「E-JAWSカンファレンス」リポート
AWSが丸紅グループにもたらしたものは「足かせのない自由なIT投資」(1/2 ページ)
総合商社の丸紅は2013年秋から、2つのプライベートクラウドをAWSへ順次移行している。得られたのはDRの実現や運用自動化の他、“勝ち組”AWSならではのメリットだ。
2015年は国内においてもユーザー企業のパブリッククラウド導入が一段と進んだ1年だったといえる。中でもひときわ大きな存在感を示していたのは、やはり世界最大級のクラウドサービスである「Amazon Web Services」(AWS)だ。既に、NTTドコモ、積水化学工業、ヤマハ発動機、ソニー銀行など、業界におけるトップランナー的な企業が続々とAWSの導入事例を発表している。そして、これらの企業によって構成されるユーザーグループが「Enterprise JAWS-UG」(E-JAWS)だ。現に50社を超える国内企業が参加しており、互いに事例やノウハウを共有しながらユーザー主導のクラウド導入を進めることを目的にしている。
このE-JAWSとアマゾン ウェブ サービス ジャパンが主催者となった「E-JAWSカンファレンス」が2015年11月24日に東京・目黒のアマゾン本社で行われた。これまでクローズドなユーザーグループとして活動してきたE-JAWSだが、「今後は国内企業のクラウド導入を推進し、E-JAWS自体が成長していくためにも、少しずつ外部に向かって情報発信をしていく」(積水化学工業 コーポレート情報システムグループ部長 原 和哉氏)と、新たな方針を明言している。本カンファレンスもその活動の一環として企画されたもので、100人近い参加者が集まった。本稿ではその講演の中から「丸紅のクラウド戦略」と題された事例を紹介したい。
クラウド移行へと決断させた3つの要因
加藤淳一氏
日本を代表する総合商社の丸紅は、国内10カ所の事業所に加え、世界64カ国に現地法人を持つ巨大企業だ。従業員数は4000人を超えており、関連する子会社などを含めた丸紅グループ全体の規模は450社、従業員数は約4万人に上る。
これほどの規模のグループ企業になれば、IT環境を一元管理することは至難の業となる。現に丸紅も「事業会社のIT環境に関してはほぼ放置状態だった」(丸紅ITソリューションズ M-IGS PMO室長 加藤淳一氏)という。グループとして統合されたIT環境が必要なことは間違いなかったが、どこから手を付ければよいのか分からないほど個別化、複雑化は進行していた。
だが変わるべきタイミングは必然的にやってきた。加藤氏は「プライベートクラウドの更新と災害対策(DR)、それに伴う管理体制の見直し、この3つがクラウド移行への大きなきっかけとなった」と振り返る。
まずはプライベートクラウドの更新について。丸紅では2008年から2つのプライベートクラウドを運用しており、段階的に150台のサーバを仮想環境に集約してきた。この2つの更新時期が同時に到来したのだが、コスト的にも作業的にもかなり大規模なものとなるのは確実で、「このまま更新すれば、せっかく集約した環境が一気に決壊するような気がした」と加藤氏は当時の心境を語っている。この更新時期の到来をきっかけに、丸紅はグループとしてパブリッククラウドを導入することを検討し始めたという。
AWSを選ぶ2つ目のきっかけは2011年3月11日に発生した東日本大震災(3.11)だった。3.11までの丸紅は、DRについて「何も考えていないといっていい状態だった」(加藤氏)という。そしてあの地震を経験した多くの国内企業と同様に“想定外”への対応を決断、大阪にDRサイトを構築している。だが会計や人事など一部のシステムを移行しても、非常時にそれらが連係して稼働できなければDRの意味がない。「DRのために移行すべきシステムは何か、その線引きが難しかった。結局、面倒だからとほぼ全てのシステムを移そうとしたら、移行コストが2倍どころではなくなった」(加藤氏)
そしてDRと同様、かつての丸紅がまるで手を付けていなかったのがグループ全体の標準となるガバナンスの策定だった。3.11以前、丸紅グループの各社はそれぞれでITシステムを維持・管理しており、主流は物理サーバだった。だが本社でさえ何も考えてこなかったDRのルールをグループ企業が制定しているはずもなく、ましてやDRを行うべきシステムの線引きなども存在しない状態だった。そこで3.11を契機にグループITガバナンスルールを制定、DRを行うべきシステムの線引きをグループとして行っている。「3.11移行、グループ企業にとってもDRは必須となったが、それまでのように各社が独自でDRを実施すれば無駄が多くなる。そこでグループ共通のガバナンスの基盤が必要と判断した。基盤があれば、各グループ企業はその上で個別の対策を取ればいい。ただし基盤となるクラウドは本社の方でまめにメンテナンスを行い、各グループ企業の対策を巻き取っていけるようにする」と加藤氏。ここでオンプレミスではなくクラウドを選んだのは、
- アプリケーションを手に入れる必要がない
- DRがしやすい
- コストが下がる
という理由からである。2011年当時、こうした条件に耐え得るパブリッククラウドはAWSだけだった。
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