおけるMicrosoftの影響力のおかげで、インターネットVoIP/ビデオ会議ツール提供企業としてのSkypeにあらためて目を向けている。
アシシュ・クドシア氏は、インドにいる両親との音声通話やテレビ電話のためにSkypeを使うことにためらいはない。しかしビジュアルプロジェクタメーカーChristie Digital SystemsのグローバルITディレクターという立場では、ChristieでSkypeをサポートしてほしいというエンドユーザーからの要望に抵抗してきた。AT&T、AMC Theaters、Pixar Animation Studios、Sony Pictures Studios、そしてMicrosoftなどの大手を顧客に持つ同社のビデオ品質基準は極めて高い。
「真剣に考えてほしいという要望は数えきれないほど来ていた。拒みたくはなかったが、ビジネス用にはCisco SystemsのWebExがあり、われわれはずっと前からWebEx(参考:強固なセキュリティとモビリティを両立させるWeb会議システムの雄「WebEx」)を広範に使ってきた。(出張中に個人的に使いたいという)要望のためにWebExを放り出すことはできない。これはビジネスツールであり、『理解はできますが、(Skypeに)賭けることはできません』という立場だった」とクドシア氏は打ち明ける。
結果として同氏は、ニーズに応えられる別のデスクトップビデオ会議製品を検討していた。しかしレガシー製品のMicrosoft Office Communications Server(OCS)をMicrosoft Lync Server 2010にアップグレードする準備をしていた矢先、MicrosoftとSkypeが合併するかもしれないとのニュースが流れ、クドシア氏のロードマップに待ったがかかった。
「Skypeに対抗できるものを(検討していた)が、MicrosoftがSkypeをどうするか見極めたいと思い、当面は導入を見送ることにした。Microsoftの計画を見極めるために、まだ6〜9カ月待つことはできる。Skypeは間違いなく真剣に考えるべき存在へと進化してきたと思う」(クドシア氏)
Microsoftはまだ、SkypeとLyncの関係がどうなるのかについて詳細をほとんど明らかにしていないが、Microsoftのスティーブ・バルマーCEOとSkypeのトニー・ベイツCEOは、LyncがSkypeと連係できるようになることを示唆している。
Lyncを通じて世界数百万のSkypeユーザーと直接接続できれば、会社をまたいだデスクトップビデオ会議で苦労してきたUCの専門家に歓迎されるだろうと話すのは、Nemertes Researchの副社長兼サービスディレクター、アーウィン・ラザー氏。コンタクトセンターにとってはさらに魅力的になると指摘し、次のように語った。
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