金融業界では、将来的に人員をAIに置き換える動きが始まると予想されている。一方でAIを行員のトレーニングに利用して人材の強化に取り組んでいる銀行もある。AIが職を奪うとは限らない。
スペインのCaixaBankは、行員のトレーニングプラットフォームの一部に人工知能(AI)を取り入れている。
CaixaBankが利用しているのはVirtaulaのトレーニングポータルだ。このポータルの最新バージョンはAIで行員のプロファイルを作成し、その行員のメリットになりそうなトレーニングを推論する。行員に提案を受け入れる気持ちがあれば、自然言語でコミュニケーションを取るチャットbotもコースを利用する上での助けとなる。
CaixaBankは、Virtaulaポータルを通じて言語、経営管理スキル、デジタルスキル、財務、リスク管理などのコースを提供している。その範囲は大学院博士課程から短期講座まで多岐にわたる。
CaixaBankによると、このシステムは徐々にその仕事を改善していくという。「ユーザーの体験に基づいてシステムが学習して改善するため、コースの提案も継続的に強化されていく」
Virtaulaポータルにより、規制に関する情報にもアクセスできる。財務部門の行員は全員、こうした規制情報を確認することが義務付けられている。
CaixaBankのAI利用は、銀行におけるデジタルトランスフォーメーションが、チャットbotを使った顧客対応や繰り返しの多い手作業のRPA(ロボティックプロセスオートメーション)化にとどまらないことを示す例の一つだ。AIは、人事部門が手作業では見つけられない洞察を探し出すことによって人材の向上に貢献している。
アナリストの最近の予測では、AIなどの技術によって全世界で金融サービスの労働者が大幅に削減される可能性が示されている。
金融サービスの経営コンサルタント会社Opimasのレポートによると、投資業界の金融企業は2017年にAI技術に15億ドル(約1647億円)を投じたという。その投資額は、2021年には28億ドル(約3075億円)になると予測されている。
Opimasはまた、2025年までに機械学習、認知分析などの技術が投資銀行業における23万人の職に取って代わるとしている。資産運用部門が最も大きな打撃を受け、9万人の労働者に取って代わるという。
CaixaBankのように人事部門でAIを使うとAIに対する行員の理解が促され、行員に取って代わることがAIの目的だという不安の克服に役立つ可能性がある。
人事部門でのもう一つの例として、シンガポールのDBS BankはAIを使って資産管理職の候補者を選別している。1カ月当たり40人時間を節約することが狙いだ。DBS Bankの「Jobs Intelligence Maestro」と呼ばれるプラットフォームは、履歴書を確認したり事前選別用の質問に対する回答を収集したり、心理テストを実施することで行員をサポートする。
このプラットフォームのおかげで、採用担当者は候補者を見つけて面接することに多くの時間を費やせる。また、自由になる時間でもっと価値のある作業に取り組むことも可能になる。候補者は、24時間いつでもこの採用プラットフォームとリアルタイムでやりとりできる。
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