モノのインターネット時代の世界はこうなるモノが支配するインターネット

数年以内にインターネットは、人ではなくマシンとセンサーが支配する世界になる。

2013年10月09日 08時00分 公開
[Bill Goodwin,Computer Weekly]
Computer Weekly

 ITメーカーの米HPは、2020年までに、Webを介してデータを送信するセンサーが1兆個近くになると予想している。車、建物、自動販売機、心拍数モニターなどから、状態が定期的に他の機器に報告される世界がすぐそこまで来ている。

 その結果、空前の規模のデータが生み出され、それらを保存、分析、評価する必要がある。いわゆる「モノのインターネット」の伸展は、社会的には莫大なメリットと、これを活用できる企業にとっては大きな利益をもたらす可能性を開いた。

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 しかし、ネット上を流れる個人データの増加に伴い、マシンツーマシン(M2M)通信が個人のプライバシーについての懸念も高まっている。英本誌のCW500 Clubの最近の会合において、HPのソフトウェア市場開発担当シニアマネジャーのダン・ウッド氏は、「悪意を持つ人間の手に渡れば、これは極めて有用な情報になる。情報侵害が起きるだろう」と話す。

 HPの予想では、インターネットに接続するセンサーの増加により、7年以内に全世界のデータ量は50倍になるという。それだけの量のデータを扱うということは、現在のITシステムとセキュリティシステムの力が極限まで試されることになる。情報量は、人間が到底追い付くことができないペースで増大している。

 「われわれ人間は、このデータから余すところなく洞察を引き出すことはできないため、機械の力を借りる必要がある。これに対応できるインテリジェントなソフトウェアが必要だ」とウッド氏は言う。

 移動体通信事業者は、モノのインターネットを実現するモバイルネットワークテクノロジーに巨額の投資をしている。モバイル通信事業者の英EE(旧Everything Everywhere)は、次世代の移動通信システム「4G」が、モノのインターネットを促進すると考えている。

 4Gがあれば、センサーを使ったインターネットの高速通信を実現する無線スペクトラムを確保できると話すのは、EEのホールセールおよびM2M担当副社長、マーク・オーバートン氏だ。「データはとにかくスペクトラムを消費する。モバイル通信対応のデバイス市場に参入するなら、大量のスペクトラムが必要だ」

リテール市場に見る「モノのインターネット」

 真っ先にモノのインターネットの存在を実感できるようになる場所は、繁華街になるだろう。例えば、通りすがりの買い物客に合わせて表示を調整する対話型スクリーンがショップに設置されるようになる。

 英John Lewis(英国の百貨店チェーン)などの小売企業は、決済のための機器を取り付けたiPadを販売員に持たせ、買い物客はレジに行かなくても会計を済ませられる。また、目的の商品の在庫がない場合は、販売員がその場でインターネットを使って取り寄せの注文を出すことができる。

 また、オーバートン氏の話では、北米ではスターバックスに行くたびに携帯電話でお得情報を受け取るサービスに400万人が登録しているという。「スターバックスの店に入ったら、コーヒーが即用意され、カウンターに着くまでには出来上がっているように設定することもできる」という。

 その他の進行中のプロジェクトには、スマートグリッドを使ってインタラクティブな広告を表示する自動販売機や、運転者の速度や位置を監視し、その内容に応じて自動車保険料を安くする機器、サプライチェーン内を流通する商品数を半分に削減できる可能性があるインテリジェントタグなどがある。

スマートグリッドの進展

 モノのインターネットの最も有名な例の1つが、スマートグリッドだ。今後5年間で、英国では5000万個の電力・ガス用のスマートメーターが設置される予定だ(訳注)。このメーターには、電力またはガス会社がリアルタイムで使用量を監視でき、一般の利用者や企業ユーザーの省エネの支援につながるセンサーが取り付けられる。

訳注:英国におけるスマートメーターの設置については、本誌「9月25日号:クラウド戦争 新興勢力 vs. 従来型ベンダー」でも紹介している。

 このプロジェクトは、光熱費の値上げの影響を相殺するだけでなく、英国の老朽化している配電インフラに掛かる負荷の軽減に必須だと見なされている。

 英国のスマートグリッドを促進するために設立された業界横断団体SmartGrid GBのエグゼクティブディレクター ボブ・マックナマラ氏は、CW500 Clubの会合において次のように語っている。「英国の多くの通信事業者の通信設備は地中に施設されてから50年がたつが、施設した当時の設備寿命は40年しかない」

 その上、電気自動車の動力として莫大な電力需要が発生する可能性があることから、電力会社は、スマートメーターで需要を制御できるというビジネスケースに魅力を感じている。例えば、英電力供給会社のElectricity North Westは、マンチェスターの住民がガソリン自動車から電気自動車に切り替えた場合、電力需要は2倍になると試算している。「それは、老朽化している設備資産には大きな影響を及ぼす」とマックナマラ氏はコメントしている。

 スマートメーターの経済的なメリットは、非常に大きいといわれている。SmartGrid GBが2012年に英Ernst & Youngに委託した調査によると、2012年から2050年にかけて190億ポンドを削減できるという。スマートメーターテクノロジーへの投資は、スマートメーターの輸出国として英国を有利な立場に着かせる可能性もあると、Ernst & Youngでは結論付けている。

 だが、マックナマラ氏によると、克服しなければならない技術的な大きな課題もあるという。スマートメーターの技術標準はまだ合意に達しておらず、利用者の自宅に設置される関連テクノロジーの規格確立に至るにはやるべきことが山積している。

 しかし何といっても最大の課題は、消費者の心を捕らえることだ。電力会社の過去の強引な販売方法は、消費者の信用を失い、消費者に警戒心を抱かせている。各戸を訪問して、短期間では節約効果が得られないスマートメーターのメリットを説明して歩くことは簡単ではないだろうとマックナマラ氏は話す。

スマートシティ

 スマートメーターもスマートグリッドの一例だが、ロンドン交通局(TfL)のプログラムマネジャー、ニック・ブロムリー氏は、それよりもはるかに大きなスケールで、センサーを使ってインテリジェントな都市を造ることを考えている。

続きはComputer Weekly日本語版 2013年10月9日号にて

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