「MFA」が無効になることも……フィッシング攻撃に“有効なMFA”は何が違う?フィッシング攻撃に強いMFA【後編】

全ての多要素認証がフィッシング攻撃に有効なわけではない。エンドユーザーを詐欺メールから守るためには、「耐フィッシング」である多要素認証が有効だ。米国CISAが推奨する対策とは。

2024年02月01日 10時00分 公開
[Amy Larsen DeCarloTechTarget]

関連キーワード

セキュリティ | 認証 | フィッシング


 巧みな偽メールを使ってエンドユーザーから機密情報を盗み出そうとするフィッシング攻撃が、ますます盛んになっている。エンドユーザーの認証を強固にする手段として多要素認証(MFA)があるが、フィッシング攻撃に対してMFAの効果がほとんど見込めないこともある。そうした攻撃を受けた場合、攻撃者にエンドユーザーのデバイスの完全なアクセス権を与えかねない。この事態を防ぐためには、MFAを無効にする攻撃に耐性のある「耐フィッシングMFA」(Phishing-Resistant MFA)が有効だ。以下でその詳細を解説する。

「フィッシング対策」を徹底できるMFAの違い

 米国のサイバーセキュリティインフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)は、耐フィッシングMFAをフィッシング対策の「ゴールドスタンダード」と呼ぶ。CISAは企業のITセキュリティ担当者に対して、耐フィッシングMFAを導入し、フィッシング攻撃を防ぐことを促すためのガイドラインを発表した。以下の2つの技術は、CISAがガイドラインで取り上げているものだ。

技術1.WebAuthn

 Webでの認証をセキュアにするための認証標準である「WebAuthn」は、認証関連の業界団体FIDO Allianceが推進するパスワードレス認証標準群「FIDO2」の構成要素の一部だ。WebAuthnを使うと、エンドユーザーがWebページにアクセスする際、物理トークンやデバイスが搭載する生体認証用センサーを使って認証できるようになる。物理トークンとデバイスは、USBやNFC(近距離無線通信)を通して接続可能だ。

技術2.PKIベースのMFA

 PKI(公開鍵暗号基盤)ベースのMFA(PKI-based MFA)は、企業のPKIシステムと連動して機能するMFAで、スマートカード(ICチップを埋め込んだカード)をはじめ複数の異なる物理規格を使用できる。PKIはフィッシング攻撃などの脅威への耐性を持つ強力なセキュリティである一方、高度なID管理も必要だ。PKIベースのMFAでは一般的に、スマートカードのセキュリティチップがエンドユーザーの認証情報を保持している。エンドユーザーはスマートカードと正しいパスワードあるいはPINコードを使ってシステムにログインすることになる。

導入時の注意点

 耐フィッシングMFAの導入は、エンドユーザーを信頼せず状況に応じて認証を求める「ゼロトラストセキュリティ」を実現するための重要な第一歩となる。ただし耐フィッシングMFAの導入には、以下に示す課題があることに注意したい。

  • レガシーシステムでは、耐フィッシングMFAが動作しない可能性がある
  • エンドユーザーに研修を受けてもらう必要がある
  • システムにアクセスする際に新たな認証を求められることを面倒に感じたり、耐フィッシングMFAを導入することで使い勝手が悪くなるのではないかと心配したりするエンドユーザーがいる可能性がある

 こうした課題があるとはいえ、被害や損害額が顕著になっているフィッシング攻撃を食い止めるために、企業は耐フィッシングMFAの導入を検討すべきだ。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

隴�スー騾ケツ€郢晏ク厥。郢ァ�、郢晏現�ス郢晢スシ郢昜サ」�ス

製品資料 パロアルトネットワークス株式会社

セキュリティ運用を変革、人手に頼ったSOCモデルから脱却する方法とは?

従来のSOCは、AIや機械学習を用いた高度な攻撃に対処できなくなりつつあり、可視性とコンテキストの欠如や検証の複雑化など、さまざまな課題が山積している。この状況を改善するには、人手に頼ったSOCモデルから脱却する必要がある。

技術文書・技術解説 株式会社インターネットイニシアティブ

“次世代SD-WAN”とは何なのか? 「SASE」との関係は

比較的新しい製品分野である「SD-WAN」にも、早くも変化が起こり始めている。SD-WANは今後、どう進化するのか。「SASE」といった関連技術との関係性を踏まえながら、“次世代SD-WAN”の方向性を探る。

製品資料 ServiceNow Japan合同会社

脅威はランサムウェアだけではない、重大なセキュリティインシデントをどう防ぐ

ランサムウェア以外にもさまざまなサイバー攻撃が企業を襲い続けているが、重大なセキュリティインシデントへの対策を適切に行えている企業は今も少ない。その理由や、状況を改善するための4つのステップを詳しく解説する。

製品資料 株式会社AGEST

経営上のリスクに備える、脆弱性診断の目的や実践方法

サイバー攻撃による被害は、金銭的な損失だけでなく、信用の失墜や業務継続への支障といった経営上のリスクに直結する。このようなリスクへの備えとして有効なのが、「脆弱性診断」だ。脆弱性診断の目的や実践方法について解説する。

製品資料 東京エレクトロン デバイス株式会社

高度なエンドポイントセキュリティを実現、EDRの課題を解消するアプローチとは

昨今、組織のネットワーク外に分散したエンドポイントが、攻撃者にとって格好の標的になっている。このような中でエンドポイント保護の新たな形として期待を寄せられているのがEDRだ。しかし、運用が難しいなどの課題も多い。

アイティメディアからのお知らせ

郢晏生ホヲ郢敖€郢晢スシ郢ァ�ウ郢晢スウ郢晢ソスホヲ郢晢ソスPR

From Informa TechTarget

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ

「テレワークでネットが遅い」の帯域幅じゃない“真犯人”はこれだ
ネットワークの問題は「帯域幅を増やせば解決する」と考えてはいないだろうか。こうした誤解をしているIT担当者は珍しくない。ネットワークを快適に利用するために、持つべき視点とは。

「MFA」が無効になることも……フィッシング攻撃に“有効なMFA”は何が違う?:フィッシング攻撃に強いMFA【後編】 - TechTargetジャパン セキュリティ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

TechTarget郢ァ�ク郢晢ス」郢昜サ」ホヲ 隴�スー騾ケツ€髫ェ蛟�スコ�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news017.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news027.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。

news023.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年5月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...