女性がIT業界で成功する秘訣は「ありのままで」IT技術職で男女を隔てるものについて

IT技術者のキャリアにおいて男性と女性を隔てるものとは何か。米HPの女性幹部社員に聞いた。

2014年07月30日 08時00分 公開
[Gina Narcisi,TechTarget]

 IT技術職における性差は仕方がないことだという一言で片付ける人もいる。男性と女性のメカニズムは異なる。男性は「論理的で分析力がある」で、女性は「直感的で創造力がある」というのが彼らの主張だ。その主張が仮に正しいとしても、性別が職業の選択に影響すべきではない。

IT業界で働く上で「女であること」は問題になるのか?

 米Hewlett-Packard(HP)で「HP Cloud Services」の製品マーケティング部長とクラウドエバンジェリストを兼任するマーガレット・ドーソン氏は、2014年春に開催された情報テクノロジーの展示会「Interop」において、IT業界に携わる女性のためのパネルディスカッションのパネリストとして、この問題について語った。筆者は最近、女性がIT技術職に就くことを奨励する幾つかの新しいキャンペーンについて記事を執筆しており、そんな中でドーソン氏と話す機会があった。あいにくそのときに執筆していた記事にはそこでの会話は掲載できなかったが、そのまま「お蔵入り」にするのはあまりにももったいない。そこで本稿では、IT技術職における男女差に関する同氏の考えを一問一答の形式で紹介する。

―― ITにおける性差は人格形成期までさかのぼります。私が高校生のとき、コンピュータ科学の授業を取っていた女子生徒は1人しかいませんでしたが、ドーソンさんの学生時代はどうでしたか。現時点でIT業界は十分な進歩を遂げているとお考えですか。

ドーソン氏 私のときもほとんど同じでしたね。残念ながらあまり進歩はしていないみたいです。私は大学でコンピュータ科学の講義を受講しましたが、研究室では自分が唯一の女子学生だったと記憶しています。コンピュータ科学が好きな理由を尋ねられたことはなく、「この講義をどうして受講しているのか」という目で見られていました。女性は「女性に向いていない」と一般に考えられているものから遠ざけられる傾向があります。今現在学校に通っている自分の子どもたちを見ていてもそう感じることがあります。親の中には「友達とたくさんの時間を過ごしてほしいから、娘はGifted Program (編注:学校の推薦により特殊な才能を持つ児童にはふさわしい教育を提供するという米国の教育プログラム)に参加させない」というようなことを悪意なく真面目にいう人もいます。親は子どもの幼少期から、子どもにとって最もいいことは何かということについて、さまざまな決断を下します。でも、それが結果的に、子どもの選択肢を狭めていることにもなっていると思うのです。

―― 大学でITを専攻したかどうかにかかわらず、女性がIT業界に引き付けられることはありますが、男性も含め、多くの人がIT技術職に就くには「コンピュータおたく」にならなければならないと思い込んでいる節があります。そのことについては、どう思いますか。

ドーソン氏 そのような思い込みがあることは否定できません。しかし、IT業界への道は1つではありません。私は自動車業界でマーケティングに携わり、その後、ジャーナリストになって、テクノロジーについて学び始めました。テクノロジーに強い関心があり、テクノロジーの学習に向いていることに気付いたのは、ジャーナリストに転向してからです。「自分はコンピュータ科学の学位を持っていない」「コードが書けない」などと思いがちですが、それが全てではなく、IT業界においても、ビジネスや市場での優位性を獲得するための知識は求められています。IT企業が成功を収めるためには、さまざまな個性を持った従業員が必要です。そのため、コードが書けなくても、多くの方法でIT業界に携わることはできるのです。

置かれた場所で咲くために

―― なぜ女性は自分たちがIT技術職に”適応できない”と決め付けてしまうのでしょうか。

ドーソン氏 「適応」というのは少し違うかもしれません。個人的な経験でいえば、今まで勤めたIT企業では性別の違いによる衝突は見られませんでした。とはいえ、リーダー層は才能のある女性(女性だけでなく男性もですが)を見つけ、彼女たちが壁を乗り越えられるよう支援することに努める必要はあるでしょう。誰もがリーダーになるというわけではありませんが、新しい仕事に飛び込み、その才能を開花させている女性もいるのです。もちろん、それは女性に限ったことではありませんが、特に女性に目を向けなくてはならないと思うことはあります。女性たちの中には、スキルがないわけではないのに単純に自分がステップアップできるという自信や信念が欠けている人もいるからです。女性たちは卑屈な気持ちを捨てなくてはいけません。

―― IT業界のプロフェッショナルとして、他に男性と女性を隔てていると考えているものがあれば、教えてください。

ドーソン氏 男性と女性を隔てている点の1つは、大きなリスクを取ろうとする意思があるかどうかです。男女差解消の鍵は、女性がありのままの自分でいることを肯定することにあるように思われます。テレビゲームやテクノロジーが好きな女性がいたら、それは受け入れるべきなのです。そんな当たり前のことすらできていないのが現状です。女性が持つ創造力は、IT技術職においては特に重要であり、女性には自分の知識や能力を提供することが求められているのです。



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