何でも印刷したがる“プリンタ依存”で深刻化するセキュリティ問題調査から読み解く「プリンタセキュリティ」の今【前編】

テレワークでオフィスのプリンタを利用しにくくなっても、印刷ニーズはすぐにはなくならない。むしろ“プリンタ依存”はさらに進む見込みだ。こうした中、企業はプリンタセキュリティの確保に苦労している。

2022年02月10日 08時15分 公開
[Cliff SaranTechTarget]

 テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワークの拡大に伴い、企業はプリンタのセキュリティリスクの増大とデータ漏えいの危機にさらされている――。調査会社Alumen Consulting(Quocircaの名称で事業展開)は、2022年1月に公開した調査レポート「Quocirca Print Security Landscape 2022」でそう警告する。

 調査対象となったのは、米国と欧州の企業に勤務する531人のIT意思決定者だ。調査においてQuocircaは、セキュリティ対策を実施しているかどうかなど、プリンタやネットワークといった印刷インフラの保護に関する質問をした。その結果、印刷インフラの分散によってリスクをはらむ場が広がったことが明らかになった。

テレワークでも“プリンタ依存” 深刻化するプリンタセキュリティ問題

 今回の調査では、印刷インフラのセキュリティ対策を包括的に実施していると回答した企業はほとんどなかった。対象者の68%が、調査時点から過去1年間に印刷関連のデータが漏えいしたと回答し、1件のデータ漏えいに伴うコストの平均額は約63万2000ポンドだった。

 Quocircaは、企業の印刷量が増加しており、従業員は日常業務でプリンタに依存し続けていると分析する。調査によると、対象企業の64%にとって印刷は「必要不可欠」または「非常に重要」だ。調査時点から1年間の印刷量について、調査対象者の44%が「オフィスでの印刷量が増える」、41%が「自宅での印刷量が増える」と予想した。

 調査対象者の53%が「プリンタのセキュリティ問題に対処するのが難しい」と回答した。調査対象者のCIO(最高情報責任者)のうち、そう答えたのは61%で、CISO(最高情報セキュリティ責任者)の44%よりも高い割合だった。

 「オフィスが完全に再開したときに、自社の印刷インフラは安全だと確信している」と答えた回答者は26%にとどまる。調査対象者の中で、プリンタの運用管理をベンダーに委任する「マネージドプリントサービス」の利用者のうち、同様の回答をしたのは37%だった。「プリンタのセキュリティ問題に対処するのが容易になった」と答えた割合も、マネージドプリントサービスの利用者の方が非利用者よりも高かった。

 Quocircaでリサーチディレクターを務めるルエラ・フェルナンデス氏は、急速に進んだデジタル化の裏で、企業が依然としてプリンタに依存していると指摘する。印刷する場が従業員の自宅に広がり、従業員が購入したプリンタが業務で利用されるようになったことで、データ漏えいやサイバー攻撃のリスクが増大したとフェルナンデス氏はみる。そうした背景から、企業がプリンタのセキュリティ問題に対処するのが難しくなった結果、大きなコストを伴う攻撃を受けるようになったと同氏は分析する。

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