英国のLloyds Banking Groupは、支店の利用頻度低下を理由に支店ネットワークを縮小する。コロナ禍の影響から、欧州全域でオンラインバンキングに注力する流れが加速しているが、顧客からは批判も挙がっている。
英国の労働組合Unite the Unionの公式Webサイトや各種報道によると、英国の銀行・保険グループ会社であるLloyds Banking Groupは、48支店を閉鎖することを2021年10月に明らかにした。支店の利用者数低下が主な理由だ。これに伴い約178人が人員整理の対象となり、同グループの支店数は1475軒になるとみられる。
ヨーロッパ全域で、銀行が支店を閉鎖し、オンラインバンキングなどのデジタルチャネルの利用を顧客に推奨する動きが見られる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)への対策として、一部地域ではロックダウン(都市封鎖)に突入し、企業は顧客対応業務を停止せざるを得ない状況に追い込まれた。その結果、デジタルチャネルへの移行が加速している。
「他のビジネス同様に、近年は人々が支店を利用する頻度が低下し、減少傾向が続いている」。そう語るのは、Lloyds Banking Groupのリテールディレクターを務めるビム・マル氏だ。
マル氏によると、Lloyds Banking Groupはデジタルチャネルと物理チャネルの適正なバランスを見極めているところだ。支店は顧客にサービスを提供する上で「欠かせない存在だ」と同氏は認める。ただし支店ネットワークの規模は「支店の利用者数に適した規模にする必要がある」と主張する。
従来型銀行と比べてわずかなコストで運営し、オンライン店舗しか持たない金融サービス会社が登場したことで競争は激化している。この状況に直面している従来型銀行は、冗長性の排除と支店の閉鎖によって運用コストの削減を図っている。一方でITスタッフの雇用や技術拠点の開設など、積極的なIT投資を進めている。
スマートフォンアプリケーションで金融サービスを提供するStarling Bankは、2020年11月の収支報告で黒字化達成を発表したことが話題になった。同社は銀行免許を取得して銀行サービスを提供するFinTech(金融とITの融合)企業である「チャレンジャーバンク」の一つだ。このようなチャレンジャーバンクの成功は一時的なものではない。大手銀行が社会的意義を維持するには、ITへの多額の投資が不可欠と言える。
Unite the Unionの事務局長を務めるシャロン・グラハム氏は、Lloyds Banking Groupの支店閉鎖に関する今回の発表を批判し、公式サイトに次の声明を載せた。
金融業界は企業の社会的責任を真剣に受け止め、顧客や従業員に対する義務を怠るような行為を止めなければなりません。銀行は支店の閉鎖を急ぐあまり、顧客や従業員を置き去りにし、収益性を高めるために顧客にキャッシュレス化を強いています。これは顧客や従業員よりも企業利益を優先している典型的な例です
グラハム氏は、銀行が支店を維持できるようにするための制度が必要だと主張する。「金融業界は、現金と銀行支店を利用する権利の保護に向けた法的責任を果たすべきだ」とUnite the Unionは考えている。「銀行の支店やATM(現金自動預払機)は、社会全体にとって欠かせない公共サービスだ」(同氏)
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