EMC Forum 2015リポート
“ネガキャン”にも負けない 日通がプライベートからパブリッククラウドへ移行するまで(1/3 ページ)
近年、プライベートクラウドからパブリッククラウドへ移行する企業が出てきている。中でも日本通運はAWSとIIJのマルチ体制を取った点がユニークだ。移行プロセスも緻密に計画。注目プロジェクトを担当者が語った。
丸紅、ローソン、日本通運……、これらは近年、共通して自社のITインフラをプライベートクラウドからパブリッククラウドへと切り替えた企業だ。当初は、プライベートクラウドを導入したことによって、システムごとに個別に構築されていたITインフラのリソースを集約し、迅速に払い出しができるようになった。とはいえ、ハードウェアの保守や更改作業からは逃れられない。当然、リソースプールの構築や管理業務もユーザー企業負担だった。
一方でパブリッククラウドであれば、ITインフラの運用負荷はぐっと下がる。さらにコスト的なメリットや柔軟な拡張が見込め、安定的に運用できる。そうであれば、思い切ってパブリッククラウドへ移行してしまおう――こうした判断を行う企業が、Web系以外のユーザー企業からも出てきている。
日本通運の情報システム基盤全体を担う日通情報システムでも同様の判断でパブリッククラウドへの移行を行った。本稿では、2015年10月に行われたEMCフォーラムの講演を基に、日通情報システムのパブリッククラウド移行をリポートする。
プライベートクラウドの限界
日通情報システムは、日本通運のIT会社として2004年に創設された。設立当時は日本通運のITヘルプデスク業務が主だったが、2011年に日本通運のITインフラ全体を預かる方針に変わり、現在はアプリケーションの運用管理に関しても順次、業務移管を受けている。
現在、ITインフラをパブリッククラウドへと移行している日通情報システムだが、かつてはホストコンピュータを運用する時代もあった。さかのぼること2000年台初頭、日本では脱ホストコンピュータの機運が湧き起こり、多くの企業がITシステムのダウンサイジングを行っていた。日通もダウンサイジングのプロセスを経て、2008年当時はシステムを業務単位で構築・運用する体制を取っていた。結果、個別に最適化されたITインフラがデータセンターに多数存在することとなった。
日通情報システムの下田 よしの氏は、個別最適化による課題を3点挙げた。「1つは高コスト体制であること。次に、システムの要件定義を経てインフラを調達するため構築期間が長期化すること。さらに、ベンダーロックインという一番大きな問題を抱えることとなった」と話す。そこで日通情報システムが取り組んだのが、サーバ仮想化によるITインフラ統合だった。
「2009年ごろになり、VMwareのサーバ仮想化技術が企業レベルでも使い物になるといわれる時代となった。日通情報システムでもVMwareを使い、ITインフラを統合した」(下田氏)
個別に構築・運用してきたITインフラは、いわゆるプライベートクラウドとして集約。システム単位で構築運用していたITインフラには、専任の運用チームを作って集中管理をした。これによって上記の個別最適化の課題は解消できたという。かかった期間は足かけ5年、2009年から2013年で約100システムを移行した。
プライベートクラウドの全体概要が図1だ。左側に本番サイト、右側に災害対策サイトが記載されている。データセンターに何かしらの障害が起きた際には「VMware SRM」で自動切り替えをする設計を構築した。最終的に、運用していたサーバ台数は仮想マシンで2000台強、プライマリサイトの物理サーバで220台という、大規模なプライベートクラウド環境となった。
下田氏はプライベートクラウドで得られたメリットを2つ挙げた。1つは、インフラ調達の短期化だ。仮想化技術によって、仮想マシンの払い出しが簡単になり、マシン調達にかかる期間は3カ月から10営業日にまで短縮した。もう1つは、コスト削減だ。従来のインフラよりも30%のコストを削減することができた。「プライベートクラウドに集約したことで、コスト削減のみならず災害対策環境も作れるようになった。これは大きなメリット」とも話す。
プライベートクラウドによって多数のメリットが得られた一方で課題も見えた。「仮想マシンが増えたことで運用工数が増加し、リソースプールの構築管理業務も負荷が増えた。また、専任の運用チームには、あらゆるアプリケーション担当者から連絡がくるため業務が集中することになった」と、運用管理における負荷増大を指摘した。こうしたハードウェアを含むインフラ課題を解決するため、次期インフラ選定を開始した。
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