セキュリティ専門家は、Appleが公開した「緊急」の更新プログラムを評価している。Apple製品ユーザーに、どのような恩恵をもたらすのか。
2023年5月2日(米国時間)に、Appleが公開した更新プログラム「緊急セキュリティ対応」(Rapid Security Responses)。Appleは緊急セキュリティ対応の詳細情報を公開しておらず、一部のApple製品ユーザーの間には混乱が生じている。他方でセキュリティ専門家は、緊急セキュリティ対応に一定の評価を下している。それはなぜなのか。
Appleが緊急セキュリティ対応を配布した背景には、Apple製品への攻撃活動の活発化に関する指摘が影響している可能性がある。この指摘はトロント大学(University of Toronto)の研究機関Citizen Labによるものだ。Citizen Labによれば、イスラエルの監視製品ベンダーNSO Groupが開発したマルウェアによる攻撃活動が勢いづいている。
デバイス管理ツールベンダーJamf Softwareで戦略担当バイスプレジデントを務めるマイケル・コビントン氏は、緊急セキュリティ対応を「透明性を欠いていることは否めない」と評する。その一方で、「ユーザーに大きなメリットをもたらす」とも評価。「Appleは緊急セキュリティ対応を通じて、定期アップデートを待たずに、同社のOSに存在する脆弱(ぜいじゃく)性をいち早く修正しようとしている」とコビントン氏は説明する。これによりApple製品が脅威にさらされる期間が短くなり、攻撃のリスクを減らすことにつながるという。
コビントン氏は、「緊急セキュリティ対応の適用はApple製デバイスを保護する上で最も効果的な方法だ」と語る。緊急セキュリティ対応は自動的に適用される。「そのためApple製品ユーザーは、自身で作業をせずにセキュリティ強化の恩恵を受けることが可能だ」と同氏は言う。
一方で「緊急セキュリティ対応を適用できなかった」と苦情を寄せるApple製品ユーザーがいる。その一人が、セキュリティベンダーSophosでプリンシパルリサーチサイエンティストを務めるポール・ダックリン氏だ。ダックリン氏は緊急セキュリティ対応をダウンロードし、Apple製デバイスをインターネットに接続していた。それにもかかわらず、「インターネットに接続されていないため、アップデートが適用されなかった」とのメッセージが表示されたという。
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)には、ダックリン氏と同様の指摘を投稿したApple製品ユーザーがいた。同社によれば、原稿執筆時点でこの問題は解決済みだ。
後編は、セキュリティ向上における「ユーザーの役割」を考える。
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
サービスアカウントによる特権アクセスの管理に頭を悩ませるセキュリティ担当者は少なくないだろう。重要なシステムやデータを守るには、こうした特権アクセスを適切に管理し、アカウントを保護することが求められる。
サービスアカウントの悪用や誤用が問題になっている。システムやアプリケーションへのアクセスに特別な権限を有しているだけに、悪用されれば大きな被害につながる可能性もある。管理・保護のベストプラクティスをチェックしよう。
eコマースの登場以降、デジタル決済の選択肢は急速に広がり、利用者の利便性は飛躍的に高まった。一方で、それぞれの決済方法を利用するユーザーを標的とした金融犯罪や不正行為も爆発的に増加している。どう防げばよいのだろうか。
金融サービス業界において、金融犯罪を防ぐための対策は不可欠だ。デジタルサービスが増え、システムが複雑化する中で、どう対策を実践していくか。取引詐欺やマネーロンダリングなど4つのシーンを取り上げ、具体的な対策を解説する。
クラウドシフトが進み、リモートワークも普及した現代のIT環境で重要性が高まっているのが、ゼロトラストに基づくセキュリティ対策だ。その新たなアプローチとして、ブラウザベースの手法が注目されている。どういった手法なのか。
お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。
「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...
Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...
「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。