WAVファイルにマルウェアを組み込んで拡散する手法が発見された。どのような仕組みのマルウェアなのか。そしてこのマルウェアからPCを守る方法とは何か。
Guardicore Labsによると、被害者のネットワークをクリプトマイナーに感染させる媒体としてWAV形式の音声ファイルが悪用され、インターネットに拡散されているという。
WAVファイル(またはWAVEファイル)はWindowsの他形式のファイルと同様、コンテナを使ってデータに手を加えず、多くの場合各単位を圧縮しないで音声データを格納する。MP3などの他の音声ファイルよりサイズが圧倒的に大きくなることが多いが、最適な音質が保たれるためプロのミュージシャンやプロデューサーに広く利用されている。
Guardicore Labsの研究者オフィール・ハーパズ氏とダニエル・ゴールドバーグ氏によると、ネットワークに感染したのはWAVファイル内に人気の高い暗号通貨「Monero」のクリプトマイナーを隠し、高度に難読化されたマルウェアだったという。
ハッカーは、2017年の「WannaCry」の大流行によってその名を広めた攻撃ツール「EternalBlue」を悪用することで、「Windows 7」PCにマルウェアを感染させて標的の企業での増殖を試みた。
2019年10月、標的企業の複数のWindows 7 PCがカーネルモードのエラーを示す「Blue Screen of Death」(BSoD、死のブルースクリーン)の犠牲になった。これをきっかけに、各企業はGuardicore Labsの支援を受けた。
これらのPCは、アナリストの役に立つカーネルメモリダンプを保存するように構成されていなかった。だが詳しい検査により、不審なデータにアクセスする長いコマンドラインが実行されていたことが1台のPCのレジストリキーで分かった。他の800台を超えるPC(被害を受けたネットワークのPCの半数)にも異常なデータが存在していた。
これは、Base64でエンコードされたPowerShellスクリプトの結果であることが判明した。スクリプトのタイトルは「An Unknown Malware」で、エンコード後でもデコード後でもオンラインで利用できることが分かった。
調査の結果、攻撃者はポート445でサブネットスキャンを実行し、悪意のあるペイロードを他のホストに拡散しようと試みたことが判明した。ネットワーク全体を水平方向に拡散するためにEternalBlueを使っていたことも分かった。
ハーパズ氏とゴールドバーグ氏は情報を公開したブログに次のように記している。「この発見によって、今後エンドポイントにあるPCの全てのSMB(Server Message Block)トラフィックをブロックすることが推奨される」
「当社はマルウェアペイロードをリバースエンジニアリングして、多層化された実行可能ファイルを検出した。このペイロードを実行すると、ペイロード自身のモジュールを次々と展開してその展開済みコードを各イテレーションで実行する」
「このマルウェアは、オープンソースのCPUマイナー『XMRig』をベースとするクリプトマイニングモジュールを含む。このモジュールはMoneroのマイニングに『CryptonightR』アルゴリズムを使用する。さらに、マルウェアはステガノグラフィーを利用して悪意のあるモジュールを無害そうなWAVファイルの内部に隠す。この手口は最近報告されたものだが、完全な攻撃フローの一部として発見されたのはこれが初めてだ」
Guardicore Labsはこの攻撃から修復するために、まずマルウェアを削除して悪意のあるプロセスを停止して、バイナリペイロードを含むレジストリキーを削除した。その結果、セキュリティ侵害を示す兆候は見られなくなった。
ハーパズ氏とゴールドバーグ氏は、類似の攻撃を調査して修復するための一連のステップを詳しく説明している。その説明の中で、WindowsおよびLinuxマシンから一元管理される堅牢(けんろう)なサーバへのログ転送を有効にしてログを保護すること、将来の分析に備えて完全なクラッシュダンプを保存するようシステムを構成すること、有益かもしれない証拠を破棄しないように、感染したPCを直ちにクリーンアップするのではなく隔離することを推奨している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
今や誰もが入手可能となったフィッシングツール。そこにAIの悪用が加わり、フィッシング攻撃はますます巧妙化している。本資料では、20億件以上のフィッシングトランザクションから、フィッシング攻撃の動向や防御方法を解説する。
セキュリティ対策チームの57%が人材不足の影響を受けているといわれる昨今、インシデントや脆弱性への対応の遅れが、多くの企業で問題視されている。その対策として有効なのが「自動化」だが、どのように採り入れればよいのだろうか。
年々増加する標的型攻撃メール。この対策として標的型攻撃メール訓練を実施している企業は多い。こうした訓練では一般に開封率で効果を測るが、実は開封率だけでは訓練の効果を十分に評価できない。評価となるポイントは報告率だ。
従業員の情報セキュリティ教育は、サイバー攻撃や人的ミスによる情報漏えいから自社を守るためにも必要不可欠な取り組みだ。新入社員の教育を想定し、伝えるべき内容や伝える際のポイントを解説する。
2024年の情報漏えい事故の傾向では、攻撃者による大規模攻撃の他、社員や業務委託先のミス・内部犯行によるケースも多く見られた。インシデント別の要因と対策とともに、今後特に重要になるセキュリティ意識向上のポイントを解説する。
数分でデータを人質に 進化するランサムウェアに有効な「第2世代EDR」とは (2025/3/4)
クラウドサービスの脆弱性をどう解消する? 安全な開発環境を構築するヒント (2025/3/4)
「複雑、高額、難しい」を変える中堅・中小向けSASEのメリットを解説 (2025/2/10)
「Box」に移行してもなくならない「お守り仕事」を根本から効率化するには? (2025/1/23)
これからのセキュリティ対策に必要な「防御側の優位性」、AIはどう実現する? (2025/1/22)
いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。
「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。
「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。